いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『ザンキゼロ』という、他人には薦めづらいが、このままゲーム史に埋もれてしまうのは、あまりにも惜しいゲームについて


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『人類滅亡まで残機[ノコリ]8人』

プロデュース・寺澤 善徳/クリエイティブディレクター・菅原隆行 「ダンガンロンパ」シリーズを手掛けた二人が創り出す 新次元・新感覚≪ノンストップ残機サバイバルRPG


ストーリー 西暦2018年。あの夏の夜。 たった一晩で、世界は終わっていた。 廃墟が漂うこの地球[ホシ]で-- 僕らはまだ、生きている。 廃墟が漂流する地球。 ビル、住宅、電柱、車、信号機、アスファルト― 現代文明は滅び、海を漂う廃墟となっていた。 そんな廃墟の島のひとつで暮らす主人公たちの前に、 つぎつぎと新たな廃墟が漂着する。
・クローン 僅か13日で成長し、寿命を迎える“クローン人間" ザンキゼロの主人公であり、人類最後の生き残りである8人は、なんと全員がクローン人間。 彼らは例え生命活動が停止しても、所定の手順を踏むことにより新たな肉体で再生[エクステンド]することができる。


エクステンドTV 8人が暮らすガレキ島の、ガレージにある古ぼけたTVで視聴できる唯一の番組、それが『エクステンドTV』! ! MCを務めるのは、とってもかわいい草食系マスコットのミライ。 アシスタントのテラシマ ショウ。 そんな二人の役割はサバイバルに不慣れな8人のクローン人間をしっかりガイドして、滅亡した人類を再生させること! !
生き残った8人の男女。 何故、この8人だけが生き残ったのか? それぞれが抱える罪とは?


 あの『ダンガンロンパ』の制作陣の新作ということで、期待半分、心配半分だったのですが、やっぱり気になって珍しく発売日に買ったんですよね、『ザンキゼロ』。
 
 どういうゲームかは、この動画を観ていただくと早いはず。
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 1か月半くらいかけて、ようやくクリアしたんですよ。
 プレイ時間は合計50時間近くになってしまったのですが、他の人の感想を読んでいると、だいたい30時間くらいが平均プレイ時間らしくて、僕はけっこうダラダラとレベルアップしたり、無人島生活を堪能してしまったみたいです。いや、堪能するなんてものじゃないんだけど、このゲームって。
 正直、もっと「サバイバル寄り」のゲームだと思っていたんですよ。
 プレイヤーたちを育てながら、少しずつ住むところや道具を充実させていき、島を脱出するというような感じの。
 ところが、実際はステージ性のリアルタイムダンジョンRPGで、制作者たちは『ダンジョン・マスター』を意識した、というようなことを仰っていました。
 そうか、『ダンジョン・マスター』か……
 

 なんのかんの言っても、すごく続きが気になるストーリーなんですよねこれ。
 幼児の状態から、数日事に青年、壮年、老年となっていき、わずか13日(数日は伸ばすことも可能)で死んでしまうけれど、クローン技術により、「ペケ字キー」というアイテムさえ無事ならば何度でも幼年期からやりなおせるキャラクターたち(ただし、サチカは除く)。
 そして、敵の攻撃や状態以上、トラップで死ぬと、次からはそれらの死因に対して耐性ができる「シガバネ」というシステム。
 何かの続編ばかりが目立つ昨今のゲーム事情のなかで、目新しいシステムのゲームをぶち込んできたスパイク・チュンソフトの意気込みも含めて、僕はこのゲームを「買った」のです。


 ただ、正直いって、このゲームは、グロテスクで、性的な描写や見ていて「うえっ」となるような人間のドス黒い欲望や弱さがガンガン出てくるし、登場人物はサルの生肉を食らうはトイレがガマンできなくなって漏らすは、そのショックで攻撃力が下がりまくるわで、けっこう「何なんだこれ……」という感じなんですよ。
 『ダンガンロンパ』シリーズをネタとして消化できるくらいの鷹揚さというか、鈍感力がないと、「なんで金払って買ったゲームでこんな不快な思いをさせられるんだ……」ということになると思います。
 操作性は、けっして悪くはないんですよ。PS4版はヌルヌルと動くし、ロードが長くてストレスがたまる、ということもありません。
 しかしながら、システム的には、けっこうめんどくさいところが多々あります。
 トイレがないと便を漏らしてしまい、さまざまなネガティブな効果がある、というのもそのひとつなのです(正直、ボス戦の最中にそんな状態になると、「糞尿まみれでも戦えよ!もう最初からこのボスと戦うのイヤなんだよ、とくにステージ6!お前だけはもう勘弁してくれ!」と言いたくなるのです。そもそも、漏らすくらいなら、そのへんの物陰か草むらでなんとかならんのか……ああ、きっと竹槍でB29を落とせといった人たちも、こんな気分だったのだろうな……)。
 持てるアイテムの重量に制限があって、しかもそれは同じキャラクターでも壮年期と老年期では大きなちがいがあります(老年期になると、持てる重さが減ってしまう)。
 このゲームでは、原則的にダンジョンがある島と根拠地がある島を行き来したり、ダンジョン内で階段を上り下りすると時間が進んで、キャラクターが年を取るようになっているのですが、階段を登ったとたんに老年期になり、アイテムが過重で動けなくなったところに敵があっという間に群がってきて袋叩きにあって壊滅、なんてことが少なからずあるんですよ。
 死んだキャラクターは所持しているアイテムをその場所にばらまくのですが、やられるということは、そこに強い敵がいて、しかも味方は死人が出ているので戦力が落ちている状態です。アイテムを回収しようとすると全滅するし、回収しないと取りに戻って来るのがものすごく大変だし、という「うわーめんどくせー!」という状況が頻出します。
 おまけにいきなりワープしてきて挟み撃ちしてくる敵がいたり、ザコでも袋小路に追い詰められるとかなりレベルを上げていてもボコボコにされてやられてしまったり。なんかしょぼくれた敵がやたらと強いし、ダンジョンの構造は複雑で、難易度も高い。
 僕は1がかんたん、5が超難しい、という5段階の「2」でずっとやっていたのですが、それでも最終ステージの一つ前のステージからは、攻略サイトを見ながらプレイしていました。最終ステージとか、攻略サイト様の仰る通りにやろうとしても、とにかく難しくて移動することもままならず。
 そこで偶然、新しいバージョンにアップデートされて、最終ステージの難易度がかなり下げられた(であろう)おかげで、なんとかクリアできたのです。
 先頭は、けっこうワンパターンな、敵と軸を合わせないようにして攻撃の合間を塗って削っていく、というかなり作業的なもので、けっして面白くはありません。
 先が見たいので、なんとかクリアしようとした、という感じです。


