今回は、徹頭徹尾、与太話です。まあ、いつものことだけど。
ちょっとした仕事の会合があって、東京にやってきたのだけれど、到着日の夜に、予定が無かったのです。
まあ、コンビニで酎ハイでも買って飲んで寝るか……とも思ったのだけれども、やっぱり、ここまで来て何もしないのももったいない。
いつもは予定があると、夕方から検査ひとつ、というだけでもなんとなくずっと気になっているにもかかわらず、遊びに行くと、スケジュールの空白がたまらなく気になって、何かやろうとしてかえって大事な予定に遅刻する、というのは、僕の人生あるあるなのです。
何もしないか、やるなら分刻みのスケジュール、みたいなのはどう考えてもロクなものではないのだけれども。
ひとりで飲むというのは、好きでもないし、あんまり楽しくもないんだよね。とはいえ、知り合いと予定を合わせて飲むというのも、なんとなく気が重いし時間もない。そういうのが、年々重くなってきています。
というわけで、ネットでいろいろ調べていたら、そういえば、昔のセガの体感ゲームが現役で稼働しているゲームセンターが東京近辺にあったな、と思い出しました。
そこで、そのゲームセンターに行ってみることにしたのです。
僕の地元であれば、車に乗っていくのだが、ここは東京、駅まで歩き、電車に乗って、また駅から歩き。
そしてついに、やってきました電線軍団!(お約束)
何年か前に、「まだ動くスペースハリアーが、ハウステンボスに設置された」という話があって、僕もぜひ行ってみたいと思いつつも行けなかったのですが、調べてみると、全国にはまだいくつかセガの体感ゲーム機が設置されている店があるんですね。
上野動物園で、みんながパンダ、パンダ!と持て囃している一方で、和歌山のアドベンチャーワールドには見飽きるほど(は大げさかもしれないけど)パンダがたくさんいる、という事実を目の当たりにしたような気分になりました。
パンダの赤ちゃんを見たいんだったら、こっちのほうがじっくり見ることができそうなものですが……東京には何でもある。その一方で、東京にあるということが価値になっているものって、案外たくさん存在するのかもしれません。
ゲーセン自体もだいぶ数が減ってきているなかで、こうしてレトロゲームが設置され続けているのは嬉しいかぎり。
「川崎」はヤバい地域だという本を先日読んだので、ちょっと不安になりつつ行ったのですが、この『ウェアハウス川崎』のコンセプトがまたちょっと怪しげな感じで、最初はどこから入っていいのかわからず困惑しました。
で、レトロゲームだらけということは、きっと、マニアな人たちが行列をつくっていて、近づくのも難しいのかな、並ばないとプレーできないのかな……と思っていたのですが……
でも、本当に、この御時世に、『スペースハリアー』とか『アウトラン』があるのかね本当に。
あ、あった……
しかも、『アウトラン』は動く筐体だし、『ダライアス』は、あのボディソニックがズシズシくる筐体です。スペースハリアーは残念ながら動かなかったのですが。
当時、『アウトラン』に対しては「こんなの左右に傾くだけじゃん」って思っていたのだけれど、その後、いろんな家庭用ハードに移植されたアウトランをやるたびに、「デキは悪くないけれど、何か違う」と感じていました。
今回、二十数年ぶりくらいに動く『アウトラン』で遊んでみて、ようやくその理由がわかりました。あの「左右に傾く」っていうだけでも、けっこうプレイヤーにとっては大きなインパクトだったのだな、って。
いやしかし、久々に遊んでみたら、面白い、というか、楽しいよ『アウトラン』。
マジカルサウンドシャワーをBGMに走りながら、いろんなことを思いだしていました。
中学校からずっとゲーム友達だったM君と僕はこの『アウトラン』が大好きで、清原和博選手が赤いテスタロッサを買ったという話をきいて、「いつかは我々も……」と堅く誓ったものです。
そうこうしているうちに、M君が僕にある誘いをもちかけてきました。
「ねえ、『アウトラン』の筐体が、20万円くらいで買えるらしいんだよ!ふたりでアルバイトして買おうよ。ふだんは君の家に置いて良いからさ!」
いや、そのときの僕の率直な気持ちは「たしかに欲しいけど……デカいぞあれ、そしてたぶん飽きるぞ……」だったのです。でも、友達に良い顔をしたかったので、「いいよ!』と二つ返事で了解したのです。
