いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

インターネット時代の新元号「令和」フィーバーへの雑感


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「平成」から「令和」へ。
おお、もう「令和」に一発で変換できるようになってる!インターネット社会すごい。
思えば、昭和から平成にかわったときには、インターネットはまだほとんど普及しておらず、昭和天皇崩御に伴う改元だったので、大喜利、という雰囲気ではなかったのですが、今回の改元は、今上天皇生前退位+社会の混乱を防ぐために早目の発表、ということで、「お祭り」というか、改元という大イベントが行われた、という感じがします。
しかし、10連休(とはいっても、全部休める人はごく一部でしょうけど)の最中に改元、というのも、けっこう大変そうですよね。

実際のところ、日本の元号制度に関しては、日頃、高齢の患者さんの診断書などを書く際に、「大正12年って……西暦で何年だったっけ……」ということで、しょっちゅう検索しなくてはならない僕にとっては、もうみんな西暦で良いんじゃないかな、と思うところもあるのです。 
実務的には、この和暦と西暦の変換というのは、けっこう社会的なコストが大きいのではなかろうか。
ちなみに僕は、自分が生まれた年が昭和何年だったか、というのと、太平洋戦争が終わった年が、1945年=昭和20年、というのを基準に変換していることが多いです。
僕が仕事をはじめた20数年前には、まだ、明治生まれ、という人が少なからずいたのですが、最近は大正生まれの人もだいぶ割合が減ってきました。時間は確実に流れている、ということなのでしょう。
「令和」という音からは、『キャプテン翼』の「明和」っぽいな、という印象を受けたのですが、すでに「明和」は元号として使用歴があるのです。これまでの250近くの年号をみていくと、数年しか使われていなくて、大きな災害が起こると気分を変えるために新元号、なんてことも少なからずあったみたいで、やりこみすぎて名前が思いつかなくなった『ダービースタリオン』の馬のネーミングみたいな、これまでの元号の使いまわしっぽい時期もあります。「元号」は日本の歴史的な遺産、という人もいるけれど、人々が元号を強く意識するようになったのは、「明治」以降なんですよね。

思えば、「昭和」が「平成」に変わったとき、まだ高校生だった僕は、「これで将来は『だから昭和生まれは……』と若者に言われるようになるのか」と、ちょっと悲しい気分になりました。
それと同時に、自分の年齢と皇室の方々の年齢を考え、「まあ、『平成』の次の次、くらいまでは生きていられるかな」と思ったのです。
平成の30年間に父母が亡くなり、他にも、少なからぬ人を見送り、僕自身が親にもなりました。
「平成」という元号をはじめてきいたときには、「昭和」の重厚さに比べて、なんだか「軽い」な、と感じた記憶があります。
そんなに長くは続かないのではないか、と予想していた「平成」は、30年以上も続き、僕もオッサンになりました。
「令和」の「令」という字は、なんだか「命令」っぽくてイヤだな、とちょっと思ったのですが、出典を確認すると、「令月」というのは「何事をするにもよい月。めでたい月」ということですから、安定はしているけれど停滞も伴っている日本の再出発、というポジティブな意味をこめて、ということなのでしょう。


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率直なところ、「新しい元号が発表される」というのは、大きなイベントではあるけれど、この盛り上がりのためだけに、また長い間、和暦と西暦の変換が続くのか……とも思うのです。そういうのも、コンピュータによって、かなり負担は軽減されているところはあるのだけれども。
実際、めんどくさいのは間違いないし、「元号による世代の区切り」みたいなものって、人々の思い込みでしかない。
元号というのは、こちら側の都合で変えられるようなものではないのだし。

個人的には、「平成」が終わるというのは、僕の人生もそろそろ「畳む」とか「終活」みたいなことを意識する時期になってきたのかな、と感慨深いものがあるのです。
30年前の、まだこの先どうなるかわからない、希望と欲望と絶望が入り混じっていた高校生だった僕が過ごす、最後の元号になるかもしれない「令和」。

正直、2019年になっても、こんなに日本人が「元号」大好きだとは思ってなかったよ。
とりあえず、「『令和』が、より多くの人にとって幸せな時代になりますように」と願っております。

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元号 年号から読み解く日本史 (文春新書)

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