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いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

5月と眼鏡とマッシュルーム

suminotiger.hatenadiary.jp


※以下のエントリは、お食事中、食直前食直後の方には、おすすめしません。


 僕はマッシュルームが嫌いだ。
 今は食べられないことはないけれど、なるべく避けて通りたい。
 『カレーマルシェ』というレトルトカレーがあって、カレーそのものはかなり美味しいのだけれど、丸くてプニュプニュしていて、白っぽいものが入っているのを口に含んで悶絶した。
 「マッシュだ……」
 ジャガイモだと思ったんだよ本当に。あれはマッシュルーム嫌いにはつらいカレーだった。そもそもなぜカレーに入れる?

 マッシュルームが苦手、という話をすると、多くの人に聞かれる。
「納豆とかピーマンとかトマトみたいな、癖のある食べ物なら、わからなくもないけれど、マッシュルームって、あんまり味しないのに」


 これには、けっこうはっきりとした「嫌いになった日の記憶」があるのだ。
 当時、小学生だった僕は、久々の外食で、車に乗って近所のレストランに行った。
 そこのハンバーグステーキが大好きだったのだ。
 だが、もともと車酔いしやすい僕は、その日も酔って、気分が悪かった。
 しかし、ハンバーグは食べたい。
 そして、そこのハンバーグのソースには、輪切りになったマッシュルームが山のように乗っていた。
 そもそも、あの輪切りになったマッシュルームの見た目って、ドクロみたいじゃないですか?
 うわあ、ドクロベエさまが、いっぱいいるな……と、ややうんざり。
 まあ、そこまでは「見た目が気持ち悪いのと、あのクニュっとした食感が苦手」くらいだったんですよ。
 「好きなものは最後に食べる」+「食べ物を残さない」主義者としては、まず、この山のようなマッシュルームを食べ尽くしてから、愛するハンバーグにとりかかりたい。僕のハンバーグを、マッシュルームに邪魔されたくない。


というわけで、ひたすら、マッシュルームを食べ始めたのですが、もともと車酔いだったうえに、好きでもない、食感も苦手なものを意地になって食べ続けたものだから、本格的に気分が悪くなってしまいました。
そして、トイレに駆けこんでリバース……


結局、ハンバーグにはたどり着けず、踏んだり蹴ったりのディナーとなりました。
今から考えると、ソースのおまけ(にしては量があまりにも多かったんだけど)なんだから、よけてハンバーグを食べてしまえば良かったんですよね。
今なら、たぶんそうします。
そもそも、あのマッシュルームは、全部食べることを想定しているとは思えない量でしたし。
ところが、当時の僕は妙な完璧主義者で(今でもそういう、どうでもいいところに完璧を求めてしまう悪癖はあります)、食べ物を残したくはなかったし、最後はハンバーグだけを味わって食べたかった。
まず、マッシュルームをやっつけなければ、気が済まなかったのです。
どうせリバースするのなら、食べなきゃよかったのにねえ。


こういう悲しい記憶があって、僕はマッシュルームが嫌いなんですよ。
……と言っても、なかなか理解してもらえないというか、まあ、マッシュルームが苦手だからといって困るシチュエーションというのも、世の中にはそんなに多くはありませんし。
ただ、「みんながとくに好きでも嫌いでもない枠」みたいな感じで、さりげなく入っていることは少なからずあって、そのたびに僕は「マッシュか!」と心の中で毒づいているのです。


あと、この時期でもうひとつ思い出すのが、眼鏡のこと。
僕は小学生の頃まで、ずっと視力は良かったんですよ。
父親は眼鏡をかけていたのですが、僕は「眼鏡は格好悪い」と思っていました。少なくとも「子どもがかけるものではない」と。
ところが、転入した中学1年生の5月頃から、黒板の文字が見えづらくなってきたのです。
黒板に何が書いてあるかわからないので、ノートはとりずらいし、授業もわかりにくい。
当然、成績は急降下していきます。
周りはけっこう心配していたのですが、僕は「視力が落ちて、黒板の文字が見えにくい」とは、なかなか言い出せなくて。
そう言うと、眼鏡をかけさせられるだろうし、マイコンやテレビゲームを禁止されるかもしれないし……


そんなこんなで数ヶ月経ち、どんどん成績は落ちていきます。
そりゃそうだよね、授業中、黒板の文字を解読することにばかり悪戦苦闘していたんだから。
勉強しかセールスポイントがなかった僕としては、これ以上成績が落ちると、取り返しがつかないことになる、と覚悟して、親に「黒板の文字が見えなくなった」と告白しました。
「なんでそれを早く言わなかったの!」と呆れられたのを覚えています。

そりゃ、僕が親でも、呆れるけどさ。
中学生くらいで視力が落ちるのは、好ましいことではないけれど、よくあることだし、眼鏡なりコンタクトレンズなりの対処法があるのだから。
ドライアイなのと目に異物を入れるのが怖いので、結局、それから30年以上「眼鏡がないと、眼鏡がどこにあるかさえわからない」人生を送っています。


本人以外にとっては、本当にどうでも良いであろう話を2つ並べてみたのですが、他者からは、「なんでそんなものが嫌いなのか」「どうしてそんなことを気にして大事なことを言わないのか」と思われるようなことでも、そのときの本人にとっては、それなりの理由って、あるんですよね。
自分が大人になると、そんなことは忘れてしまいがちなのだけれども。


fujipon.hatenablog.com