まつもと泉さん、亡くなられたのか……61歳、いまの世の中では、ちょっと早すぎるよなあ。
僕が、まつもとさんの作品で真っ先に思い出すのは、『きまぐれオレンジ☆ロード』なのですが、この作品が『週刊少年ジャンプ』に連載されていたのは、1984年15号から1987年42号までで、全156話だったそうです(Wikipediaで調べました)。
中学〜高校生か……人生でいちばん『ジャンプ』を一生懸命読んでいた時期でもあり、あの頃の『ジャンプ』はやたらと売れていて、面白かった。
正直、僕は物心ついてから40代後半の現在まで、「ラブコメ」とか「恋愛もの」は小説でもドラマでも映画でも苦手で、「自分に関係ない二人がイチャイチャしているところなんて情報量が少なくてコストパフォーマンスが悪いから、歴史ものとかのほうがいいや」とかうそぶいていたのです。
本当は「自分は全くモテない、恋愛にも縁がない人間だから、恋愛ものの世界はあまりにも眩くて敬遠していた」のですけどね。
『きまぐれオレンジ☆ロード』も、『ジャンプ』で連載がはじまったときには、「何この、かわいい女の子にモテまくりで超能力まで使える主人公(春日恭介)って……」と、半ば怒りの感情すら抱いていました。まあでもこれ、今思うと、その後のライトノベルの「俺無双系」につながっていたのかもしれません。
「まあ、買った本は隅々まで読むのが僕の流儀だからな……」と自分に言い聞かせつつ、案外楽しみに毎週読んでいた、というのが実際のところでしょうか。
今回、『きまオレ』を読み返してみたのですが(ネタにするために1巻だけ読むつもりだったのだけれど、結局最後まで読んでしまいました。連載4年分くらいって、『鬼滅の刃』もそうだけど、なんとか一気に読み切れるくらいの分量、ではあるんですよね。
恭介とまどかの出会いで、まどかが吸っていたタバコの火を超能力で消す恭介。
「(高校生の頃からタバコ吸ってると)丈夫な赤ちゃんが産めなくなるぜ」
僕は、こういうのを読んで、「2020年だったら、ポリコレ的に微妙だ……」とか思ってしまうような大人にならぬつもりがなっていた。ああ。
恭介と鮎川まどかはお互いに好きなのに、まどかの後輩、檜山ひかるが恭介に一目惚れしてしまい、恭介も持前の優柔不断をフルに発揮したために、大変もどかしい展開になるのです。リアルタイムで読んでいたときには、「ひかる、空気読めよ……」みたいなもどかしさを感じていたのですが、今読むと、「ひかる、なんか二人を盛り上げるために躍らされているみたいで、かわいそうだな……」と思ったんですよね。
それと、リアルタイムで読んでいたときに、結局最後は恭介とまどかがくっついたことに、「ああ、ひかるはあんなに頑張っていたのに、『ヒロイン属性』を持つキャラクターの前では、どんなに尽くしても無力なんだな……」と、ちょっとせつなくなったのを思い出しました。
僕が読んできたマンガでは、基本的にどんなに主人公に尽くしても、「おせっかい恋敵キャラ」は、「ヒロイン」に負けてしまう。
『ウイングマン』のあおいさんは美紅ちゃんに負ける(あれは、「負けた」のか微妙かもしれないけど)、『シュタインズ・ゲート』で、岡部は、椎名まゆりの献身を知っているし、まゆりのためなら地獄の無限ループにすら立ち向かうのに、恋愛対象としては、牧瀬紅莉栖のほうに惹かれてしまう。
どんなに恋敵ががんばっても、最後の勝利は「ヒロイン属性」を持つ者にもたらされる。
実際の人生では、われわれの大部分は、ビアンカとフローラを選択するような状況には陥らないし、まどかとひかるのどちらにするか、なんてことにはならない。もっとも、そういう困った状況に、「なる人はなる」みたいなんですけどね。ネットとかをみていると、「なんでこんないいかげんなヤツが……」とか言いたくなることも多いのだけれど、年をとってみると、人は人のどうしようもないところに惹かれてしまうこともあるのもわかる。ただ、それで後悔することも多いけどさ。
現実では、まどかよりもひかる、牧瀬紅莉栖よりも椎名まゆりをパートナーにしたほうが、人生をイージーモードにしてくれるような気もする。
まあでも、「こんなの現実にはありえない!」とか言うのが間違っていて、実際は「現実にはありえないことを自分のハードディスクに仮想体験としてインストールするために、ラブコメとか恋愛ドラマは存在する」ということなのだろう。人生にドリムノートが出てきたり、タイムリープで絶望体験を繰り返したりしていたら、それはそれでやってられないだろうし。
僕の幼少時の記憶のなかで、忘れられない「恋愛もの」があるのだ。
まだビデオデッキが一般的でなかった時代、テレビアニメを本にしたもので読んだ、『超時空要塞マクロス』。
スーパーアイドルのリン・ミンメイ VS 地味な年上の上官・早瀬未沙。
僕は、「なんのかんの言っても、結局、主人公の一条輝は、ミンメイと最終的にはうまくいくんだろう、と思いながら読んでいたんですよ。
だってさ、スーパーアイドルだよ。
ところが、輝が選んだのは……
『マクロス』には、「世の中には、こういうこともありうるのか……」と小学生心に学んだ気がする。
「あとで、『やっぱりミンメイだったかな……』と後悔したこともあっただろうな」と思うし、恋愛なんて、うまくいった瞬間から、あとはもう延命治療みたいなものだな、とか言いたくなるけれど。
この『マクロス』を読んだのは、『きまオレ』とか『ウイングマン』よりずっと前だったのだけど、僕にとって、「ヒロイン属性を持つキャラクターが完全に負けた」作品って、これ以外に、すぐには思い出せない。ラブコメ、恋愛もの好きの人には「勉強不足!」って一喝されそうですが、僕にとっては、偶然衝突した作品以外は、避けてきたジャンルでもあり。
まあでもこうして思い返してみると、僕は「恋愛ものが苦手と言いながら、顔を覆った指の隙間から、それを見ずにはいられなかった」のかもしれません。
「ヒロイン属性」といえば、『ファイナルファンタジー7リメイク』のエアリス、ティファのWヒロイン属性はすごかったな……
何のオチも教訓もない話で申し訳ない。
まつもと泉先生の御冥福を心よりお祈りします。
「Like or Love?」
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