先日、この映画を観るために、車で1時間くらいかけて映画館に出かけたのです。
リドリー・スコット監督の作品だし、予告編もけっこう流れていたので、僕が普段行くシネコンでも当然上映されるだろう、と思いきや、車で30分から1時間で行ける近くのシネコン(4か所あります)では、1か所も上映されていなかったんですよね。
『ホース・ソルジャー』よりも、日本人に受けそうなのでは……と思ったのですが、やっぱり、アクション映画を好む人のほうが多いし、ジャン・ポール・ゲティは日本ではそんなに有名ではない、ということなのでしょうか。
「自分の孫の身代金を断固として払おうとしない大富豪の祖父」なんて、面白そうだと僕は思うのだけど。
まあ、映画の内容はさておき、ずっと前に1回あるような気がするそのシネコンでチケットを買って、僕はちょっと驚いたのです。
「えっ、ここって、『自由席』なの?」
あらためて考えてみると、僕が住んでいる地域で、ネットで映画のチケットが買えて、座席指定までできるようになったのは、この5年くらいの話なんですよね。
それまでは、窓口でオペレーターに「どのあたりの席にしましょうか」と尋ねられ、「ここはいかがですか?」というようなやりとりの末に、ようやくチケットを手にすることができたのです。
僕は基本的に「隣に人がいないこと」が最優先で、あろはあまりに前とかいちばん端とかでなければいいや、って感じだったんですよ。後ろで人が待っているし、とにかく早くこの座席指定のためのやりとりを終わらせたい……って。
で、オンラインになって、誰とも喋らずに好きな席を確保できるようになり、大変ありがたいと思っていました。
僕が観に行くような回は、お客さんが少ない時間帯や曜日が多いのですが、それでも気になるのは「隣に誰か座ってこないか」ということなんですよね。
おそらく、ほとんどの人は空いている映画館で、知らない人の隣の席は選ばないと思うのですが、たまにあるんですよね。こんなに空いているのに、なぜ隣?みたいなことが。あるいは、お互いに買うタイミングが近いと、予期せぬ隣人になってしまう可能性もある。
上映がはじまったら、空いている席に移ればいいのかもしれないけれど、微妙に混んでいることもあるし、何より、「そういうふうに、露骨に『あなたの隣は嫌です』という態度を示しても良いものか?」と逡巡してしまいます。
移ったら移ったで、「この席の本当の持ち主がいるかもしれない」なんて、ちょっと不安になります。
まあ、そこまで切実な状況ではなくても、「こんなに空いているのに、なんで大声でおしゃべりを続けているおばちゃんやヤンキーが前の席にいるんだ……」ということもありますよね。
でも、「自由席」だったら、こういう悩みからは解放される。もちろん、「空いていれば」という話ではあるけれど。
僕が物心ついたとき(40年くらい前)の映画館って、基本的には「早いもの順の自由席」でした。
それが、30年くらい前から、人気のある映画に関してだけ「座席指定」が行われるようになり、シネコンの普及とともに「座席指定の映画館が普通」になっていったのです。
「自由席の映画館」というのは久しぶりだったのですが、なんだかちょっと新鮮な感じがしました。
お客さんが少なかったし、困った人もいなかったので、座席指定でも問題はなかったと思うんですけどね。
そこで、ふと考えてしまったのです。
この映画館の規模からして、座席指定だった時期はあったはずで、そこから、あえて自由席にしたのは、なぜなんだろう?って。
オンラインで人を介さずにチケットを買えるようなシステムを導入しているわけですから、座席指定するようにもできるはずですよね。
混みあっていなければ、座席指定の手間や時間は省いたほうが、観客にとっても映画館にとっても良いだろう、ということなのだと思いますが、それを考えると、自由席にしてしまったほうが良さそうなシネコンって、地方には少なからずありそうです。
あらためて考えてみれば、10人も観客がいないのに、わざわざ「座席指定」する必要があるとも思えませんし。
東京では、映画館が満席になり、立ち見をする人もいる、というのは、僕にとって、ちょっとした驚きでもありました。博多でもときどき満席になるみたいですし、僕が普段行くシネコンでも、夏休みの子供向け映画だと、混みあうことも多いらしいのですが。
僕は今回、久々に映画館の「自由席」を体験したのですが、なんだか新鮮だったんですよ。
こういう映画館が出てきているというのは、システムがどんどん進化していくなかで、かえって余計な手間が必要になってしまったものへの反動なのかもしれません。
自由席の映画館(シネコンくらい規模)って、最近、増えてきているのだろうか?
それとも、僕が偶然立ち寄っただけ?
ただ、こんなに空いているシネコンの未来を考えると、自由席、指定席云々の前に、潰れてしまうのではないか……と心配ではありますね。