いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

Amazonの「めんどくささ」に、みんな気づいてきたのかもしれない。


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 ネット通販の取扱量の増加によって、宅配業者の仕事が過酷になりすぎ、ヤマト運輸Amazonの当日配送から撤退するなど、「ネット書店」への風向きが少し変わってきているように思います。
 僕はネット書店もリアル書店も(そして電子書籍も)頻繁に利用しているのですが、この記事で触れられている「セブンイレブンでの受け取り」は経験したことがありません。

「本サイトは注文された約8割のお客様が自宅配送ではなく、最寄りのセブン-イレブンで受け取っているという大きな特徴があります」(セブンネットショッピング・岡嶋則幸取締役)

セブン-イレブンの石橋誠一郎商品本部長は「ヤマト運輸の労働環境等の問題が出た今春から、通販商品の店頭受け取りが一段と増えている」とし、「配送してもらうより、自分でセブン-イレブンに商品を取りに行った方が、少しでも社会貢献になるのではというお客様の心理の変化があるように思う」と、話す。


 確かに、メディアでかなり話題になったこともあり、自宅への配送は「なんとなく宅配業者に申し訳ない」と感じる人は増えたのではないでしょうか。
 僕も以前に比べて、「不在伝票」をもらうことがないように配送予定日・時間には家を空けないように、よりいっそう気をつけるようになりました。
 Amazonでもスマートフォンで「荷物の配送状況」が送られてくるようになり、時間指定でなくても、いつ届くのかが、かなりわかるようにもなりましたし。
 とはいえ、想定外の用事が生じることもありますし、自宅での受け取りというのは、けっこうめんどくさいものでもあるんですよね。自宅のチャイムを鳴らされると、ちょっとビクッとしてしまう。
 いきなり自宅のチャイムを鳴らす人のなかには、宣伝とか勧誘とかの人も少なくない。固定電話も最近はそんな感じなのですが、「8割方興味がないかめんどくさいか迷惑なアプローチに対応する」というのは、気持ちの良いものではありません。
 携帯電話・スマートフォン、電子メールで、「より親密な用事は、個人個人に直接アプローチできる時代」になっただけに、既存のツールでの打診は「どうせロクな用事じゃないだろ」と憂鬱になってしまいます。
 時間指定といっても、けっこうその時間に幅がありますし、それはそれで運送業者に負担がかかるのではないか(おそらく、それはそれで最大限に効率化できるようにプログラムしているのでしょうけど)、と考え込んでします。
 でも、指定しないと「本日お届け予定です」というので、不在にならないように待っていると、朝から夕方まで身動きが取れなくなってしまう可能性もあるわけです。
 まあ、宅配ボックス最強、という話ではあるんですけどね、これがあると本当に便利なんですよ。
 とはいえ、ある程度新しくて大きなマンションでもないと、あらかじめ装備されていることは少ないし、サイズによっては入らない、ということもあります。


fujipon.hatenadiary.com


 これは3年半前に書いたものなのですが、現状では、Amazonは、こういう障壁をなかなかクリアできていないように思われます。
 というか、本が「物質」であることによる限界って、あるんですよね。
 電子書籍なら、日本全国で発売日の0時から読めるし、書店どころか、宅配業者に応対すらしなくていいし。
 子どもの絵本のように「モノ」であることに価値を見いだす場合はさておき(これも、今後はタブレット端末があたりまえ、になる可能性は十分あります)、Kindleなら、本に埋もれてしまうこともない。
 まあでも、最近よく感じるのは、紙だろうかKindleだろうが、読む人は読むし、読まない人は読まない、ということなんですけどね。
 というか、読む人が、よりいっそう読むようになっていっているだけなのかもしれません。


 個人的には、そんなに宅配業者に負担をかけるのがイヤなら、リアル書店で買えば良いのではないか、と思うんですよ。
 リアル書店員さんたちは、店内で重い本を抱え、付録をつけ、ビニールをかけ、ディスプレイするというかなりの肉体労働をして、お客さんの「ほら、昨日テレビでやってたアレよ、アレ!」というような質問に対応しているわけで、イメージよりもかなりキツい肉体労働みたいです。
 昔のマンガみたいに、立ち読みしている子どもにハタキをかけているだけ、ってわけじゃない。
 好きに本を触らせてくれるところが多いし、定価で売られていますし、何よりも、自分の好きなタイミングで買いにいけて、買ったらすぐに読める。でも、売り場で探すのがめんどう、という人もいるのかな、やっぱり。僕は探すことそのものがけっこう楽しいのですけど。
 セブンイレブンでの受け取りが増えた、というのも、宅配というのは時間を有効に使っているような気分になっていたけれど、「相手のタイミングに合わせる」「自宅で受動的に人と応対する」めんどくささがある、ということに多くの人が気づいてきたからではないか、と感じます。
 こうして、「不在が許されないようなプレッシャー」が強くなってくると、なおさら。
 一人暮らしだとずっと家にいることはけっこうめんどくさいし、家族に受け取りを頼むのも少し申し訳ない。モノによっては「これ何?」って尋ねられるとややこしくなる場合もある(それは、アダルトものに限らず、趣味のものとかでも、少なからずありますよね)。
 

