いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『note』上場について語るときに僕の語ること


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『note』が2022年12月21日に東証グロース市場へ上場!
以前から上場の噂はあったのですが、ついに決まりました。

 僕自身も『note』を利用していますし(最近はすっかり無沙汰ですけど)、ブログやクリエイターを応援するサービスの「価値」が認められてほしい、と願っています。やっぱり、稼げないとサービスというのは続かないものなので。

 その一方で、炎上騒動などの揉め事が多い印象がある『note』は、上場企業としてうまくやっていくことができるのか?と懸念してもいるんですよね。


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 2021年の8月には10年間続いていた『cakes』が終了しており、正直なところ、今回の上場には「今後の成長性が期待できるのだろうか……」とも思うのです。


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 僕がいつも参考にしている新規公開株(IPO)の情報サイトでは、想定価格は300円くらいとのことでかなり安く、公開株数は多くも少なくもなく、という感じです。想定吸収金額は4.4億円と、IPOとしては小規模です。

 このサイトでは『note』の最近の業績も紹介されているのですが、

売上高は右肩上がり。ただし経常損失が続く

 という状況で、企業側からは景気の良い見通しが語られているものの、そんなにうまくいくのだろうか、という印象です。
 『note』自体は知名度が高く、固定ユーザー、ファンも多いので、株の単価を安くして、ファンが1単元(100株)くらいずつ、ファンアイテム的に持ってくれるのを期待しているのかもしれません。

 上記のサイトには「上場の意義がわからない(感じ取れない)」というコメントも付けられているのですが、僕も「上場ゴール」というか、「ゴールを過ぎているのに、今さら上場?」とは思うんですよね。
 これまでの『note』が抱えてきた揉め事の数は性質を考えると、「上場企業としてのコンプライアンス」が問われることに耐えられるのだろうか、と心配でもありますし。

 いやまあ、僕も100株くらいは欲しい、と思ってはいるんですけどね。
 投資というよりは、応援のつもりで。
 正直、投資として買うことはおすすめしづらい(IPO株としては、価格が安いのでそれなりに人気にはなって、少し利益は出そうな気はします)。

 でもなあ、上場するにしても、もう少し早ければ、「期待値」で、もっと買われていたのではないかなあ。
 コンテンツやサービスの勢いも、一時に比べたら落ちてきていて、大きな話題になるのは炎上したときばかりだし。


 このあいだ、三谷幸喜さんの舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』を観に行ったのです。三谷さんが、若かりし頃に主催していた『東京サンシャイン・ボーイズ』で初演した作品です。ひたすらいろんなことが起こって観客は頬が緩みっぱなしになる、勢いのある「おもちゃ箱」みたいな舞台でした。お涙成分が皆無なのは、かえって新鮮。

 三谷幸喜さんは「東京サンシャイン・ボーイズ」を振り返って、「途中で、やっている側としては、『ピークを過ぎてしまった』という時期が来たのだけれど、お客さんやメディアの反応(いわゆる「人気」)は、その「ピークを過ぎた」時期からさらに急激な上昇カーブを描いていって、やめるにやめられず困惑した」と、以前書いておられました。


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 外部からみれば「上場のタイミングが遅い」とも思う、今回の『note』の上場ですが、内側からは、「黒字化して、もっと評価を上げてから」とか「まだクリエイター市場はこんなものではないはず」と考えていたのかもしれません。

 どこが人気のピークか、なんて、やっている側にはなかなかわからない。
 僕だって、いつの間にか、PV(ページビュー)が激減し、こうして過疎ブロガーになっているのです。まだいけるはず、と思い込んでいるうちに。

 いや、もう右肩下がりだろう、と決めつけるつもりもないんですけど、今のネットのコンテンツサービスって、「読ませたい人」「読ませて稼ぎたい人」ばかりが増えていて、「読みたい人」は頭打ちになっている印象なんですよ。これからは企業向けに、といっても、そこはもうレッドオーシャンだし、『note』のこれまでの炎上対応へのネットでの反応をみると、公的機関や大企業では使いにくそうです。


 上場のタイミングって、「えっ、この老舗がいまさら?」なんてこともありますしね。紀文食品とかローランドとか。
 最近のネットサービスで印象的だったのは、『まぐまぐ』が2020年9月24日にIPO(新規上場)したことでした。
 えっ、『まぐまぐ』って、2000年代前半くらいに、メールマガジンで一世を風靡した記憶はあるけど、ここで上場なの?そもそも、今、何やっているの?と驚いたんですよね。
 それでも、上場してみると、『まぐまぐ』は公募価格が810円に対して、初値は3400円!ピーク時は5000円を超えていました。
 ちなみに2022年11月18日現在は600円くらいです。

 
shikiho.toyokeizai.net


 2年前に『まぐまぐ』が上場したのだから、今回の『note』など、まだまだこれから、と考えられなくもない。


 ちなみに、われらが『はてな』上場は2016年2月。公開価格は800円だったそうです。
 公開時は大人気で初日は「買い」が多くて値がつかず、初値は3025円!
 IPO(新規公開)株は高値になりやすいとはいえ、公開価格の4倍近くにまで上がったのか……

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 当時の僕は個別株はやっていなかったのですが、株をはじめたとき(4年くらい前)の『はてな』は4000円くらいだったんですよね。それが2500円まで下がったときに、『はてな』ユーザーとして、株主になってみたかった!と1単元(100株)購入しました。ここまで下がれば、少しは上に戻るだろう、とも思ったんですけどね。

 ちなみに、現在の『はてな』の価格は1100〜1200円くらいです……

 あまり急激な成長や見栄えのする決算を求めず、カネカネしていないところが、「『はてな』らしさ」のような気もしますが、もう株主というよりは「応援馬券」みたいな感じです。
 これから劇的に『はてな』の株価が上がりまくるような状況も考え難いものなあ。

 「落ちるナイフは拾うな」
 株式投資の世界ではよく知られた警句を思い出します。

 率直なところ、『note』の上場って、利用者やファンが株を買う、クラウドファンディングみたいなものじゃないか?とは思うのですが、そういう上場もありといえばあり、なのかもしれません。
 僕の『はてな』株も、すでにそんな感じですし。
 まあでも「上場するための上場」あるいは「換金」って気はするよなあ。育ててきた企業をお金に換えるのは、決して悪いことではないんだけれど。

 昔、桜玉吉さんが、マンガで「アスキー株」をネタにしていたのを思い出すなあ。


 不躾なことを書きましたが、僕は『note』にも頑張ってもらいたいと願っています。インスタで見栄えがする写真を見せられるわけでもなく、Twitterインパクトがある140文字にまとめるのも得意ではないので、僕にとって居場所がありそうなネットサービスは、なるべく長く続いてほしい。

 その一方で、僕自身、こうして長年書き続けてきて、「比較的長い文章を読んでもらうこと」のハードルは、これからも上がっていくのは避けられないとも感じています。


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