いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『スーパーマリオメーカー2』で、ある職人見習いが体験した「ゼロの日常」

 先週、2019年6月28日に、ニンテンドースイッチで、『スーパーマリオメーカー2』が発売されました。


スーパーマリオメーカー 2 -Switch

スーパーマリオメーカー 2 -Switch

スーパーマリオメーカー 2|オンラインコード版

スーパーマリオメーカー 2|オンラインコード版


 うちの長男(小学校高学年)は、このゲームが発売されるのを、本当に楽しみにしていたんですよ。
 前作『スーパーマリオメーカー』の動画を延々と見続けて「予習」していたのです。

 僕自身は、正直、自分でコースをつくるのはめんどくさいし、息子がつくったコースで遊ばなきゃいけないのも大変だなあ、と思っていたのです。
 
 個人的には「つまらなくはないんだけど、どんなすごいコースでも、スーパーマリオスーパーマリオだものなあ」という感じでしたし。

 しかしながら、発売されてみて、長男が宿題もせずに夢中になってつくったコースで「遊んでみて」と言われると、それはそれで、やっぱり「がんばったねえ」という気持ちにもなるわけで。
 僕は老いたりとはいえ、長年のスーパーマリオプレイヤーなので、遊ぶほうはそれなりには上手い(というか、ファミコン世代の平均的な『スーパーマリオ』経験者くらい)のですが、長男は「つくりたいけれど、ゲームはそれほど上手くない」ので、長男がつくったコースがクリアできるかどうか僕がチェックして、アップロードする、という役割分担になってしまったのです。
 『スーパーマリオメーカー』では、難しいだけのコースが氾濫するのを防ぐため、あるいは、クリア不能なコースを排除するために、投稿者自身でプレイしてみて、クリアできないコースはアップロードできないようになっているのです。

 
 4年近く前に、こんなエントリを書きました。
fujipon.hatenablog.com


 当時の長男は「自分がつくったコースを投稿する」技量はなかったのですが、僕はこのときの経験から、今回も「アップロードしても、そんなにたくさんの人には遊んでもらえないだろうけど……まあ、ランダムにコースが選ばれるモードで、10人とか20人くらいに遊んでみてもらえれば……正直、ネットで話題になっているような『面白いコース』じゃないけど……」と踏んでいたのです。

 ところが、翌日、長男がアップロードしていた面を確認すると、「プレイしてくれたひと:0」でした。
 客観的にみて、「話題になるような素晴らしい面」ではないとは思うけれど、「0」は、親としてはつらい。
 それでもめげずに、長男はあと2つくらい新しい面をアップロードしました。
 その翌日、長男は「ほかの人が、ひとりでも遊んでくれていたらいいなあ……」と、自分に言い聞かせるように確認していたのですが、無残にも、結果は「プレイしてくれたひと:0」
 ああ、『ゼロの日常』だ……

 僕自身は、自分の子供がつくったコースでもあり、けっこう面白く感じたんですよ。でも、世の中には職人たちが手間と技術を投入してつくりあげた『すごいコース』がたくさんあるわけです。
 そんなのと勝負しても、かなわないよねそれは。
 それはわかっているのだけれども。

 確認するときの期待に満ちた表情をみていただけに「ゼロ」に対する長男の静かな落胆には、親としていたたまれない気持ちになりました。
 誰のせいでもないのだけれど、なんとかならないものなのか。
 僕がどこか他所からスイッチを借りてきてやって数字を増やそうか、とか、botみたいなのを巡回させて、数字だけでも増やしてくれないか、とか考えましたよ本当に。
 それ以来、長男は『スーパーマリオメーカー2』の動画を見ることはあっても、自分でつくる意欲が薄れてしまったようにみえるし。
 中途半端な希望よりも、ここで打ちのめされて、自分の才能の限界を知ったことがプラスになるのだろうか。
 それで、「しょうがないから、宿題をがんばろう!」とかいう方向に行ってくれれば良いのですが、まあ、そんなことも無いわけで。

