最近「歴史」に関する本が、けっこう流行っているような気がします。
「歴史」といっても、大河ドラマで扱われるような、特定の人物や時代を深堀するものから、人類が生まれてからの「通史」的なものまで。
とくに、後者の「かなり俯瞰的に人類史をみる」本を見かけます。
いや、『サピエンス全史』がやたらと売れているだけだろ、と言われれば、まさにその通り、なんですけど。
今日は「建国記念の日」ということで、僕が独断と偏見で選んだ「読みやすくて面白い歴史の本」を10冊選んでみました。
「歴史に関する本」というと、あまりにも範囲が広すぎるので、今回は「歴史小説」は除外しています。
(1)サピエンス全史
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この『サピエンス全史』を読んで、人間の歴史を辿っていくと、「身も蓋もない」というか、「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」というのは、あくまでも「現在の、2016年の人間にとっての正しさでしかない」ということを考えさせられます。
本当に「おもしろい」ですよ、この本。
僕はアメリカ大統領選挙の開票速報を観ながら、この本に書かれていた「人間が平等であるというのは、『共同幻想』なのだ」ということを、考えずにはいられませんでした。
もちろん、「だから、差別を容認すべきだ」とは思わないし、きっとそれは、現代に必要な「虚構」なのだと信じてはいるのだけれど。
(2)銃・病原菌・鉄
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この本、現代を生きている僕にとっては「あたりまえにここにある」ことに、あらためて疑問をもち、「なぜそうなったか?」と丁寧に考えようとしているのが非常に面白いのです。
僕なりに内容を短くまとめてしまうと、
人間の能力に人種差はない。より東西に広い(緯度に差がない)陸地という環境が、ユーラシア大陸の住人の「文明化」に有利にはたらいた。
これだけの話、なんですけどね。
でも、この結論に至るまでのディテールが、すごく面白い。
なぜ、馬は家畜としてこんなに重宝されているのに、シマウマは家畜にならなかったのか?
言われてみればそうだよなあ、と思った人には、オススメです。
(3)イスラームから見た「世界史」
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読んでいて、僕は「いままで、自分がイスラム教世界の歴史を知らなかったこと」に驚きましたし、それ以上に、「日本史があるように、イスラム教世界には、彼らの歴史観がある」という当然のことを、全く意識していなかったことに愕然としたのです。
ムハンマドがマッカからマディーナ(僕が教科書で習ったときには、メッカからメディーナでした)に移ったという「ヒジュラ」は、世界史の教科書に大きな歴史の転換点として登場してきます。
なぜ、「引っ越し」がそんなに重要視されて、イスラム暦の起点にまでなっているのか?
なんとなく疑問ではあったのだけれど、世界史の教科書は、それに答えてはくれませんでした。
そんな「疑問」に、イスラム教の立場から、答えてくれる本です。
(4)皇帝フリードリッヒ二世の生涯
塩野七生さんといえば『ローマ人の物語』や、近著『ギリシア人の物語』も素晴らしいのですが、前者はかなりの大著で、後者はまだ完結していないので、今回はこれを(僕はこの本とフリードリッヒ二世という人物にものすごく魅力を感じているのです)。
すべてにおいて合理性を重視し、封建国家から、法治国家への移行を目指したフリードリッヒは、中世においては「生まれる時代を間違えてしまった人」のように見えます。
ところが彼は「自分に合っていない時代のほうを、自分の、そして多くの人が望む方向へ動かしてしまった人」だったのです。
「生まれる時代を間違ってしまった人」は、少なくありません。
でも、その中で「時代のほうを変えようとし、それが一定の成果をもたらした人」というのは、本当に稀有な存在です。
フリードリッヒ2世は、まさに、そういう人でした。
(5)科挙―中国の試験地獄
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「人類史上もっとも難しい試験」といわれる「科挙」の制度を、科挙の最晩年の清の時代の制度に沿って、「各地域の予選」である「県試」から、「府試」「院試」、「各省単位の予選」である「科試」「郷試」「挙人履試」、「首都・北京で行われる本選」である「会試」「殿試」まで、さまざまなエピソードを交えながら、ひたすら辿っていく本です。
著者は、自分の存在をなるべく透明にすることによって、「人類最大の試験」の圧倒的なスケールを、読者に見せてくれています。
(6)大世界史 現代を生きぬく最強の教科書
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池上彰さんは、「歴史」、とくに「世界史」を学ぶことの意義について、こんなふうに仰っています。
「歴史」を知ることが「自分」を知ることだとするならば、その「自分」は、「個人としての自分」だったり、「組織に所属する自分」だったりします。さらには、「日本人としての自分」も存在する。そういう「自分」をよりよく知るには、おそらく日本の歴史だけでは十分ではないでしょう。日本の歴史だけでなく、世界の歴史のなかに位置づけなければ、「日本人としての自分」も、今どこにいるのか分からなくなるからです。
