いつか電池がきれるまで

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「ハマの番長」三浦大輔投手が教えてくれた「ベテランの役割」


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ハマの番長三浦大輔投手が引退を発表。
僕は横浜ファンじゃないんだけれど、FA権をとったとき、メディアでは「阪神入り」が報じられていた三浦投手が、条件面で劣る横浜に残留したのをみて、(カープ戦以外では)ずっと応援していました。


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引退会見も、本当にカッコ良かった。
もう42歳とはいえ、球団にとっては大功労者だし、先日の阪神戦もそこそこ抑えてはいたので、本人が強く現役続行を希望すれば、その願いはあと1年くらいは叶えられたのではないでしょうか。
でも、三浦さんは、そうしなかった。


いまの横浜の投手陣を考えると、たしかに来年、三浦投手が居場所を確保するのは難しいでしょう。
ようやくそれだけの戦力がそろってきましたし、初のクライマックスシリーズ出場を花道に引退というのが、三浦投手の美学だったのだろうなあ。


三浦投手といえば「ハマの番長」の通り名があり、リーゼントでバッチリきめていますので、強面のイメージがあるのですが、若手時代のこんなエピソードを読んで、僕は親しみを感じていたのです。

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 著者の中野渡さんと親友の木塚敦志さんは、ずっとふたりでつるんでいたそうです。

 神宮や東京ドームで試合のある時は、酒を飲まない番長(三浦大輔投手)の車に同乗させてもらい、帰り道に2人でしこたま飲んで送ってもらった。あの番長ってのはよ、俺らみたいなぺーぺーの足に使われてるのに文句のひとつも言わねぇ。あんなの、番長じゃねぇよ。ただのいい人だ。

 ベイスターズの「レジェンド」となった「番長」はお酒を飲まず、若手の頃とはいえ、中野渡さんたちの「ドライバー」として使われていたんですね。
 強面にみえるけど、「いい人」なんですね。


 そして、ファンに対する三浦投手の姿勢について、DeNA前オーナーの春田真さんは、こう仰っています。
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 たとえばキャンプの期間中、練習後にサインをするのが面倒だと思うこともあるだろう。だが、そんなときにでもベテランの三浦選手は率先してファンにサインをしている。
 シーズン中のファンサービスも重要だ。横浜スタジアムでの試合では、試合後にサインボールをスタンドに投げ入れている。試合後のヒーローインタビューの後にこれを行っているのだ。
 選手のほとんどが、ベンチ裏に引き上げて早くシャワーを浴びたいと考えているはずだ。だが、それを我慢してサインボールを投げてくれる。
 面倒臭いと思えば、横着をして内野席スタンドにだけ投げて終わりにすることもできる。しかし、それで済ませるようにはなっていない。これは、埼玉西武ライオンズに移籍する前の森本稀哲選手の影響が大きい。彼はいつでも一目散に外野に走っていき、ボールを投げ入れていた。


 こういう話を読むと「ベテランの影響力」というのを再認識させられます。
 三浦大輔選手のこの姿をみれば、若手はサインをせずにはいられないはず。
 森本選手も、横浜では何もできなかったなあ、なんて思っていたのですが、こういう「置き土産」をDeNAに残していったのですね。


 また、古田敦也さんは、三浦投手の「ファウルを打たせる技術」をこのように解説しています。

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 カットボールというホールは本場アメリカではカットファスとボール、通称カッターなどとも呼びますが、球速は通常のファストボールより少し落ちます。彼(三浦大輔投手)の場合、140キロ台のストレートに対し、カットボールは130キロ台です。左バッターに対してはスライダーよりは曲がりは少なく、ボール1個か、2個分中に入ってくるイメージのボールです。このボールを早いカウントから左バッターの強打者のインコースに投げ込んでいます。
 超積極的なバッターならば、インコースの甘いところに来るボールなので思わず手が出ますが、これが微妙にインサイドに食い込んでくると、バッターはアジャストしてバットに当てにいかなければならない。その結果、バットの芯に当たると確実にファウルになります。
 よく三浦と対戦する左バッターが、一塁線、あるいはライトスタンドに強烈な当たりのファウルボールを打つのを目にします。
 これは、ボール1個分、インサイドに入ってくるので、芯に当てるには投手寄りでさばかなければならなくなり、バッターがボールを思い切り引っ張ってしまうから起きるのです。三浦が得意とするこのボールは、なんとかバッターがフェアゾーンに落とそうとしても、バットの芯には当たらず、俗にいう「詰まった打球」になって打ち取られてしまいます。
 このことを頭に入れれば三浦が左バッターを相手に強烈なファウルを打たれている場面も観方が変わります。「危ない」と思うか、「さすが」と思うか。そこにワンランク上の野球の観方をしているかどうかが出ます。


 ものすごく速いボールを投げるわけでもなく、魔球のような変化球を持っているわけでもない。
 それでも、低迷期が長かったチームで170勝以上をあげたのは、何よりも、たしかな技術があったからなのです。


 カープファンにとっての黒田博樹投手の姿が、DeNAにとっての三浦大輔投手だったのかな、と僕は想像してしまうのです。
 しかも、黒田さんはしばらく海外留学していたけれど、三浦さんは、ずっと横浜にいて、低迷期のチームを支え続けていました。
 黒田さんや三浦さんをみていると、「ベテランの力」というのはチームにとって本当に大きいのだな、とあらためて思います。


 ベテランができること、やるべきことって、若手を「レールを外れるなんて、バカじゃないか」と、したり顔で諭すことじゃなくて、「こんな選手に、大人になりたい」っていうロールモデルとしての「背中」を見せることではないのかな。
 彼らが練習している姿、ファンに接する姿勢、それがチームの「伝統」になっていく。

 黒田さんや三浦さんは、同世代の僕に、そのことをあらためて教えてくれました。


 三浦大輔投手、お疲れさまでした。
 あなたは、いつも偉大で、イカした強敵(とも)でした。


ameblo.jp
……と、綺麗に締めようとしつつ三浦さんのブログを覗いてみたら、
泣きながら笑っちゃったじゃないですか!
 

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