予想以上に盛り上がった『真田丸』、予想外に斬新だった『おんな城主 直虎』に続くンNHK大河ドラマは『西郷どん』。
以前から、戦国時代を扱った作品に比べて、幕末維新ものは視聴率が取れない、と言われていましたし、キャストも主役の西郷隆盛が鈴木亮平さんで、ヒロインが黒木華さんという、実力派だがちょっと地味な感じなんですよね。
個人的には、原作の林真理子さんのこれまでの作品が苦手なこともあり、まあ、とりあえず第一回を観てみるか、と思っていました。
『直虎』でさえ、一部ではすごく盛り上がっていたけれど、視聴率としては「なかなか健闘した」というレベルに留まっていましたし。そもそも、この時間は『イッテQ』が強すぎるのですが。
正直、第一回は、子供時代の話ということもあり、いきなり菓子泥棒の話か……と、醒めた目で観ていたのです。そういえば、『直虎』も、第一回は子供時代の話で、よく知らない人の子供時代を見てもねえ、と思ったんですよね。
とはいえ、菓子泥棒みていても面白くはないな……だったのですが、おおっ、ここでケンワタナベじゃないですか。近頃は、女性問題とかでしか観たことがなかった渡辺さんなのですが、こうしてあらためて観てみると、この人の存在感すごいや。佇まいといい、眼力といい、大河ドラマに出てくるような「役者ぞろい」のなかでも、目立ちます。おかげで僕も眠気が吹っ飛びました。なんだかもう、存在しているだけで「いちばんすごい人」っぽい印象です。島津斉彬は、西郷隆盛がずっと尊敬し、慕い続けていた人なので、この人が演じることによって説得力が増すのは間違いありません。
この人に「強くなれ」って言われたら、そりゃ強くなろうと思うよ。
存在感が凄すぎて、ちょっと浮いている感じもしますが。
渡辺謙さんがそんなに画面で浮かないハリウッドの俳優たちって、けっこうすごいのかも。
日本での渡辺さんといえば、『壬生義士伝』での吉村貫一郎役が僕はすごく印象に残っています。『独眼竜政宗』も良かった。
この西郷と島津斉彬の「出会い」のシーンについて、「史実では、この時期に島津斉彬が薩摩にいたという記録はない。西郷どんが出会ったのは天狗だったのであろうか」なんていうナレーションが流れるのですが、こういうのって、たぶん「歴史マニアからのクレーム対策」なんでしょうね。大河ドラマの「史実性」をどこまで重視するか、というのはなかなか難しい問題みたいです。
『直虎』には、「ほとんど史実はわからないから、自由度が高い」という、やりやすさもあったのです。
ドラマがはじまったあと、「実は直虎は男だった説」がメディアで採りあげられたのは、苦笑してしまいましたが。
そういえば、『武士の家計簿』の磯田道史さんが時代考証に名を連ねておられましたね。
あと、「女子が学問も武芸も身につけられない、薩摩の(あるいは長年の日本の)気風」について、西郷が疑念を呈するシーンについては、その感覚は現代でいえば「正しい」のだけれど、現代の価値観を歴史ドラマに持ち込むことの違和感、みたいなものもあるんですよね。
そして、西郷隆盛の父親が、隆盛に「自分は算盤でなんとか家族を養ってきた。お前も現実をみたほうがいい」というような話をするのですけど、このお父さんの苦言を聞いて、僕は考えずにはいられませんでした。
西郷隆盛という傑物も、生まれる時代が違っていたら(たとえば、元禄時代に生まれていたら)、全く違った一生を送ることになったのだろうな、って。
歴史には、西郷隆盛と同じくらいの潜在能力を持っていても、生まれた時代や場所が「はまらなかった」ために、まったく輝かなかった人が、大勢いる。
第一回としては、『直虎』よりも、ケンワタナベの分だけ、僕にとっては見ごたえがありました。
ただ、より現在に近い時代を描くことの難しさもあるでしょうし、西郷隆盛という人の「終わり」は誰もが知っています。
『変態仮面』での熱演が大好きだった鈴木亮平さんには、ぜひ、これでさらにブレイクしてもらいたい。
そういえば、あの人が出家してしまったのは、『変態仮面』がイヤだったから、なのかなあ……とか勝手に想像しているのだけど、どうなんだろう?
とりあえず、渡辺謙さんが出ているあいだは観てみます。
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