 アメリカみたいに、リアル書店の数そのものが少なくて、品揃えも限られている、ということになれば、ネット書店のシェアがさらに広がっていくことも理解できるのですが、日本で今後もAmazonが右肩上がりになっていくかと問われると、僕は正直懐疑的です。
 大部分の本は、大部分の人にとって「仕事や学校帰り、あるいは出かけたついでに書店に立ち寄って買ったほうが手っ取り早い」のではないかなあ。
 大量に買う人、専門書を買う人、ずっと自宅で仕事をしている人、ある程度以上の規模のリアル書店が近くにない人、対面で買いづらい本を求める場合以外は、ネット書店のメリットがデメリットを上回るかどうかは微妙です。本が「物質」であるかぎり。
 みんながネット通販に慣れてきて、かえってその「弱点」みたいなものに気づいてきたのではないでしょうか。

 
 しかし、冒頭の記事を読んでいて、コンビニで「橋本奈々未さんの写真集いかがですか?」「いや、今日はいいです」って店員さんとやりとりをする場面を想像して、かなり憂鬱な気分になりました。
 そんな過剰なコミュニケーションをコンビニで強いられるのって、売る側も売られる側も、つらくないのでしょうか。
 僕なんか「揚げ物セール中です!いかがでしょうか!」なんて言われて、いちいち「いりません」って言うのもめんどくさいのに。
 そんなにコミュニケーションしたかったら、下町の商店街で買い物するよ!
 ああいう番組に出ているタレントさんたちのコミュニケーション能力って、すごいよね本当に。
 そういえば、コンビニで売られている雑誌の種類や数って、20年前くらいを思い出すと、かなり減ってますよね。雑誌そのものが売れなくなってきているから、しょうがないんだろうけど。
 書棚が隙間だらけで、「最初はここにもっとぎっしり雑誌が並んでいたのだろうな」と思うことがよくあります。


 雑誌が売れなくなった、リアル書店がどんどん減っている、出版業界の危機、なんて言っているうちに、ネット書店も、すでに転換期を迎えつつあるのではないか、とも思うんですよ。
 そもそも、「本」というコンテンツそのものに魅力がなければ、ネット書店も先細りになるばかりです。


 まあ、Amazonという会社は、そういうことも、わかっているんだな、とは感じるんですけどね。

www.businessinsider.jp

 
 これを読んでいて、Amazonリアル書店回帰というのは面白いな、と感じたのですが、意外だったのは、「取り扱っている本は、およそ3000冊」というところでした。
 3000冊って、うちの近所のTSUTAYAでも、もっと多いんじゃないかな……
 セレクトショップみたいな感じなんでしょうけど、海外には日本のような「大規模書店」というのは少ないようです(と言われていますが「あるところにはある」みたいですね)。


www.excite.co.jp

 

ちなみに、日本最大の在庫数といわれているのが「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」で、約200万冊。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
honto.jp


 でも、「200万冊分すべてのデータが、スマートフォン1台に入っている」時代もすぐそこにあるのでしょう。ひとりの人間では、それを処理しきれない、というだけの話で。


 あらためて考えてみると、Amazonって、受け取るのはめんどくさいけど、一度登録してしまうと、買うのは簡単なんですよね。検索して確認ボタンを押すだけだから。
 実は、Amazonがここまで強くなってきたのは「宅配の便利さ」よりも、「人やお金を介さなくても、その場で『買う』契約をするところまでいけてしまう気軽さ」が大きいのかもしれません。
 で、注文したあと「ああ、受け取るのめんどくさいなあ」とか僕はいつも思っているわけです。
 そういう意味では、ネット通販の世界で、多くの人がすでに情報を登録しているAmazonを脅かすのは、なかなか難しいんじゃないかな。カード情報の入力とか、けっこうハードルが高いし。


fujipon.hatenadiary.com
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