 この状況で、僕はこのエントリを思い出していました。


fujipon.hatenablog.com


 僕はまだ競争相手が少なかった時代に自分なりに粘り強く書き続けて、それなりの基盤を得ることができたのだけれど、それは「時代の幸運」もあったんですよね。
 あの頃に個人サイトをはじめるというのは、高度成長期の日本で就職活動をするようなものだったのです。
 ところが、いまの『スーパーマリオメーカー2』では、普通に投稿して(とはいっても、紹介文とかジャンルとか、ちょっと工夫するように僕も手伝ったんですよ……)、様子をみていると、『ゼロ』がデフォルトなのです。
 僕の長年の弱小サイト運営経験からすると、ネットで見てもらうには、「0」から「1」のハードルが、本当に高いのです。ネットにはグーグルもあるけれど、『スーパーマリオメーカー2』では、フレンドに遊んでくれるように頼むか、なんらかの方法で話題になるしかない。とはいえ、「0」だと、どこかでも拡散されようがない。まさに「手詰まり」。有名な職人にでもなれば、あるいは、有名ユーチューバーのアンテナに引っかかれば、という希望はあるけれど、ごく少数の「大人気」があって、底辺には「0」の死屍累々、という状態なわけです。
 前作は、もうちょっと「底辺」に優しかったんじゃない?
 あるいは、今作は投稿数が多すぎるのだろうか。


 「互助会」に対して、「好きになれないが」と書いたわけですが、あらためて考えてみると、「互助会でアクセスアップ!」という人たちは、まだ「モチベーション」があるわけで、その何倍、何十倍もの「書いてみたけど誰も読んでくれないブログに落胆し、諦めてしまった事例」が沈殿しているのです。
 「0」だと、どこから手をつけていいのかわからない、というのが、ふつうの人の本音ではなかろうか。
 
 『スーパーマリオメーカー』の『1』と『2』とのあいだの4年間の変化として僕が思うのは、「つくる人」と「(動画などで)観る人」の二極化が進み、「(誰かがつくった面で)遊ぶ人」が減っているのではないか、ということなんですよ。
 職人さんとかユーチューバーの多くは「ゲームが上手い」人たちで、彼らに歯ごたえがある難易度だと、僕や長男には難しすぎる。
 そして、こんな難しい面を四苦八苦してクリアするくらいなら、動画で見ればいいや、と思ってしまう。
 あるいは「自動マリオ」でいいや、と。
 そもそも、「自動マリオ」なら、動画でも同じか……


 選択肢が増えすぎて、それぞれが「自分で面白い作品を探す」よりも、「すでに話題になっていて、みんなが遊んでいる作品を再確認してあれこれ言い合う」ことを選びがちになる。

 いま、『スーパーマリオメーカー2』で起こっていることは、まさに、ブログの新規参入の難しさと同じなのです。
 だからといって、「そんなに面白くもない、子供や初心者がつくった面を無理やり遊ばせる」なんてことに道理はない。

 それでも、オンラインで多くの人に遊んでもらえる可能性がある時代には、夢があるとは思う。
 その一方で、よほど傑出したものや、うまく注目されたもの以外には「0」が容赦なく突きつけられる時代でもあるのです。

 互助会をやりたくなる人たちの気持ちもわかる、というか、互助会くらいしか、「0」から抜け出す手段が思いつかない時代なのかもしれない。
 
fujipon.hatenadiary.com


 もしかしたら、「過疎ブログを読む」とか「『マリオメーカー2』の過疎ステージを遊ぶ」というのは、新しいビジネスとして有望ではなかろうか。

 『マリオメーカー2』がどれくらい売れて、どんな消費のされかたをするのか、僕は楽しみにしています。

 長男に関しては……自分なりに現実を消化してくれるのを待つしかないよね……


www.youtube.com

スーパーマリオメーカー 2 オフィシャルガイド

スーパーマリオメーカー 2 オフィシャルガイド

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