いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

緩募:「煮詰まった中年男性」の気分転換の方法


 ちょっと弱っている。というか、なんだか煮詰まっている。
 新型コロナウイルスの流行から2年半、ようやく収束も見えてきたのではないか、と思いたい状況ではある。
 僕自身は、50年間インドア系として生きてきて、外に出るのはギャンブルかゲームセンターか書店に行くときだけで十分……なつもりだった。いやそもそも、これらのことさえ、今の世の中では家に居ながらにしてほとんど可能になっている。昔は「やっぱり馬券が手元にないと盛り上がらない」と思って場外馬券売り場になんとか時間をつくって通っていたものだが、最近はネット投票全盛となり、発売締切直前でオッズが大きく変動するので、僕のような薄利本命党でなるべく当てて気分良く過ごしたい人間にとっては、発走直前のオッズまで確認して買わないと「当たったけどマイナス」みたいなことが頻繁に起こるのだ。ネットはどこからでも、リアルタイムで参加できるという大きなメリットがある一方で、だからこそ、何にしても、締切直前で大きく変わることが多い。株などにしてもそうだ。

 ああ、こんな話をするつもりじゃなかった。
 とにかく、今の自分は、未曾有の閉塞感、みたいなものにとらわれていて、なんだかどうしたらいいのかわからないのだ。
 死にたい、とか、消えてなくなりたい、というようなものではなくて、とにかく何もしたくないのに、このまま同じところをぐるぐる回りながら時間だけが過ぎていくのが怖い。子どもたちの成長は喜びではあるが、成長どころか退化、老化していく自分にうんざりしている。新しいことへの興味とか、これからやりたいことも、なかなか思いつかない。

 そういえば、こういう「煮詰まった中年」のことを採りあげたエントリがあったな、と思いだし、読み返してみた。


www.gentosha.jp
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 新型コロナ前までは、学会に出かけて、必要なもの以外は何もないビジネスホテルで、道中買った本を熟読したり、ベッドに寝転がって日頃はしない晩酌をしたりするのが気分転換になっていた気がする。旅先で美術館や水族館に行く、という楽しみも、ここ3年くらいは無沙汰になってしまった。近場でもいいから、気分転換のためにビジネスホテルに1人で1泊してみるか……まあ当直していると思ってもらえれば……と考えて、予約サイトを眺めてもみるのだが、安いビジネスホテルで1泊5000円、うーん、ゲーム1本買えるな……とか、思い悩んでしまう。

 髪型を変えるのは良いかもしれないが、仕事と年齢を考えると、あまり奇抜なヘアスタイルは難しいし、そもそも僕は床屋が苦手なのだ。なるべく短時間で、邪魔な分の髪を切ってくれるのがいちばんいい。そのくらいのハードルは乗り越えるのが自分を変える、ということなのは百も承知なのだけれど……
 車も、買おうと思えば買い換えられるものではあるのだが、僕は基本的に車とか運転というのが好きではなく、でも田舎暮らしなので事故に遭わないようにそろそろと運転しているというのが正直なところだ。高級車やスポーツカーには興味が持てない。だからこそ、フェラーリでも買ってみれば人生変わるのかもしれないが、それほどのお金はない。昔、『こち亀』に、フェラーリ好きが高じてフェラーリに住んでいる人が出てきたけれど、あれほどの「好き」の熱量は僕にはないのだ。そういえば、昔「あなたはいろんなことにそれなりに詳しいけれど、ひとつも『ものすごく好き』とか『誰よりも詳しい』っていうものはないよね」と言われたことがある。そんなこと言うほうもけっこう酷いとは思うが、まあ当たってはいるだろう。いまのインターネット的には、「広く浅く」にもそれなりに役割はあるのかもしれないが、マニアや専門家として生きようとしている人間にかける言葉としては残酷だ。

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ  ──若山牧水


 僕は昔からこの短歌が好きだったのだが、結局のところ、自分は白鳥として生きる勇気もなく、中途半端に自分を青く塗って生きてきたような気がする。


 この「何もやる気が起きないのに、何もしていないことに焦りを感じ、煮詰められていくような感情」というのは、いわゆる「中年の危機」的なもので、どこかで乱気流を抜けるように気分が晴れるものなのだろうか。あるいは、何か適切な解消法があるものなのだろうか。
 先回りして「できない理由」を並べ立てるより、まずはやってみろ!と自分でも思うのだが、近所のビジネスホテルに1泊することでさえ、なかなか踏ん切りがつかないものなのだ。なんなんだこれは。

 最近の1年くらいで新しく始めた習慣としては、『FIT BOXING2』で週に4~5日くらい「かるめ」でデイリーエクササイズをこなしていることと、漢方薬眠剤を試していることくらいで、体重が減りもしないが増えることはなくなっているのと、とりあえず夜寝る時間が或る程度コントロールできるようになってはいる。

 ブログ的には、ここで「これが中年の危機の解消法だ!」「こういう煮詰まった気分を解消するための5つの方法」などが書ければ良いのだろうし、5年前くらいの僕ならたぶんそうしていたと思うのだが、この文章は、何の結論もないままこれで終わる。それで、とりあえずAmazonのタイムセールで、ボールペンとかをポチポチ買ったり、Steam Deckを眺めては「でも、最近はPS5すらほとんど触っていないものなあ」と「いつか買いたいものリスト」を満たしたりして生きている。買いたいものがなくなったら、人生終わりそう。
 
 まあでも、別に死にたい、消えたいっていうのでもないんだよね。ただ、やたらとめんどくさく感じることばかりなだけで。


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