結局、われわれは『アウトラン』を買うことはできなかったのですが、悲しそうなM君には申し訳ないものの、僕はかなりホッとしていました。
というか、いきなり息子が体感ゲーム機を家に搬入してきたら、そりゃ悶絶するよね。僕の息子が『太鼓の達人』のアーケード版とか持ち帰ってきたら気絶する。
まあでも本当に、30年経っても、ギアガチャを左手は覚えているし(古くて貴重な筐体だったので、やりませんでしたけど。本当だよ!)、ステージ1とか、頭は忘れていても、手がコースを覚えているのです。目をつぶっても『よろしくメカドック』のナベさんみたいに運転できそうな気がしました。
『スペースハリアー』も、「オレもまだまだ捨てたもんじゃないな」と思えるほど順調にクリアしていったのだけれど、途中でとにかく手が疲れた……技術はまだ衰えていなくても、スタミナの衰えは隠せませんでした……思わず口ずさんでしまうよねえ、『スペースハリアー』のBGMって。
『ダライアス』はお金を入れたときの「デン、デーデン!」というクレジット音から、ステージ1のBGM『CAPTAIN NEO』という流れだけでもう激アツです。
あれ、でも、案外敵の弾幕薄いな、グラフィックも記憶よりしょぼいような……
思い出補正って、けっこうあったんだな。
でも、ボディソニックは最高だなやっぱり!
プレイしてみると、敵の弾幕は薄いのですが、こちらの攻撃力もたいしたことないし、敵の動きがけっこういやらしい感じで、すごく難しかった。
ようやくステージ1をクリアしたと思ったら、お約束の分岐で分かれ目に激突してゲームオーバー……人はなぜ、同じ過ちを繰り返すのか、30年も経っているというのに……
本当に、楽しかった。
それと同時に、テレビゲームというものの居場所についても、考えさせられました。
僕はここに来るまで、オールドゲームファンで、このコーナーがものすごく賑わっているだろうな、と想像していたんですよ。
でも、実際はほとんどこれらの歴史的な名機(そして、今遊んでも面白い!)の周囲には人がほとんどおらず、みんな上の階でメダルゲームや通信ゲームに興じていたのです。
現役のゲームセンターの経営としてはそれで良いのでしょうし、おかげで僕もじっくり昔のゲームと昔の自分に向き合えたわけですが。
こうして旅先の夜をゲームセンターで過ごしてあらためて感じるのは、テレビゲームは、お金がかからない趣味になった、ということです。
35年前、僕にとってのテレビゲームというのは、アーケードでは1ゲームに100円もかかるし、ゲームソフト1本で5000円以上もする、最もお金がかかる娯楽」だったのです。
ところが、40代半ばの僕にとっては、ゲームというのは、パチンコをやったり、飲みに行ったりするのに比べて、読書やDVD観賞に並ぶ「安上がりの趣味」なんですよね。
最近のゲームって、クリアするのに時間がかかるし、おまけ要素もたくさんあるし。
飲み会でお金を払うたびに、「これでゲーム1本買えるな……」と何度思ってきたことか。
ただ、僕からすると「もうめんどくさいからそんなにサブクエスト要らないよ……」と思うことのほうが多いのです。そんな時間があったら、他のゲームをやりたい。人生もうそんなに長くもないだろうし。それならそれで、ゲーム以外にやるべきこともあるし。
今のゲームセンターって、お金をあまりかけずに時間をつぶしたい高齢者が朝早くから遊んでいることがけっこう多いんですよ。もはや、1玉1円のパチンコですら、「お金がなくて打てない」人が少なからずいるのです(ちなみに、以前は1玉4円のレートがほとんどでしたが、最近はどんどん1玉1円の低貸しの店や台が増えています)。
最新のゲームでなければ、かなり安く買えるものも多いし、テレビゲームは「お金のかからない趣味」になっているんですよね。
自分で思っていた以上に、昔大好きだったゲームに再会するのは、楽しい時間でした。
中学生の頃の僕が見ていたら、たぶん、「その年になっても、本物のテスタロッサじゃなくて、『アウトラン』かよ!」とがっかりするでしょうけど。
いいんだよ、もう。
所詮、人生なんて、アウトラン。
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