いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

知らないと危ない(かもしれない)「お金」について考える10冊


いま「ブログとお金」の話が局所的に盛り上がっています。
だいたい、周期的にこういう話は出てきて、「ブログで稼ぐことは否定しないけれど、稼ぐためだけにブログを利用するのは、いかがなものか」という意見を多くみかけます。
ブログって、儲からないというか、大部分の人にとっては、「ものすごく稼ぐのが難しい」のですよね。


「ブログで1か月で20万円を稼いだ!」っていう話を見て、僕も「それはうらやましい、すごいな!」って思ったんですよ。
でも、考えてみてください。
会社勤めをしている30歳男性が「俺、今月の給料、20万円も貰ったんだぜ!」って言っていたら、どう思うか。
働いてお金を稼ぐというのは、尊いことだし、金額の多寡だけで価値を判断すべきではないかもしれない。
「月に20万だと、暮らしはそんなにラクじゃないだろうな……」と、僕なら思う。
副業としてならともかく、それをメインに生活していくのは、まだまだ厳しい世界なんですよね。
にもかかわらず、副業レベルの稼働時間では、大きく稼ぐのは難しい。
現実的には「ちょっと小遣いになれば御の字」くらいです。
それでも、お金の引力というのは強くて、一度稼ぎはじめると、「月10万円の収入で、コンパクトに暮らす」と言っていた人が、どんどん「カネカネカネ」になっていくんですよね。
収入って、お金って、一度得てしまうと、失うことに対して強い恐怖心を抱いたり、稼ぐことそのものが面白くなってしまったりするものなんだよなあ。


今回は「ブログ」のことはひとまず置いて、「お金について考えるための本」を集めてみました。
いちおう、「役に立つ」ことメインの「知識系」と、エンターテインメント性重視の「物語系」に分類しています。
お金関連の話って、読み物としてもけっこう面白いものが多いんですよね。
そして、「知っているつもり」で、案外、目先のことに惑わされている場合があるのです。




d.hatena.ne.jp

知識系。
この本の冒頭に、こんなクイズが出てきます。

【問題】あなたは、銀行から年利12%で100万円借りました。銀行から「返済が大変でしょうから、返済は月々1万円でいいですよ」と言われます。毎月の返済額が減るのは、あなたにとっても嬉しいことであり、さっそくその条件で契約しました。さて、あなたが借金を返済し終わるのは、何年後のことでしょうか?

(※なお、金利は「単利」とする)


A 5年

B 8.3年

C 10年


さて、いかがでしょう? 電卓を使わなくても、暗算で解ける問題です。


端的に言ってしまえば、この【問題】にすぐ答えられる人は、この本を読む必要はないと思います。
答えがわからない、あるいは自信が無い、間違っている、という人向けの「お金、とくに借金に対する啓蒙本」なんですよねこれ。
とりあえず、「これまで小遣い+バイト代で実家暮らしをしてきた高校生が、東京の大学に入って一人暮らしをはじめるときに読んでおいたほうが良い本」だと思っていただければ、間違いないかと思います。



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どちらかというと知識系。
「世の中カネじゃない」って信じられるのは、「カネがある人間」の特権なんだよね。「カネ」がなければ、本当に大事なものを守りたくても守れないことが多すぎるから。
そして、人間が「生まれつきの階層」みたいなものから逃れるための、いちばんの力が、「カネ」であることは間違いないと思う。



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知識系。
知っているのが当然なようで、実際には知らない「お金」に関することがわかりやすくまとめてある本。

書かれている内容が、「お金の歴史」「銀行」「投資」「保険」「税金」など多岐にわたっており、それぞれについてある程度の予備知識があり、詳しく知りたいという人には物足りないと思われますが、僕のように「まずは基礎的なところをひととおり知りたい」という場合には、ちょうど良い内容です。
僕はこれを読んで、「FXがなぜ危険なのか?」をようやく理解できました。



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知識系。
人気作家が、自分の収入をこうしてキッチリと公開するというのは、きわめて珍しいことです。

「今の世の中、専業で食べていける作家は100人もいない」なんて話をよく聞くのですが、森先生クラスだと、どのくらい稼げるのか?
作家って、けっこう丼勘定というか、破滅型の人生をおくる人が多いと思っていたのですが、森先生や村上春樹さんのように、長い間コンスタントに作品を出し続ける作家というのは、本当に「勤勉」なんですよね。



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物語系。
この本を読んでいると、中小企業、とくに、借金を抱えているような「危ない会社」の悲哀を思い知らされます。

 ローカルな中小企業とはいえ、「社長」なのだから、地元の名士として、夜は繁華街で豪遊!みたいなイメージは、粉々に吹っ飛ばされます。

 借入先のひとつのメガバンクとは、著者が経営を引き継いだ際に、こんなやりとりがありました。

 結局交渉の末、メガバンクも元本の支払いを月に100万円下げてくれることになったが、話はまだ終わらなかった。その一件の処理が最終的にまとまった際、支店の次長が、応接テーブルの向こうからこういったのだ。


「湯澤さん、もう一度、ここで手をついて「お願いします」と、支店長に頭を下げてもらえますか?」


 ドラマでも見ているのかと思った。でも、これは現実だった。

 出た!リアル『半沢直樹』!!

