カンニング竹山さんが仰っていることは至極もっともで、最近のネットをみていると、既存のマスメディアも「誰それがブログでこんなことを書いていた」とか「Twitterでこんな発言をした」とか、テレビのバラエティ番組でこんな話があった、とかをかなり大きく採りあげている。
そして、そういう記事(ネットメディア的には「コタツ記事」と言うそうです。取材しなくても、テレビやパソコンがあれば、コタツに入ったままで書けるような記事ってことですね)が、人気になって、記者がちゃんと取材した記事よりも多く読まれている。
写真週刊誌の取材方法についてはけっして真っ白とはいえないけれど、彼らは自分の足でネタを取ってきているんですよね。
ブログの内容とかテレビ番組での発言が「ニュース」として流れるなんて、みんなが大嫌いな「広告」と同じようなものではないか、と思うのだけれど、それを問題視する人はあまりいない。
スキャンダルと揉め事と広告ばっかりですよ、ネットって。
……と、こうしてコタツ記事を数多く書き散らかしている僕が上から目線で言うわけです。なんかもう、ネットって、マウンティング合戦の場になってしまっているよね、って。
冒頭の竹山さんの話も、「メディア批判を『AERA』のネット版に載せている」という点では、マウンティング輪廻の一部でしかない。
某氏の不倫に関するエントリも、正直、僕は世間によくある話だとしか思わないし、善いことではないけれど、赤の他人が表に出ているだけの情報で理解できるようなことじゃないと感じている。それ以前に、なんであんな話を当事者が自らネットに書いたのか、というのが謎なのです。
インターネットの世界の大物として、みんなが「建前」しか語れなくなった世界で、「本当のことを書けるインターネットの理想」を体現するという実験であるのならば、それはもう、WEB3.0くらいのインパクトだったけどさ。
いやむしろ、昔懐かしい「インターネット告白文学」の世界が蘇った!って感じか。
そういうふうにでも考えないと、あれだけの長さの文章をわざわざ書いて、そして自らのブログに載せるという行為の意味がわからない。
そんなの、拡散されて叩かれるに決まってるのに。
ページビュー稼ぎ目的ではないとしたら、人には「(自分にとっての)真実をみんなの前で語りたい」という衝動と、大勢に注目されたい、という潜在意識がある、ということを再認識せざるをえない。
僕はあれを読んで、「真偽は第三者的にはわからないけれど、こうしてちゃんと説明しようとしているのはすごいな」と、けっこう感心したのだ。圧倒された、と言うべきか。
10年前のインターネットであれば、少なくとも、その「率直さ」に対しては、もう少し敬意が払われたのではないかと思う。
もちろん、彼が正しいことをやったとは思わないけれど、人間って弱いところがあるよなあ、しょうもないことをやるよなあ……って、妙に共感してしまったのも事実だ。
僕は正しく生きようと思いつつ、正しくないことをたくさんやってきたし、年齢とともに、どんどん、自分は正しくないことをもっとやるようになりそうだ、という予感にさいなまれている。
不倫はしないようにしている、というか、そもそも、そういう状況に縁がないのだが、絶対にしない、と言えるほど自分を信用していないし、しないと思っている期間があればこれからもずっと大丈夫なら、こんなに不倫したり離婚したりする夫婦がいるわけもない。
新井さんだって、「生涯カープ」と宣言しながら、阪神にFA移籍したのだ。
(その新井さんがまたカープに戻ってきて、アメリカ帰りの黒田さんと四半世紀ぶりのリーグ優勝に貢献するのだから、先のことはわからないよねほんどうに)
恋愛なんて、基本的に、この先どうなるかわからないものであり、他者のことを訳知り顔で語れるほど僕には才能も経験もない。
そんなこと、大人だったらほとんどの人が知っているはずなのに、多くの人が、この瞬間、自分は不貞行為をしていないから、というだけの理由で、近未来の自分自身の姿かもしれない人を責める。身内や友人なら、責めたくもなるのはわかるけどさ。
最近あらためて思うのは、インターネットというのは、基本的に何でもできる空間であって、その中で、みんなが喜んだりお金になったりする機能やサービスが生き残って「最適化」されてきたのではないか、ということなんですよ。
「フォロー外から失礼します」なんて言わなくても、みんながフラットに議論できる環境だってつくれたし、無料で大学の良質な講義を観られる。
多くの人は(もちろん僕も含めて)それを選ばなかった、というだけのことです。
「自分にとってどうでもいいことに、なんでそんなにくちばしを突っ込むのか」と問われれば、自分にとってどうでもいいことだから、好き勝手言えるという気楽さもある。
ネットでは、直接かかわるにはリスクが高すぎる人を安全圏から観察できる。
自分自身が不倫をしたり、家族関係に悩みを抱えながら、ネットではバッシングする側に加わっている人も、少なからずいるんだろうと思う。
これだけ多くの人が、ごくあたりまえに使っているインフラに対して、「これはイビツな存在なのだ、偏りを生むのだ」と言っても、もうどうしようもない。
僕はこういう世界を選んでしまったのだから、その中で、どう考え、生きていくか、という覚悟が問われているのだ。
……ネットであまりにも多くの「感情」に触れていると、なんだかときどき、ものすごく疲れを感じて、こういうことを書きたくなることがあるのです。で、これもまた、マウンティング輪廻の一滴になる。
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