いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「今日がいまの職場での最後の出勤」という人が大勢いる日に、「やりがいと報酬」について考えた。


2018年3月30日、金曜日。
今日がいまの職場での最後の出勤、という人も多いのではないでしょうか。
この時期になると、僕は毎年、この話を思い出します。


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ずっと、良くも悪くも目立つことのない仕事っぷりの僕にとっては、羨ましい、という感情と、しかし、こんな働き方が自分にできるのか?そして、このときのことだけで、彼は「報われた」と言えるのか?という疑問が入り乱れる記憶なのです。
最近は、20年前、30年前に比べれば、かなり、労働条件やお金のことに対して希望や不満を口にすることができるようになってきました。
それは、正しいことだと思う。
その一方で、昔の価値観にも触れてきて、「忙しいほうが偉い、カッコいい」というイメージを捨てきれない自分もいて。
すごく忙しい病院の医者なんて、だれかのために尽くすことが大好きか、金銭的に満たされるか、忙しい自分に酔えるか、どれかにあてはまらないと、なかなか続けられるものじゃありません。
最近は、そういう価値観もだいぶ変わってきて、大学に残りたがる医者が少なくなった、忙しい病院を敬遠する医者が増えた、なんて話もよく耳にするのですが。


転勤や転職、新たに就職する人が多い時期でもあるので、少しでも参考になりそうなエントリを並べておこうと思います。
実際のところ、仕事で何を優先するか、というのは、人生観や、その人が置かれた状況によって、さまざまなんですよね。
先日、Twitterで、こんな話を読みました。



ネットでは「そんな安いギャラ(あるいはノーギャラ)で、クリエイターを買いたたくなんてけしからん」という人が多いし、それはよくわかるのだけれど、こういう事例もあるんですよね。
もちろん、相手の無名や無知につけこんで、不当に買いたたくのは論外なのですが、「それでもやってみたい」「長い目でみればギャラが安くてもやるべき」と本人が納得してやっていることまで否定する必要はないと思います。
結果的には「ノーギャラでもやってみたい」と言っていた仕事が有野さんの大きな看板になり、大きな収入にもつながっているのです。
そして、おかげで僕も人生の楽しみをもらえている。


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影山ヒロノブさんの「修行時代」の話も凄まじい。

 同行するバンドにギャラが発生しても、俺だけギャラなし。旅費だけは会社が出してくれる、赤字が出れば会社がかぶる、という条件でのツアーが始まりました。
 ただし旅費といっても、社長が調達してきたボロボロのハイエースを楽器車にし、そこで寝泊まりしながら全国でライブをする、というだけ。年に100本を超えるライブをする毎日はそれから5年間続くことになります。
 お客さんは、最初まったくいませんでした。LAZY時代からのファンが来てくれることもあったけれど、地元のアマチュアバンドに前座をやってもらっても数十人ほどの動員です。
 もっとも少なかったのは、長野でのことだったと思いますが、わずか5人(笑)。これは、ステージの上の俺たちとまったく同じ数です。それだけ少ないと、お客さんも緊張して、なかなか前に来てくれない。目の前の会場はスカスカで、フロアが見えていました。
 そんな毎日で、おそらく会社がかぶった赤字額はさぞ莫大だったのではないでしょうか。でも社長は約束通り、ツアーを組んでくれた。


こういう「成功者の事例」を読むと、「これも必要なことだったんだな」と思ってしまうのですが、こういうのって、「やりがい搾取」と紙一重ではありますよね。というか、結果が出たかどうかの違いだけかもしれません。
大事なのは、本人がその意味を理解して「賭ける」ことに同意しているかどうかだと思うのですが、ブラック企業というのは、「やりがいがあるように思い込ませる」あるいは、「自分がこれをやらないと、みんなに迷惑がかかる」という意識を植え付けるのが上手いのです。
実際のところ、極端な例はさておき、「お金よりやりがいや可能性」と「ブラック労働」の線引きというのは、なかなか難しい。
人それぞれ、耐久力やモチベーションも違いますし。
それでも、一般化するべきではない、ということになると、極悪ブラック労働を制限できなくなりますよね。


忙しい時期でもあり、長々と書かずに、これまで書いてきた「仕事や退職についてのエントリ」を紹介するにとどめておきます。
ひとつだけ言っておきたいのは、結局のところ、ネットで流布されているは「正しい仕事のしかた」というのは、必ずしも万人にあてはまるものではないし、現状では、鵜呑みにしすぎると、自分の可能性を潰したり、周囲との軋轢を生むものが多い、ということです。
そして、大概の不満や問題点は、ネットで愚痴を言うよりも、直接会社や上司や同僚に「ていねいに相談」するほうが、多少なりとも、緩和されたり、改善に向かう可能性が高いのです。
世の中って、陰口の内容よりも、陰口を叩かれたことそのもので気分を害する人って、本当に多いし。


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とりあえず、「背伸びも委縮もせずに、自分に合った働きかたを見つける」ことが、生きていくうえで、すごく大事なんだと思います。
そのためには、いろんな仕事や働きかたを知っておいたほうがプラスになるはずです。
実際は「本当に自分に合っているもの」を見つけるというのは、ものすごく難しくて、自分自身でも(ときには、自分だからこそなおさら)、よくわからないものだけれど。


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僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

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