ガイコツ書店員 本田さん (1) (ジーンピクシブシリーズ)
- 作者: 本田
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2016/03/26
- メディア: コミック
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ガイコツ書店員 本田さん 1<ガイコツ書店員 本田さん> (MFC ジーンピクシブシリーズ)
- 作者: 本田
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2016/03/26
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昔から、「書店員さん本」が好きでした。
そもそも「専門家が、自分の仕事について語る本」みたいなのが好きなので、本好きとしては、本をつくる人たちとか、本を売る人たちの仕事にも、興味があるのです。
でも、実際に書店で「書店員本」を手に取ってレジに持っていくのって、けっこう勇気がいりますよね。
AV女優さんに、出演しているDVDを持ってサインに行くような、とても言いますか(やったことないけど)。
レジで、「ふーん、このオッサン、書店員フェチなのか、気持ちわるーい!」とか思われていたらイヤだなあ、とか考えてしまうわけです。
書店員さんって、エロ本とかには耐性があると思うのだけれど、こういう「自分の仕事関連の本を買っていく人」に対しては、どんな感情を抱いているのだろうか?
こういうときに、Kindleって便利ですよね。
というか、リアル書店員さんとしては、「いやそれこそリアル書店で買ってくれよ」って話なのかもしれないけれど。
それで、この『ガイコツ書店員 本田さん』をKindleで読んでみたのですが、コミック担当という、ガイコツのお面をかぶった「本田さん」が、いろんなお客さん(外国人が多い)や出版社の担当者との売り場での交流を描いている漫画なんですよ。
僕自身は、売り場で外国人のお客さんをあまり見かけたことがなかったので、意識したこともないのですが、日本の「マンガ」が世界で読まれるようになったことによって、外国人のマンガ読者が日本の書店でマンガを買い込む、という状況が、こんなに頻繁に見られているのだなあ、と驚きました。
一般の書店では取り扱われていない同人誌を探している人がいたり、濃厚なボーズラブを指名買いする人がいたり、「棚買い」していく人がいたり、『キングダム』が大量入荷されたり、アメコミって重いんだな、と感心してみたり、なかなか興味深い作品でした。
(2巻以降も続刊予定)
これまでの「書店、書店員さんの本」って、「本が売れない時代の問題意識」「真摯な書棚づくり」について語られているものがほとんどで、それはまさに「書店員さんたちが直面している問題」なのでしょうけど、「重いテーマ」であるのも事実です。
それに対して、この『本田さん』は、書店員という仕事のキツさというよりは、「こんな面白いこともあるんですよ(大変だけど)」という明るめのトーンで書かれていて、こういうのも良いよね、という気分になりました。
ひとりのクレーマーに凹んでしまったり、優しいお客さんに、頑張ろうと思い直してみたりの繰り返しというのは、どのサービス業でも同じなんですよね、きっと。
本当は、クレーマーがいなくなってくれると、助かるんだけど。
ひとり、そういう人がいると、心のアラームの閾値が下がってしまうから。
最近はもう、アラーム鳴りっぱなしです。
ついでに、僕がおすすめする「書店員本」を5冊紹介しておきますね。
現役書店員6名へのロングインタビュー。
「書店員の現状と今後」については、東京堂書店の小山さんが、こう仰っていたのが印象的でした。
書店員のいまの状況について思うこと、ですか? 年下の人間に対しては、とにかく、ほんとうに好きじゃなければやめたほうがいいよといわざるをえない世界になっていますよね。なにかしらの思い入れがなければ、体を壊していくだけ。しかもこれから、労働環境はきびしくなっていくだろうなとは見えているわけですからね。
実際は、いま、この時代に「書店員として収入を得て、暮らしていけること」そのものが「普通じゃない」のかもしれません。
書店の、書店員さんたちの、そして書籍の現在について興味がある人は、ぜひ一度読んでみてください。
こういう時代だからこそ、「あえて紙の本を読むこと」に、アドバンテージがあるのではないか、とも僕は思うのです。
この本、「伝説の閉店セール」で、本につけられていたPOPの数々を、セール時の写真で紹介しています。
内容は、8~9割POPの写真。
個人的には、ヘンリー・ダーガーの資料部屋をみて、「この人はものもちが良いね」「空の色がキレイやが、あと子供さんが可愛いが」と祖母が言っていたというPOPがすごく気に入りました。
そうだよね、本には、いろんな読みかたがあるんだ。
むしろ「ひとりだから」「小さな書店だから」失敗をおそれずに、やってみれば良いじゃないか、と。
ああ、なるほど、「会社を大きくする」とか「大儲けする」とかいうのではなくて、「自分ひとり、なんとか食べていければいいのだから。最悪、失敗しても自分で責任をとればいい」というスタンスでの「独立起業」もあるのだなあ。
「活字嫌い」のはずの学生だって、SNSで文字のやりとりを続けています。
「紙の本の時代」は揺らいできているけれども、「文字を使っての情報のやりとり=本」とするならば、本の世界は、どんどん広がっているのです。
まあ、だからこそ「紙の本が売れなくなった」とも言えるのでしょうけど。
著者たちは、この状況の変化を逆手にとって、「書き込みがある本は、かえって『世界にそれしかない』一点ものになる」と発想したり、「昼間からビールを飲みつつ本を読める書店」をつくったり、「作中の印象的な一文が付けられているだけで、本のタイトルや著者名がわからない文庫本のフェア」を仕掛けたりしているのです。
以上、「本を売っている人たち」が書いた本で、思いついたものを紹介してみました。
僕も「本屋さん」に憧れていたのですが、もう重いものを抱えるような仕事はできないだろうな……
とりあえず僕は書店が大好きで、書店員さんのことも応援していますので(でも、Kindleも好きです。おかげで本が読めるシチュエーションがかなり増えたし)、気持ち悪い、とか言わないでいただけると嬉しい(たぶん自意識過剰すぎ、なんだろうな……)。