いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「ベストペン」「ベストキーボード」を探す、終わりなき旅路


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 2017年4月5日夜に放送された『マツコ&有吉のかりそめ天国』での、久保田アナの「ペンへのこだわり」の話は、なかなか興味深いものがありました。
 「これだ!」と思うようなペンにはなかなか巡りあえなくて、そんななかで、無印良品のゲルインキボールペン、0.5mmがフィットしたのだとか。
 この紺色を「ガバッとまとめ買い」して、いつも失くすので、絶対に切らさないようにいろんなところに何本かずつ入れているそうです。
 1本80円だし、これでけっこう売れそうだよね。僕も80円なら使ってみたい。
 でも、紺色を使う機会って、そんなになさそうだ。
 マツコさんや有吉さんも同じペンを使ってみていたのだけれど、「書きやすいとは思うけれど……じゃあこれがベストかと言われると……『これだ!』というほどのインパクトはないなあ」というリアクションで、さらに「これだと、雑誌とかの紙質だと、弾きそうだよね」とも。


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 僕も文房具、とくに「書きやすいボールペン」を探すのは大好きで、東急ハンズの文房具売り場で、あれでもない、これでもない、などと書き比べるのが楽しくてしょうがないのです(『世界堂』はさすがに遠いので)。
 憂鬱な診断書や各種書類の山に向かうとき、お気に入りのボールペンだと、少しだけやる気が出るし。
 とか言いながら、メインに使っているのは昔は『ドクターグリップ』で、今は『ジェットストリーム』なので、ものすごく「ありがちなチョイス」なんだけれど。
 マニア、というのはおこがましくて、下手の横好き、というところですね。


 筆圧が低いので、あまり力を入れなくても滑らかに書けるペン、そして、ペン先は細めが好き。
 ただ、久保田アナも仰っていましたが、けっこう失くすので、1000円以上するようなボールペンだと、ふだん使いには向かないんですよね。
 コンビニでも売られている『サラサ(ZEBRA)』も常に持ち歩いています。
 『サラサ』で、コンビニで買えるくらいの値段のボールペンもバカにできないな、と思うようになりました。
 安い価格帯のボールペンって、この10年くらいで、ものすごくクオリティが上がりましたよね。


 いやほんと、文房具店に行くと、どうして世の中には、こんなにたくさんの種類、価格帯のボールペンがあるんだろう、と不思議な気分になります。
 性能と価格帯が必ずしも比例するわけではないし(装飾はある程度比例しますけど)、現在100円で買える平均的な質のボールペンであれば、大部分の人は「書く」という本来の目的を過不足なく果たせるはずなのに、たくさんのメーカーから、たくさんの種類のペンが出ています。
 ある程度人気のペンはあるものの、「ベストペン」は人それぞれです。
 使いやすさだけではなくて、「思い出のペン」みたいなものがある人もいて、「字を書くために先端からインクが出る」というだけのものなのに、なぜみんな「手に馴染む」とか「滑らかな書き味」とかにこだわらずにいられないのか。
 極論すれば「至高のペン」と「それなりの値段で、なかなかの書き味のペン」と「質は書くことに支障はないというくらいだけど、とにかく安いペン」の3種類くらいあれば、誰も困りはしないはずなのに。
 それでも少なくない人は「少しでも気持ちよく書けること」に執心してしまうのです。
 最近では、「消せるボールペン」なんてのもありますしね。
(あれはあれで、公的な書類への使用などで、種々の問題もあるみたいですが)


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 昔は安いボールペンなんて、10本あれば、2本くらいはうまく書けない「ハズレ」が入っているのがあたりまえだったのに。
 すぐ書けなくなってしまっていたのに。
 そういえば、僕の父親は医者だったので、家には謎のカタカナ(薬の名前)が印刷されていたボールペンがたくさんありました。


 ボールペンへの偏愛がつのる一方で、パソコンのおかげでペンで字を書く機会そのものは激減しているのです。
 診断書とかも、パソコンで作成できることが多くなりました。
 誤字脱字の修正がしやすいというだけでも、本当に助かります。
 

 僕は文房具大好きなのですが、それでも、どんなペンを使うより、パソコンのキーボードに触るのが、たぶんいちばん好きなのです。
 35年くらい、キーボードを叩き続けているからなあ。
 でも、僕が長年かけてようやく会得し、諸先輩に「お前打つの速いな」なんて言われて良い気分になっていたブラインドタッチは、今の若手にとっては「技術」ですらありません。
 というか、彼らが超高速でスマートフォンフリック入力とかしているのをみると、浦島太郎感がつのるばかりです。
 思えば、僕はこうやってそれなりの長さの文章をほぼ毎日書いて(打って)いるのも、パソコンのキーボード入力のおかげなんですよね。
 手書きだと、どんなペンを使っても、書くスピードは言葉が思い浮かぶスピードに追いつかないけれど、キーボードだと、ゆっくりしゃべるくらいのスピードで、そのまま文字にしていける感じがするのです。
 世界にこんなに誰かの意見が溢れるようになったのは、インターネットとキーボードのおかげであることは間違いありません。


 ただ、このキーボードというのもなかなかの曲者で、それぞれ個性があるのです。
 ボールペンほど安くはないし、スペースもとるので、そんなにたくさん買ってみて比較するわけにはいかないけれど、たぶん、作業効率に大きく影響すると思うんですよ。
 一昔前は、ThinkPadのキーボードが使いやすいと言われていましたが、当時の僕は「キーボードだけのためにパソコンを選ぶわけにはいかないよね、やっぱりCPUとかデザインとか……」と思っていたのです。
 外付けで使いやすいものを買えばいいのかもしれないけれど、ノートパソコンで、キーボードを別に持ち歩く、というわけにもいかないし。
 個人的には「ごく軽く、カチッという、クリックした感触が伝わってくるようなキーボード」が好きなのですが、「マイベスト」を選ぶのは難しい。
 そして、キーボードでパソコンを選ぶのかと言われると、それもまた悩んでしまう。
 ノートパソコンについては「薄く、軽く、コンパクトに」という命題のために、キーボードの使いやすさが、かえって退化しているところもあります。


 僕にとっての「ベストペン」「ベストキーボード」を探す旅は、まだまだ終わりそうにありません。
 ボールペンとか、ここまでのクオリティになっているのに、まだ上を目指して開発を続けている人たちがいるというのは、本当にすごいことです。
 正直、今以上となると、もう「頭に文章を思い浮かべるだけで、勝手に書いてくれるボールペン」くらいしか思いつかないよ……

 それじゃ、文房具というより、『ドラえもんひみつ道具』じゃないか。


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