僕は子供の頃に広島で暮らしていたこともあり、その影響が大きいのかもしれないけれど、原爆は一般市民に対して大量破壊兵器の効果を実験した戦争犯罪だと考えています。
このBTSとかいう人たちが、「英語がわからなくて、カッコいいと思って着ていました。すみません」と言うのであれば、声高に怒りを表明しようとは思わない。
また、アメリカの一般市民がアメリカ国内でこんなTシャツを着ていて、原爆礼賛をしているところに乗り込んでいって闘うほどの覇気もない。
でも、いくら人気があるからって、こういう人たちがエンターテインメントとして日本のテレビに出演して歌うというのは大変不快なので、今回『ミュージックステーション』に出演しないことになったのは適切な判断でしょう。
この話に関しては、「そういうことなら、アメリカや韓国でがんばってくださいね」で済む話だと思っていたのですが、Twitterをみていたら、なんだか嫌気がさしてきて。
このタイトルはヘン。BTSのほうが出演を取りやめたんじゃなくって、テレビ朝日がネトウヨのなんくせに振り回された結果。
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2018年11月8日
BTS、Mステ出演見送り 原爆描いたTシャツ着て波紋:朝日新聞デジタル https://t.co/zpoXAnfU0j
ああ、僕は「ネトウヨ」だったのか……
団塊ジュニア世代で、広島で「平和教育」を受けてきた僕は、自分では、「真ん中やや左寄り」くらいだと認識していたのです。
でも、ネットをみていると、どうもこういう「党派性」に縛られている人々というのは、「憲法改正反対」「安倍首相大嫌い」「日本は常に加害者だ」「韓国の主張はなんでも正しい」「自分たちに反対するのは、全部ネトウヨ」というのがセットになっているみたいなんですよ。これらの主張に全部賛成していないと「仲間」ではない。
いわゆる「ネトウヨ」の側は、これと正反対じゃないと「仲間」と認めない。
僕は憲法を変えるのには反対ですし、安倍首相もそろそろ潮時だと思っています。
でも、BTSに関しては、原爆が人々にもたらしたものについて長年学んできた人間として、「謝罪するならともかく、開き直っているのなら、日本に来てほしくないし、見たくもない」というのが率直な気持ちです。
もちろん、太平洋戦争で日本軍がやったことには大きな問題がある。それでも、いまの韓国の主張が全部正しいとは思わない。
さて、僕は「ネトウヨ」なのだろうか。
というか、「ネトウヨ」とか「サヨク」という便利な言葉がつくられたせいで、なんかこう、お互いの「レッテル貼り」「囲い込み」ばかりが目立ってきて、どちらでもない人たちは、もう、うんざりしているのではなかろうか。
「憲法を変えるな」と主張していた若者たちが、典型的な「サヨク」に取り込まれて、上記のような「セット主張」をする活動家になるか、「党派縛り」に辟易して政治から離れてしまうしかないのをみているとなおさら。
憲法を変えてほしくはないけれど、安倍さんのおかげでコロコロ首相が変わらなくなったことは評価する、という人や「戦争という状況下で日本は国として酷いことをやったし、酷いことをされもした」と考えている人のほうが、実際には多数派ではないかと思うのだが。
ネットって、極論の人たちの声ばかりが大きくなって、なんとなくみんな極論に引きずられやすい場ではあるのだよなあ。
こういうファンの意見というのも、可視化されると唖然とします。
「一生懸命日本のファンのために日本語で練習して歌っているのに!」って、それは善意というより、外資系に勤めている人が英語の勉強をするようなものなのだけど。
ちょっと古いですが、こんな本があります。
fujipon.hatenadiary.com
韓国タレントや韓国のテレビドラマが世界に進出していく背景のひとつに、「韓国の国内市場の小ささ」を著者は挙げています。
POP音楽産業の市場規模を比較すると、日本の3400億円に対して韓国はわずか120億円。30分の1に過ぎない。韓国の人口は4800万人と、日本の人口・1億3000万人の3分の1なので、つまり人口に対する市場規模は10分の1となる。
「IT先進国」である韓国では、音楽は安価でのダウンロード販売が主流となっており、CDはどんどん売れなくなってきています。
そのうえ、日本のように大きな単独ライブが行われるようなホールもなく、また、そういうステージをお金を払って観るという文化もないそうです。
これが書かれているのは2011年で、その後の7年で、日本もさらにCDが売れなくなり、厳しい市場になってきているのですが、これまで築いてきた市場の大きさのおかげで、まだ、日本のアーティストは日本国内で売れればやっていけるのです。
それに対して、韓国アーティストは、国内での稼ぎには限界がありますから、「海外に打って出て行くしかない」。
「こんなにも日本のアミのために頑張って日本語も覚えてくれて曲も出してくれて努力して日本日本って、、、してくれてるのにこれかよ」
「メンバーは血が滲むような思いで練習してきた」
でもそれ、「商売」だからだよ。
「一生懸命日本のファンのために日本語で練習して歌っているのに!」って、それは善意というより、外資系企業に勤めている人が英語の勉強をするようなものです。
別に日本のファンを嫌っているわけじゃないだろうけど、彼らが日本語で曲を出しているのは、「日本が彼らにとっての重要な市場だから」です。
個人的な見解としては、彼らは「極端な反日」ではなくて、韓国内での芸能人・有名人の作法として、「自国で炎上しないためには、反日的にふるまうのが安全」であるという、ごくあたりまえの韓国の有名人のスタンスをとっているだけなんですよね。
この手の「韓国内では反日的な言動をしているタレントやアーティスト」の話はごまんとあるというか「それが普通」なのです。
自分のこととして考えても、身の危険をおかしたり、自国の人たちに嫌われてまで、他国を擁護するリスクなんて負わないよね。
そういうことをするのは、アメリカ人くらいのもので、そこはアメリカの凄さでもあると思う。
日本で暮らしている人間としては「中立的な立場をとったり、黙っておく」ようにすれば良いのでは、と考えてしまうけれど、中立であることが安全な国や地域だけではないのも事実です。
ちなみに、BTSのメンバーがこのTシャツを着ていたのは、2017年3月のワールドツアーの際、アメリカとブラジルで、とのことでした。
とくに本人たちから、このTシャツについての直接の言及はされていないようです。
こんなの着て日本にやってきたら、挑発だとみなされても当たり前だと思うけれど、本人たちにとっては、日本以外の、それも地球の反対側の国で着たって(ましてや、原爆を落とした側のアメリカですから)、問題にはならないだろう、という考えだったのかもしれません。
ところが、インターネット社会では、世界の反対側の出来事でも、ちゃんと伝わってしまうのです。
「特定の場所でうまくやるための言動」が、ネットで拡散され、それ以外の地域での倫理観で裁かれてしまう時代なんですよね、今は。
たかがTシャツ、なのか、こういう形での意見表明だからこそ、それも、人類最大級のジェノサイドに関する話だからこそ許せないのか。
僕は「たかがTシャツ」とは思えないし、彼らが『ミュージックステーション』に出ない(出られない)ことに関しても至極妥当だと考えています。
リンチにしろ、とかそういう話ではないけれど、こういう人たちをゴールデンタイムの娯楽番組に出されても、どんな顔をして観ればいいのかわからないよ。
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