 このゲームの問題点として思い浮かぶのは、キッチンを進化させていろんな料理をつくったり、寝室を整備して親密度を上げたり、工作室でさまざまなアイテムをつくったり「できる」のだけれど、結局のところ、それらをやることのめんどくささに見合ったメリットをほとんど感じないし、そもそも、それらを充実させていくための「鉄柵」とか「パーティション」というアイテムがなかなか手に入らず(そして足らず)、料理や寝室の存在理由がよくわからないところなんですよね。工作室で強い武器や防具をつくることは必要なんだけれど、これらの武器もいつのまにかどこかへ行ってしまうこともあって、もうとにかくめんどくさい。倉庫はすぐにいっぱいになるし……
 僕がもともとサブクエストとかの寄り道への興味が乏しい、というのもあるのですけど、道中の隠し要素が思わせぶりにあるわりには、クリアするための条件がめんどくさかったり、どう対応すればいいのかわからなかったり(攻略サイトを見ればわかりますけどね、そりゃ)するものばかり。
 僕はずっと、料理ができずに動物の生肉を食べて、キャラクターはストレスたまりまくりでした。
 でも、とにかく死にまくったのでシガバネはたくさんゲットしているし、プレイ時間も長いのでレベルは上がり、強くなったキャラの力技でクリアしたんですよね、結局。

 たぶん、制作側としては、料理とか添い寝とかを、もっと充実させて、意味のあるものにしたかったのだろうと思いますが、時間的な制約もあったのでしょうけど、かえって「思わせぶりなだけ」になってしまった。


 なんというか、志は立派なんだけれども、未完成な部分が多くて、めんどくさいゲームなんですよ。端的に言えば。

 
 それでも、この広げ過ぎた大風呂敷を最後まで見てみたいというか、ダラダラとこの世界に浸っているのもそれなりに悪くない、という感触があって続けていたのですが、やっていくうちに、少しずつ「手応え」みたいなものも感じてきたのです。
 このゲームが面白い!というよりは、「いつの間にか、めんどくさいアイテムの管理を効率よくこなせるようになってきた」とか、「キャラクターたちが難所をクリアするためのちょうど良い年齢のタイミング合わせや装備、戦闘方法などができるようになった」んですよ、いつの間にか。
 「そういえば、最近あんまり先輩に注意されなくなったな」と、ふと気づく新入社員のような「キャラクターというより、ゲームを操作し、ややこしいシステムを効率的に運用する自分自身の成長」を、このゲームでは実感できるのです。
 そういうゲームって、一昔前にはけっこうたくさんあったのだけれど(『トルネコ』『シレン』シリーズが僕のイメージでは近いかもしれない。あるいは、シューティングゲーム)、最近は、「操作性を良くして、プレイヤーのストレスを減らすこと」が重視されているためか、あまり見かけなくなりました。
 やっぱり、こういうゲームって、初見で「めんどくさい」とか「システムが不便」って言われるのでしょうし。
 このゲームの場合、プレイヤー自身の運用力の成長を実感させるために、あえて、「便利すぎないシステム」にしたのではないか、と僕は推測しています。
 いや、本当のところはよくわからなくて、純粋に「難易度設定ミス」なのかもしれないけれど。
 あるいは、制作者たちが想像していた以上に、ゲームプレイヤーたちの「めんどくささを効率的に軽減していくこと」を味わう文化が失われていた、という可能性もあります。


 僕の贔屓目ではあるのでしょうけど、『ザンキゼロ』って、きっと、100人に1人(あるいは、200人に1人)くらいには深く刺さるゲームだと思うし、最近のゲームの「親切さ」が物足りなくなっている人たちに、体験版だけでもプレーしてみてもらいたいのです。
 やっぱり、このストーリーには好き嫌いがあるだろうけど、悟空の野沢雅子さんとフリーザ中尾隆聖さんの「陰険漫才」が聞けるのも『ザンキゼロ』だけですし。


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 『ザンキゼロ』、いろんな意味で、「惜しい」のだよなあ、本当に。
 これを「期待していたほどには、売れませんでした」で終わらせてしまうのは、あまりにも勿体ない。


fujipon.hatenablog.com

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