長友選手がTwitterで紹介していたのをみて、21時から、NHKスペシャル『ロストフの14秒日本vs.ベルギー 知られざる物語』を観た。
僕はそんなにサッカーのことを知っているわけではなくて、日本代表の試合とサンフレッチェ広島の成績、サガン鳥栖の残留くらいにしか興味がない「にわか」なのだけれど、この番組をみながら、サッカーというのは、こんなに奥が深いスポーツなのか、と圧倒されっぱなしだった。あの2018年ロシア・ワールドカップ決勝トーナメント1回戦での日本対ベルギー戦は、リアルタイムで観ていて、まさに天国から地獄に突き落とされるような試合で、この番組も「日本はどんなミスをして、あんなカウンターを食らってしまったのか」を検証する番組だと思い込んでいたのだ。
だが、実際は、お互いにハイレベルでの攻防で、日本代表は全力を尽くして守ったものの、ベルギー代表は、それを上回るテクニックと集中力、そしてチームワークで、あの「伝説の14秒のカウンター」を決めたのだ。
キーパーはこれまでの相手チームのセットプレーを全部みていて、日本が時間稼ぎではなく攻撃してくることを読んでキャッチを選択し、デ・ブルイネ選手はキーパーからボールが来ることを予期して動き、大きな間隔のドリブルでディフェンスの山口蛍選手に「ボールを取れる」と思わせて、減速してパスを出した。その選手を長友選手がマークして選択肢を消し、エースのルカク選手には長谷部選手がついたものの、ルカク選手は自らシュートを打たずにスルーし、最後はシャドリ選手がゴールを決めた。
途中、「これを止めるには、カードをもらうことを覚悟して、ファウルで止めるしかなかった」と多くの選手が語っていたのだが、選手たちにとっては、ファウルというのも、「ひとつの選択」なのだな、ということを思い知らされた。でもやっぱり、「ファウルで止めにいく」というのは、日本の選手たちにとっては、抵抗があるのだろうと思う。観ている僕だってそうだ。あの試合が終わったときには「ファウル覚悟で止めろよ!」とぼやいたけれども、こうして時間が経ってみると、「これもまた日本のサッカー」なのだという気がする。
オシム監督が「山口は足元に飛び込んでファウルするしかなかった。それはスポーツマンシップに反する行為で、レッドカードになったと思うけれど。故意のファウルは日本人らしくない。確かにフェアプレーを重視することで日本人は損をすることが多い。多すぎるかもしれない。いや間違いなく多いだろう。望ましい結果が得られなくても、それが日本人なのだ」と語っていたのがとても印象的で、オシム監督は、そこで、「ファウルしてでも止めるべきだ」とも「やっぱりファウルはすべきではない」とも言わなかった。オシム監督自身も、この問いに「正解」はない、と思っているのだろう。
オシムさんが元気そうだったのは、ちょっと嬉しかった。
あのカウンターの前のコーナーキックで、延長戦に確実に持ち込まなかったことを批判する人もいたのだけれど、リアルタイムで観ていた僕はあのとき、日本の選手たちは精神的にも肉体的にもかなりきつそうで、2点差を追いつかれたこともあり、延長戦になったら確実にやられるのではないか、と思っていた。ベルギーは追いついて勢いに乗っていたし。なんとかあそこで1点をもぎとって試合を終わらせるというのが、唯一の「勝ち目」だったのではないか。いや、あまりにもヒリヒリする試合に、観客である僕のほうが「もうこれは観ていられない……」という心境でもあった。
しかし、あの長谷部選手のプレーが「流れを変えた」というのも、「結果論」のような感じはするのだよなあ。
そもそも「流れ」とは何か、という話でもある。
日本の原口選手、乾選手のゴールは、いずれも、ワールドカップで日本人選手がこんなすごいゴールを決められるのか!と驚くほどのすばらしさだったし、1点返されたヘディングは、狙っていたのが偶然あそこに飛んだのかよくわからないが、ここしかない、という軌道を描いていた。
スーパープレーと不運。
あのカウンターよりも、もっと決定的なチャンスで、キーパーと1対1なのにシュートが枠を外すシーンなんて、飽きるほどみている。
あの逆転負けは、やっぱり残念だし、僕が生きているうちに男子日本代表のベスト8を観ることはないのかもしれない、とも思うのだけれども、この番組を観たおかげで、あの試合の勝敗はさておき、サッカーってすごいな、こんなに奥が深いのだな、とあらためて感動した。負けた相手が、このベルギー代表で良かったのかもな、とも。まあ、やっぱり「良かった」とまでは思えないけれども。
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