去年の夏、バリ島に行ったときの話。
バリ島には、日本の「石屋」みたいな店が大きな通り沿いにたくさんあって、そこには、仏像や動物の像らしきもの、日本のお墓みたいなものが、並んでいたのです。
ああ、この島では、まだ「伝統」が生きているんだなあ、ボロヴドゥールの仏教遺跡がある国だものなあ……
それとも、観光客が、この石像を買って帰るのかな、でも、持って帰れるような重さじゃないし、送ってもらうにしても、運賃が大変そう……
そんなことをずっと考えていました。
それで、帰り際に、現地ガイドさんに聞いてみたんですよ。
石像を売っている店がたくさんありますけど、あれって、商売になっているんですか?って。
「ああ、ああいう石像の大部分は、現地のリゾートホテルが買っているんですよ。『バリ島らしさを演出するため』に」
「伝統工芸」には違いないのだろうけれど、「伝統を守っている」というよりは、「現代的な空間のなかで、伝統を演出するために、続いている」のですね。
バリ島が昔のままではないからこそ、商売になっている「伝統工芸」。
それを「ああ、バリ島らしいなあ」と嬉々として観ている僕のような観光客。
世の中というのは、いろいろと矛盾に満ちているものですね。