たしかに、「自分」のことを知るためには、周囲の環境や、所属している組織、信仰している宗教などを無視するわけにはいきませんよね。
「日本史」だけでは、日本のことはわからない。
そして、「現代」のことを理解するには、「過去」からの流れを知ることも必要です。
(7)学校では教えない「社会人のための現代史」
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池上さんは、いまの大学生の「歴史の知識の盲点」を実感して、この講義をはじめたのではないか、と僕は思います。
ちょっと上の世代からみれば、直接自分が体験して知っている有名な事件や人物は「知っているのが当然」なのだけれども、だからこそ、それが下の世代にとっての「盲点」になっていることに、なかなか気付かないのだよなあ。
いまの時代の問題と繋がっているところも多い、「現代史」が、エアポケットになりがち、なんですよね。
そして、みんなそれぞれ、その「盲点の時代」がズレているので、上の世代からすると「なんでいまの若い連中は、あんな有名な事件を知らないんだ?」と感じてしまう。
「阪神淡路大震災」や「オウム真理教の一連の事件」も、若い世代にとっては「そういうことがあったのは知っているけれども、年表上の知識として以上の実感はない」し、それがある意味「当然」なのです。
「今から少しだけ前の時代の話」って、現在との繋がりを考えると、重要性は高いはずなのに。
そんな「盲点」を手っ取り早く「補習」してくれる本です。
(8)帳簿の世界史
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読んでいて痛感するのは、結局のところ、「会計のセンスがあって、かつ、信頼できる人間を財務の責任者に据えることができるか」というのが、近代国家にとって非常に大きな問題である、ということなんですよね。
有能であることと、誠実であることを兼ね備え、それを任期中にずっと持続するのは、とても難しい。
さまざまな国王が、国家の財政を健全化する、という目的で会計のできる人物を登用しては、財務に縛られて身動きがとれなくなることや、赤字を延々と報告されることに耐えられなくなって罷免する、というのを繰りかえしています。
また、近代国家の国民も「会計」をそんなに理解しているわけでもなかったのです。
誠実な財務担当者は、現実を知りたくない国王や貴族からは疎んじられる一方で、国民の多くからは、なんか計算好きの、細かいことにこだわるめんどくさい人、というくらいのイメージでみられていました。
会計の重要性はみんな分かっているはずなのに、実行するとなると、一筋縄ではいかない、その繰り返しなのだよなあ。
(9)世界史を変えた薬
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いまの時代からすれば、存在するのが当たり前の「抗生物質」も、それができる前までは、感染症により、多くの人がなす術もなく命を落としていたのです。
この新書を読んでいると、生きていたら歴史を大きく変えたかもしれない人でも、はかなく病で命を落としてしまった、ということが、人類の歴史にはたくさんあったのだろうな、と想像してしまいます。
昔の医療っていうのは、今から考えると「何それ……」と言いたくなるようなものがほとんどです。
でも、現在行われている医療も、きっと未来の人々からすると「何それ……」って言われるのだろうな……
(10)大学入試問題で読み解く 「超」世界史・日本史
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大人になってから、山川出版の『世界史』などを読み直し、学び直すという人が増えているそうです。
僕も最近、『世界史』の教科書を買いました。
あの時代、忌み嫌っていた「教科書的な知識」というのは、たしかに「常識として知っておいたほうがいい、最低限の知識」なのです。
ここで紹介されている問題について考え、答えをみてみると、人類が抱えている問題というのは、少なくとも有史以来、そんなに変わっていないのではないか、という気がしてきます。
以上、順番は「順位」ではなく、単に思いついた順に並べたものであり、これが「ベストチョイス」というつもりもありません。
会計や薬という視点から「歴史」を見た本も加えてみました。
歴史って、本当に面白い。
けっこう長い間本を読んできたのですが、僕が本から学んだことというのは、「世の中にはいろんな人がいる」ということと、「いま自分に起こっていることは、自分にだけ起こっているわけではない(あるいは、いま他人に起こっていることが、絶対自分には起こらないとは限らない)」ということの2つです。ほんとうに、それしかありません。
でも、それって、すごく大事なことなんですよね。
歴史の本には、その2つが詰まっているのです。
- 作者: 「世界の歴史」編集委員会
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2009/09/01
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- 作者: 五味文彦,鳥海靖
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- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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