いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

ネットでは完結しなかった「ネット予約」に困惑した話


 昨夜、スマートフォンに知らない番号からの着信があったので、「またアンケートとかプロバイダー変更の宣伝か?」と思いつつ、気になったので、Googleでその番号を検索してみたのです。
 出てきたのは、翌日の夜にネットで予約していた店だったのですが、留守番電話には何もメッセージは残されておらず、「何かトラブルでもあったのだろうか?」と不安になりました。
 突然の不都合で予約をキャンセルさせてほしい、とか、席種を変えてほしいとか、そういう話なのか?と心配にはなったものの、日曜の夜のあわただしさで、そのままにしてしまったのですが、今日になって、昼間にまた同じ番号からの着信が残っていました。

 仕事中は電話を取れないので、お昼休みに、こちらからかけ直してみると、僕が心配していたようなトラブルではなく、「お客様のご予約と人数の確認のためにお電話しました」とのこと。
「それだけ、なんですか?」と念を押すと、「それだけです」と。

 僕はネット予約をよく利用するのですが、こんなふうに確認の電話がかかってきたのは初めてだったので、当惑し、相手に「そちらでは、ネット予約の人全員に、こんなふうに確認の電話をかけているんですか?」と尋ねてみると、「そうです。人数の変更とかがあるかもしれないので」とのこと。本当はいちげんさんとか、怪しげな客とかにだけ連絡しているのかもしれないのだけど。
 4000円~5000円の客単価で、だいたい一晩に20組×2回転の和食の店だったのですが、2人での予約(残念ながら、色っぽい会食ではない)で、確認の連絡をされたのは初めてでした。

 最近はそういう役をやることもなくなったけれど、若い頃には、職場の宴会の幹事を任されることがあって、そういう数十人単位の予約のときには、事前に連絡を取り合うことの必要性はよくわかるのです。向こうだってドタキャンされたらたまらないだろうし、飲み会というのは直前での人数の増減がつきものだから。
 
 たぶん、店側としては、少人数の客でも、ドタキャンされたら困る、ということで、確認の電話をしているのだろうと思います。
 客単価はそこそこ高いし、事前の準備の都合もあるのだろうし。
 とはいえ、一晩に10人の客しか受けない、予約のみで、知り合いからの紹介がないと入れない超高級店、というわけでもないのです。
 地元の人が、ちょっと高級感がある和食を食べにいくチェーン店。

 僕としては、電話が苦手なので、ネットで予約ができる時代というのはすごく助かっているのですが、電話苦手派としては、「電話がかかってくるのなら、ネット予約を利用しなかった」と、カキフライがなかったら来なかった人のような心境になってしまうのです。
 セルフのガソリンスタンドで給油していたら、宣伝のチラシやカードつくりませんか、と店員さんが寄ってくるときに感じる「そんなつもりでセルフスタンドに来たんじゃないよ。給油っていうのは、もっと自由じゃなきゃいけないんだ!」という憤りに近いものがある。
 本当に自由にやると危険だけどさ。

 せめて、最初の確認の電話のときに「予約の確認です。折り返し電話いただけますか?」とメッセージを残しておいてくれればいいのに。
 無言の着信が2回続くと、それだけで、「関わらないほうがよさそうな電話臭」がするのだよなあ。
 「お客様への確認は、留守電に入れるようなことは失礼」という教育がされているのだろうか。
 それなら、「ネット予約というシステムそのものが失礼」ということで、取り入れなければよさそうなものだけど。
 先日、セキュリティ会社の人に、「最近の人は、登録されている番号以外から電話がかかってきても、まずスルーして留守電のメッセージを確認する、あるいはそのままスルーしてしまうので、連絡がとりにくくて困る」という話を聞きました。それは、受信する側の実感として、すごくよくわかる。「知らない番号からの電話で、何か良いことがあった試しがない」ので。



 4年前に、こんなエントリを書きました。
fujipon.hatenablog.com

 やはり今回の電話は「ドタキャン対策」だったのだろうか。
 それとも、僕があまりにも怪しそうな客にみえたのか(ネット予約で、顔はみせていないはずですけど)。
 もしかしたら、ネットでの「信用スコア」があまりにも低かった?
 もちろん、『鮨水谷』のような高級店ではないのですが、地方都市のちょっとした和食チェーン店でも、こういうことがあるのだなあ、と驚きました。
 ネット予約は便利であるがゆえに、あまり後のことを考えずに予約したり、何軒かを天秤にかけて、当日キャンセルしたり、というのが増えていて、それはもう、東京の有名店だけの話ではないのかもしれませんね。
 しかし、仕事とはいえ、こんな確認の電話を何度もかけさせられる店員さんも大変だろう、とは思います。
 毎日が予約で一杯ではないとしても、毎日、数十人に電話連絡して確認しているのだろうか。この、なかなか電話をとってもらえない時代に。
 いっそのこと、LINEとかでやったほうが良いんじゃない?(僕はLINEは束縛されている感じがあまりに強いので、なるべく使いたくないんですが)
 

 ネット予約ができるようになって、電話が苦手な僕のような人間にとっては、すごく良い時代になったと感謝しているのです。
 その一方で、ネット予約が普及し、手軽になっていけばいくほど、かえって、それによる面倒なことも生まれているように感じます。
 便利なシステムでも、利用者のモラルが追い付かないと、かえって、不便になってしまうことがある。
 この店などは、電話予約だけのほうが、かえってラクだったのではなかろうか。

 こういうケースでは、クレジットカードを登録させる、というのもひとつの手段ではあるのでしょうけど、それはそれでセキュリティ上、危険な気もするし、入力する手続きは煩雑になるし、田舎では、カード払いを敬遠する人もいます。
 正直、こんなに電話嫌いな僕でも、「わざわざ確認の電話がかかってくるなら、最初から電話するのに……」と思った一件でした。

 僕は大人数での予約以外では、店からの電話での確認は初めてだったのですが、こういう店、最近はけっこうあるのでしょうか?


fujipon.hatenadiary.com

鮨水谷の悦楽 (文春文庫)

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