いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

平成という時代と、僕がみてきた有馬記念


 明日は、平成最後の有馬記念だ。
 競馬者にとっては、毎年、有馬記念の週になると、突然「年末」を突き付けられたような気分になる。
 昨年からは、このあとに「ホープフルS」という2歳G1が新設されたので、「今年最後という感傷」には、やや乏しくはあるのだが。

 有馬記念は世相を反映する、なんてことがよく言われるけれども、平成の有馬記念のレースを振り返ると、個人的にもいろいろと思い出すこともある。
 なにせ、平成は30年もあったし、昭和に生まれた僕の人生の3分の2くらいを占めているのだ。
 今上天皇が即位されたときの年齢から、そんなに長くは続かないのではないか、と予想していた平成が、僕にとっては、良くも悪くも、いちばん、いろんなことがあった時代になった。


www.g1-guide.com


 昭和63年(1988年)、昭和最後の年の有馬記念の勝ち馬は、オグリキャップだった。
 今の競走馬の年齢表記では3歳だったオグリが、なかなか越えられなかった同じ芦毛の名馬・タマモクロスについに勝ったのがこのレースだった。

 そして、平成2年、オグリキャップ奇跡の復活劇。
 僕が競馬を観るようになったのは、ダービースタリオンと、テレビのドキュメンタリーでこのレースのことを知ったのがきっかけだった。

 レースそのものはタイムも遅いし、低レベルだった、とも言われるが、不振が続いていたアイドルホースが、武豊を背に引退レースを勝ったのは、まさに「ドラマ」だった。競馬場には「オグリコール」が響き渡り、中継をしていた人までが声を詰まらせた。


fujipon.hatenadiary.com


 あらためて考えてみると、このレースや平成5年のトウカイテイオーの1年ぶりに出走しての勝利など、僕にとっては、馬券を買っていなかったからこそ、「伝説」に感動できる、という面もあるのだけれど。
 惨敗が続いていたオグリやほぼ1年ぶりのレースがG1というあの年のテイオーを馬券購入者としての僕は全く評価しなかったはず、というか、むしろ、「人気を吸ってくれるお客さん」として、嬉々として買い目から外していて、この奇跡に対して、「なんだよそれ……」と悪態をついていたに違いない。


 有馬記念というのは、良く言えば「ドラマチック」、悪く言えば「なんでこんな結果になるんだ……」というようなレースになりやすいのだ。
 小回りでコーナーが多く直線も短いため、器用さが求められ、外枠不利な中山競馬場の2500mという舞台は、枠順や騎手の腕が重要なコースでもある。

 平成3年のダイユウサクの優勝や翌年のメジロパーマーの逃げ切り、平成18年には、あのディープインパクトが、まさかの先行策をとったハーツクライに敗れている(馬券的にはそんなに荒れてはいないのだが、ハーツクライは中山が苦手、という説を僕は信じていて、けっこう痛い目にあった)。平成20年にはマツリダゴッホが勝って悶絶し、その翌年には、2着に大外のアドマイヤモナークが飛び込んできて絶句した。平成26年には、これも「中山は苦手」とされていたジェンティルドンナが快勝したのだが、ジェンティルの馬券は1枚も持っていなかったものの、なぜかトゥザワールドゴールドシップのワイドをけっこう勝っていて、「くそ!なんだこのレース!」と憤怒しかけて、「えっ、当たってる!!」と小躍りしたのが記憶に残っている。馬券というのは、あとから振り返ると、「なぜこれを買わなかったんだ……」と「どうしてこれを買ってしまったんだ……」ばかりなのだが、このワイドだけは、いまだに「なんで買えたのかよくわからないが的中した馬券」という気がする。


そうそう、世相といえば、2001年、あの同時多発テロの年には、1着マンハッタンカフェ、2着アメリカンボスという大荒れの結果になったんだよなあ。今から思えば、ネタとしてでも買いそうなのだが、当時は、マンハッタンカフェはさておき、アメリカンボスは距離が長いから用なしだと思っていた。というか、アメリカンボスとかアドマイヤモナークが来るのだから、もう何が来てもおかしくないレースでもある。


個人史としては、平成8年の12月に父親が亡くなり、葬儀が終わってしばらく実家で過ごしているときに、テレビで見た、久々に馬券を買わずに観た有馬記念を思い出す。サクラローレル1着、マーベラスサンデー2着で、これ、馬券買っていたら、絶対に当てられてたなあ、買えないときにかぎって、予想は当たるものだな、と、ひとり苦笑したものだ。
その2年後、グラスワンダー1着、メジロブライト2着で、けっこう良い配当をゲットした数日後に、長患いしていた母親が亡くなった。全く関連がないのは百も承知だけれど、ラッキーなことがあると、その反動みたいなものがあるのではないか、と、今でもけっこう不安になる。逆に、馬券が外れたときには、厄払いをしたと考えようとしているのだが、こちらはなかなかうまくいかない。


オルフェーヴルには、僕自身がとてもきつい状態にあるときに、何度か助けてもらった。
引退レースの有馬記念単勝で大勝負していたのだが、直線で後続をぶっちぎっていったのをみて、涙が止まらなくなった。
もう一度、生きてみようか、と思った。


fujipon.hatenablog.com


去年のキタサンブラックの引退レースは、クイーンズリングが抜けて外してしまった。キタサンから、ほとんど総流しだったにもかかわらず。あれからもう、1年経つのか。


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有馬記念は、毎年、始まる前までは、「今年を締めくくる総決算!」だと息巻いていて、終わると、「結局、不確定要素の多い競馬のなかで、さらに荒れやすい中山2500mのレースでしかないんだよな」と、肩を落としているような気がする。
そんななかで、オグリキャップトウカイテイオーの復活や、ディープインパクトキタサンブラックの有終の美や、絶句するような世相馬券がみられるからこそ面白いともいえるし、あんまり考えてもしょうがない、とも思う。
実力通りに決まらないことが多いレースだからこそ、さまざまなドラマを生んできた、とも言えるのだ。
僕のような「本命党」にはキツイ結果も多いけど。


せっかくなので、最後に今年の僕の予想を書いておきます。
とはいっても、本当に面白くない予想しかできないんだけどさ。


レイデオロ
〇キセキ
▲ブラストワンピース
☆モズカッチャン
△ミッキースワロー
△ミッキーロケット


平成最後の有馬記念は、どんなレースになるのやら……
(ドラマ的には、オジュウチョウサン優勝なんでしょうけどね。さすがにそれは無いというか、僕は「こんなにオジュウチョウサン単勝が人気なら、他の馬の単勝で勝負するのが得なのでは」とか考えてしまう人間なので……)


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