いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『怒り新党』を支えてきた夏目三久さんとマツコさん、有吉さんの「共通点」

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そうか、夏目三久さん、『怒り新党』卒業なのか……
番組タイトルは『マツコ・有吉の怒り新党」でしたが、僕にとっては、総裁秘書・夏目三久さんを含めた「三頭体制」だったし、同じ気持ちの人も多いのではないかと。
たしかに、番組がマンネリ気味になっていた感は否めませんが(「看板」のひとつである『新・3大』もネタが切れてきたのか、面白さにバラツキが目立つし)、それでも、僕の水曜日の夜は、ずっと『怒り新党』でした。


この番組での夏目さんは、いつも笑顔で姿勢の良い佇まいをみせ、番組を仕切りながらも、マツコさん、有吉さんにいきなり歯に衣着せぬ「直言」を浴びせていたんですよね。


クリスマスに放映された回で、「手作りのプレゼントを喜べない」と頷きあっていたマツコ・有吉に「それは……おふたりがクズだからだと思います」
といきなりバッサリやったときには、逆にマツコさんと有吉さんが、ちょっと羨ましくなりました。ああ、僕も夏目さんに「クズ」って切り捨てられてみたい!


「収録以外ではほとんど3人の会話がない」とかいう話も番組中で出ていましたが、番組では抜群のチームワークというか、バランスだったんですよね。


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それぞれ、MCとして「仕切る」立場になることが多いマツコさん、有吉さんがこの番組では「ワガママ」を言えるのも、夏目さんあればこそ、だったような気がします。


夏目三久さんがこの番組に起用されたというのを聞いて、僕は「えっ、夏目三久って、あの『恋人との流出写真』が週刊誌に掲載されて、干された人だよね。そんなに喋りが上手そうでもないし、すぐ終わりそうな深夜番組で、マツコ・有吉の『いじられ役』として使い捨てられるのだろうな」と思ったんですよ。
今から考えると、本当に「見る目がなかった」としか言いようがないのだけれど。


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いまや超売れっ子の「好感度女子アナ」であり、忙しくなってしまった夏目さんなのですが、御本人も仰っているように『怒り新党』が、「スキャンダルで堕ちた女子アナ」からの再評価のきっかけになったのは誰もが認めるところでしょう。
というか、『怒り新党』までは「もう終わった女子アナ」だと多くの人が思っていたはず。


あらためて考えてみると、マツコ・有吉・夏目の『怒り新党』メンバーって、みんな、人生で大きな挫折を味わった人たちなのです。


有吉さんの「猿岩石」としての栄光とその後の長い雌伏(というか、全然仕事がなくなってしまった)期間はよく知られています。


マツコ・デラックスさんは、ずっと「マイノリティとして生きること」に悩んできたのです。

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この『怒り新党』で語った経歴には書かれていませんが、マツコさんは、ゲイ雑誌の編集者をやめたあと、(外出恐怖症のような感じで)外に出られなくなり、2年間くらい家に引きこもっていた時期もあったのだとか。
そんなマツコさんに声をかけて、対談相手に指名してくれたのが中村うさぎさんだったのです。
それがきっかけて、ブレイクしていきました。


見た目も立場も違うし、お互いの傷を舐めあうような関係ではないけれど、この3人には、それぞれ、他の2人への「(マツコさん風に言うと)アンタもいろいろやらかしてきたけど、しぶとく生きてるわねえ」という「慈しみ」みたいなものがあったと思うのです。
マツコさんも有吉さんも「達人」だから、夏目さんの代わりの人もうまくコントロールしてしまうのではないかとも思うけれど、誰かが誰かをコントロールしてしまうと、僕が知っている『怒り新党』ではなくなってしまう。


僕は、この番組の『新・3大』で、夏目三久さんが涙を流していた2つのエピソードを記憶しています(夏目さんが感涙していたのは、この2つだけではないのですが)。


ひとつめは、フィギュアスケートスルヤ・ボナリー選手の回。
あの長野オリンピックのフリーのボナリー選手の演技。僕もリアルタイムで観ていたのです。
おいこれ、オリンピックだぞ、そりゃもうメダルは無理かもしれないけど、わざと「禁じ手」の後方宙返りをやってみせるなんて、不貞腐れているのか?
そんな驚きと同時に、あの舞台で、あえて反則をやってみせた彼女の「怒り」も感じずにはいられなかったわけで。
自分の演技が不当に評価されているのではないか、「表現力」とは何か? 採点には人種的な偏見は無い、と言い切れるのか?
結局、類まれなる身体能力とパフォーマンスをみせながら、ボナリーはオリンピックでメダルをとることはできませんでした。
でも、この回の最後に39歳になり、プロスケーターとして活躍しているという彼女が、生き生きと楽しそうにスケートをして、あの「後方宙返り」を得意技として見せていたのには、なんだかホッとしてしまったのです。
それでも、ボナリーはスケートが好きだったのだな、って。
スケートの周辺にあるしがらみは大嫌いだったのかもしれないけれど。
ちなみにこの回は、マツコさんも涙しておられました。


もうひとつは、競馬の話で、ブロードアピールというダートの短距離で強烈な追い込みを見せていた馬の回。
ある程度以上の年齢の競馬ファンなら、多くの人が知っている馬でもあり、「おお、何度見ても凄い追い込みだなブロードアピール。芝ならともかく、追い込みが効きにくいダートで、直線だけでごぼう抜きだもんなあ!」と懐かしい気分に浸っていたら、画面の向こうで夏目さんが泣いていたので驚いてしまいました。


えっ、ここ、泣くところ?


競馬ファンの僕が言うのもなんですが、馬ですよ。
すげえ!と拍手喝采することはあっても、なぜ、涙?
しかも、夏目さん、そんなに競馬好きでもないはずなのに。
夏目さんは「感動しちゃいますね」「同じ女性として……」と途切れがちに涙声でコメントしたのを覚えています。
競馬ファンとしては、「そこで泣けるのか!」というのと、「この人は悪い人じゃないな」というのとが入り混じった気分になりました。


この2つの夏目さんが涙したエピソードを並べてみると、夏目さんというのは、「女性であること」「他者から勝手に評価されること」に翻弄され、叩き落とされながらも、それを受け入れ、乗り越えて、這い上がってきた人であり、「挫折体験を含めて、わたしはわたし」という心境に辿り着いた人ではないかと思うのです。


マツコさん、有吉さん、夏目三久さんって、本当に「絶妙なトライアングル」だったと思うんですよ。
本人たちはどう感じているのかはわからないけれど、その「ぎこちなさ」も含めて。



うさぎとマツコの往復書簡

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