いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「主人公が牢獄に入れられる」ゲームの歴史的変遷

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 ブックマークコメントでもたくさんの作品が挙げられていますが、たしかに、「主人公が牢獄に入れられる作品」には名作が多いような気がします。というか、「主人公が牢獄に入れられる」という設定そのものが「ありがち」ではあるのですよね。
モンテ・クリスト伯』や『ショーシャンクの空に』など、僕もすぐにいくつかの作品を思い出しました。

 しかしながら、「主人公が牢獄に入れられる作品」として、いちばん僕の記憶に残っているのは、1983年に発売されたマイコンゲーム『惑星メフィウス』なんですよ。
 これ、「主人公が牢獄に入れられる」というより、僕にとっては、「主人公が牢獄に入りっぱなしになった作品」でした。
 冒険の舞台になった惑星に降り立った、主人公・スターアーサーは、不審者としていきなりと投獄されてしまうのです。
 そして、この「牢獄からの脱出」が、とにかく難しかった。
 いまのアドベンチャーゲームのように、コマンド選択式ならまだ太刀打ちできたのかもしれませんが、この時代のアドベンチャーゲームは、自分の行動を言葉で打ち込む、というシステムで、どんな言葉が使えるのかを確認するのがまず一苦労だったのです。



Star Arthur Legend (1983) - First point and click game!

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 『惑星メフィウス』の冒頭の牢屋のシーンなのですが、鉄格子のなかに1本、他と色が違うものがあって、それを何度も「叩く」と鉄格子が外れ、その鉄格子で壁を崩して脱出する、というのが「答え」なのですが、1983年の僕には、その答えが全く思う浮かばなかったのです。
 いま、こうして文章にしてみると、なぜ当時、朝から晩までずっとディスプレイの前で試行錯誤し続けていたのに、解けなかったのだろう……という感じではあるのですけど。
 あの頃は、インターネットなんてSF小説のなかの存在でしかありませんでしたので、ゲームでどうしても先に進めないところは、「友達に聞く」か、「マイコン雑誌にヒントや答えが載るまで待つ」しかありませんでした。
 当時の僕の周囲には、マイコンゲームをやっている友人はおらず、雑誌も月に1回の発売。
 「ああ、今月も載ってなかったな……」と、毎月がっかりしていたものです。
 この『惑星メフィウス』は、かなり売れた作品で、けっこう有名な「行き詰まりポイント」だったんですけどね。
 結局、答えを知ったのは、何かの雑誌の「ゲーム攻略マル秘袋とじ」みたいな企画で、嬉々として牢屋を脱出したものの、その後に登場するあまりにも広大な砂漠で、アイテムを1ドット単位で探すという凶悪なシーン
ついにあきらめてしまいました。
 ほんとにねえ……なんであんな大変なことを一生懸命やったたんだろう……でも、あの頃はそういうのが僕にとっては、ものすごく楽しかったんですよ。


 で、最近『ドラゴンクエスト11』を遅まきながら本格的にプレイしているのですが、序盤で、主人公が投獄されるシーンがあるのです。
 RPGでは、主人公が投獄されるシーンは定番ですよね。

 さて、どうやって脱出しようか……
 どこかに隠しアイテムみたいなのがあるのか、誰か助けにきてくれるのか、しばらく歩き回ったり、時間が経つのがフラグになっているのか……
 と思いつつ、牢屋の中を歩き回りはじめたとたん……


 まあ、ネタばれは避けますが、あんまりプレイヤーがやることもなく、あっさり脱出してしまったのです。
 『最後のジェダイ』を観た直後だったので、「これは……罠だ!」みたいなことをちょっと考えてしまったのですが、『ドラゴンクエスト11』は、そんな邪悪な作品ではなかったみたい。
 

 この、あまりにもアッサリとした牢屋からの脱出劇に、僕は時代の流れを感じずにはいられませんでした。
 『ドラゴンクエスト11』では「牢屋に入れられたことがある」というストーリーが必要なだけなんだろうなあ。
 でも、こんなに簡単だと、あんまり「投獄された」意味がなさそう。
 『ドラゴンクエスト』では、『5』で主人公が奴隷にされてしまうのが記憶に残っているのですが、あれもけっこう脱出するまで大変でしたよね。『メフィウス』みたいに理不尽ではないとしても。
 

 最近のRPGAVG(アドベンチャーゲーム)をプレイしていて感じるのは、ものすごく謎解きが簡単かつ親切になっている、ということなんですよ。もちろん「作品にもよる」のだろうけど、昔のゲームのような「こんなの絶対わからないよ!」というものは、ほぼ絶滅しています。
 ゲームによっては、その場面で必要な情報を収集したら、助手役
キャラクターが「そろそろ次に行きましょう」とアドバイスしてくれる(逆に「もうちょっと調べましょう」と指摘してくれることもあり)。
 プレイヤーも、そう簡単には死なないようになっています。
 スタートして、「キタ」に向かうと、いきなり崖から落ちて死んでいた昔のゲームを知っている僕としては、まさに隔世の感があるのです。
 いくらなんでも、崖が目の前にあったら止まれよ、とは当時も思ったけど。
 しかも、今は大概の謎は、ネットで検索すればすぐに答えを見ることができるのです。
 こんな時代のゲームの難易度設定って、難しいだろうなあ。
 どうせ検索する人はするのだから、ゲーム内でナビゲーションしてしまったほうが平等だろう、と今の製作者は考えているのだろうか。
 しかし、あまりにも親切だと、それはそれで、「言われたとおりにボタンを押して、ストーリーをなぞるだけのゲーム」にも思えてくるんですよね。
 このあたりの難しさが、いまのテレビゲームで、AVGが流行らない理由かもしれませんね。
 いまさら、あの「ATTACH」の時代には戻れないし、戻りたくもないけれど、僕にとっては、あの頃のゲームがいちばん面白かったような気もします。それは、当時10代だったという、僕自身の年齢や好奇心が大きかったのだろうけど。
 AVGでは、『シュタインズ・ゲート』みたいに、「謎解きやゲーム性よりも、分岐するストーリーを読ませることに特化していった作品」が目立っています。

 
 スマートフォンには「脱出ゲーム」がたくさんありますし、「牢獄からの脱出」というのは、ゲームにとっても普遍的なテーマなのでしょう。
 
 しかし、今思い出しても、『惑星メフィウス』のあの牢屋はひどいよなあ。僕にとっては、牢屋から脱出するだけで、『ショーシャンクの空に』でしたよ本当に。


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