いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『東京ラブストーリー ~After 25 years~』の罪

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こういう「懐かしのマンガの○○年後」という「続編」って、以前から存在はしたのですが、近年とくに目立ってきたような気がします。
それにしても『東京ラブストーリー』か……
僕にとっては、マンガよりもテレビドラマのほうが印象的で、大学に入ってひとりぐらしをはじめて、巷で話題の「トレンディドラマ」というものを観てみるか、とチャンネルを合わせてみたら、あの鈴木保奈美さんが、「カンチ、セックスしよ!」だもんなあ……
ひとりで観ていたのですが、思わずテレビに向かって同意を求めてしまいました。
「いま、鈴木保奈美、セ、セックスって、言った、よね?」


まあ、そんなこんなで僕にとっても忘れられない『東京ラブストーリー』の続編が、読み切りで『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載されているのです。
おっ、このグラビアの女性、まさか、ニンニンジャー?
というわけで、久々に『ビッグコミックスピリッツ』を購入してしまいました。
オッサン、見事に「懐かしのマンガの続編商法」に乗せられてます。
けっして『ニンニンジャー』の水着グラビア目当てじゃないよ!


閑話休題
個人的には、この『東京ラブストーリー ~After 25 years~』には、「まあ、良くも悪くも、人生なんて一筋縄じゃいかないものだよな」という感慨が込められていて、なかなか良かったと思うのです。
ただ、こういう「続編」が出てしまうことの功罪についても、考えずにはいられなかったのです。
「続き」が気になっていた、という読者への、作者からの「答え」ではあるのでしょう。
でも、一度これを読んでしまうと、昔の『東京ラブストーリー』を読み返すとき(あるいは、テレビドラマを見返すとき)、「でも、この人はどうせ、25年後にはあんなになっちゃうんだよな」と思わずにはいられなくなると思うんですよ。
北条司さんが『シティハンター』の後で、『エンジェル・ハート』を描きはじめたとき、「続編のために香を殺すな!」(ネタバレごめん)という抗議がたくさん来て、「パラレルワールド」という設定にした、という話があります。
スター・ウォーズ』のエピソード7も、これまでのファンにとっては「待望の続編」であるのと同時に、「観なきゃよかった……」と感じた人も多かったはず(僕も観ていて心が揺さぶられたけど、すごくイヤでもあった)。
続編って、前作のキャラクターの性格が変わってしまったり、死んでしまったり、やたらと弱くなって新キャラの踏み台にされたりすることが多い。
前作終了後、ファンが「その後」を想像して楽しんでいたのに、続編が、その「答え」を固定してしまうというデメリットがあるんですよね。
作者側は、「もともと自分が描いたマンガで、自分が続編を描きたくなったのだから、描いても良いんじゃない?」っていうことなのだろうか。
たぶん、作者にとっても、「今さら、昔のヒット作を掘り起こしてきても……」という迷いや、「前作のファンを失望させてしまうのではないか」という迷いもあるのだとは思う。
まあでも、それが大ヒット作であればあるほど、もともとの作者しか、「続き」を描くことは許されないだろうし。
そもそも、『エンジェル・ハート』は、けっこうヒットしたんだよなあ。
蒼天の拳』とかもそうだけれど、大ヒット作というのは設定やキャラクターがよくできていることが多いから、白紙の状態からつくるよりも、ヒット率は高そうです。
前作ファンも、なんのかんの言いつつ、気にはなるだろうし。


東京ラブストーリー ~After 25 years~』は、単体でみれば、なかなか良い作品だし、前作のファンにもそれなりの配慮はされていると思うんですよ。
少なくとも、前作を「ぶちこわし」にするような「続編」ではない。
でも、『東京ラブストーリー』って、結局、あの時代に、あの宙ぶらりんで取り残されたような結末で終わったからこそ、かえって記憶に残った作品だったような気がするのです。
こうして、「その後に関する公式見解」が出てしまうことには、やっぱり「残念な感じ」を禁じ得ない。
「現実を思い知らされる」のは、「現実」だけで、もうたくさんなんですよ、僕の場合は。
それは、カンチやリカの役割じゃない……んだけどなあ。


こういう作品が出てくる背景には「週刊漫画誌の読者層の高齢化」みたいなものが確実にあるのでしょう。
2006年に、島田雅彦さんが「『週刊プレイボーイ』の読者層は、40歳近い」という話をされていました。
今は、さらに上がっているはずです。
雑誌が売れなくなった時代に、紙の雑誌を買う人は、どんどん高齢化しています。
となると、読者層に合ったマンガが求められているのは確かで、こういう『過去の人気マンガの続編』というのは、売る側にとっては、魅力的なコンテンツなのでしょう。
実際、今回も話題になっているし。
登場人物がカンチとリカじゃなかったら、『黄昏流星群』の作品のひとつでも、違和感なさそうなストーリーなのだけど。


名作マンガは、誰のものなのか?
もちろん、作者のもの、なのだとは思う。
でも、それと同じくらい、読者のもの、でもあるんじゃないかな。
「作者だからって、勝手に続編を描かないでくれ……」とか、言いたくもなるんですよ、せっかく、「完結」している作品なのに。
(テレビドラマからでも)25年も経ったから、「時効」なのだろうか。


長生きするっていうのは、見たくもないものを見せられることでもあるな、とか、つい考えてしまいます。
いや、「読まなきゃいい」「見なきゃいい」のだけどさ、「続編というものが、この世界に存在する」っていうだけで、やっぱり平常心ではいられないんだよ、ファンってやつは……


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