 ……って、本当の話なんですよね、これ……

 お父さんの急死で会社を引き継いだばかりの人に、なんでそんなことをさせるんだろう?

 そもそも、土下座したら、借金返せるようになるのかよ!



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物語系。
まあ、「お金の話」というより、経営の話、なのかもしれませんが。
僕は堀江さんの著書をけっこうたくさん読んできたのですが、そのなかでも、この『我が闘争』というのは、いちばん面白かったんですよね。
これまでの堀江さんの著書というのは、堀江さんの「思考や思想」みたいなものを社会にアジテーションするものが多くて、「でも、僕は堀江さんみたいな『天才』でも『強者』でもないしな……」という思いを抱かざるをえませんでした。
この『我が闘争』は、堀江さんの「思考や思想」を書くのではなく、「実際にやってきたこと」を、時系列に、むしろ淡々と振り返っているのです。



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物語系。
家入一真さんといえば、「ひきこもりから社長になった人」であるのと同時に、「studygift事件」や「都知事選出馬」など、話題に事欠かない人、というイメージがあります。
実業家というよりは、「スキャンダルでしかテレビに出ない芸能人」みたいな感じ。
この本には、その家入さんが、創業した『paperboy&co.』を上場させ、『IT長者』になってからの「転落の軌跡」が鮮やかに描かれています。
「趣味悪いよなあ」と自分でも思うのだけれど、栄光の階段を駆け上がっていった人が、そこから転げ落ちていく姿を見るのって、なんでこんなに「面白い」のだろうか。

 僕は言わなかったけれど、アキコさんの計算にはひとつ、抜けているところがあった。僕の途方もない夜遊び代だ。当時、僕は一日で300万円ほど使うこともざらだった。使い方は簡単で、数人で高級バーかなんかに入って、


「この店で一番高いお酒ください」


 と言うだけ。あとはカラオケをするなり、女の子を呼ぶなり、どんちゃん騒ぎで朝まで過ごす。人をどんどん呼んで、呼ばれた人も別の知り合いを呼ぶ。そうやって、まったく知らない人が飲んだ高いシャンパンなりの代金を、僕が全部支払った。


 一日三百万円使う夜遊びを、仮に30日間続けたら9000万円になる。それに、自宅に帰りづらくなっていた僕はほかにもいくつか部屋を借りていて、住居費だけで月に300万円くらいかかっていた。お金がなくなった要因のひとつは僕の無駄使いなのだ。誰かを疑うまでもない。



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物語系。
負けも負けたり、106億円!

この井川前会長の話を聞いたとき、「人って、カジノでそんなに負けられるんだなあ……」なんて、妙な感心をしてしまったものです。


大金持ちたちのギャンブルの様子とか、交流のある芸能人のエピソードとか(宮沢りえさんとか、市川海老蔵さんとかも登場してきます)、100億円ものカネを、どうやってつくったのか、とか……

逆に「もっと早く、会社側、あるいは親族の誰かが、井川さんを止めていれば……」とも思うんですよね。

でも、「会社もうまくいっているし、創業者一族でやり手の社長だった人だし、逆らえなかった」のだろうなあ。

結局、この人は「100億円も不正にカネを引き出すまで、誰からも諫言してもらえないくらい孤独だった」のかもしれません。



ということで、「お金」に関する本を「知識系」「物語系」あわせて8冊紹介してみました。
「まずは、お金について学びたい」という人には「知識系」を、「お金に人生を弄ばれた人びとの狂想曲を観賞したい」という方には「物語系」をお薦めします。


せっかくなので、ブログ、ネットで稼ぐことについて書いてある本も、2冊紹介しておきますね。



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「お金の収支」について、僕が最初に思い出すのは、大学時代の同級生が「安いガソリンスタンドに給油しに行く」と言って、車で1時間もかかるスタンドまで行っていたことなのです。
たしかに、そのスタンドの価格は安かったのだけれど、それでも、リッター何円とかのレベルの違いでしかなくて、そこに往復するまでに使うガソリンのコストを考えたら、本当に得なのだろうか?って。
本人は、半分ドライブを楽しむような気分だったみたいなので、諌言はしませんでしたけど。
あと、浅田次郎さんが「競馬で勝つのは難しい」という話のなかで、「自分は競馬でプラス収支だという人がときどきいるけれど、その人は、競馬場までの電車賃や、競馬新聞など、情報集めにかかる費用や手間も含めて『プラス』なのか、一度よく考えてみたほうがいい」と仰っていたのも思い出します。


純粋にお金が欲しいのであれば、大部分の人はブログで稼ぐより、コンビニでアルバイトしたほうが、確実に稼げます。
「稼ぎたい」というよりは「働きたくない」ということなのかもしれませんが、ブログだって、本当に稼いでいる人は、かなり自分を追い込むような仕事をしているんですよね。
いろんな条件はあるにせよ、「副業であと1000円稼ぐ」より、「生活のなかで、不要な1000円の支出を見直す」ほうが近道な場合って、多いんじゃないかな。



さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

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