今週のお題「読書の夏」
世間は夏休みの人も多いだろうし、もうすぐお盆の土曜日でもあるので、今日はちょっとした与太話を。
こういうエントリを見つけたのだけれども、僕自身の経験からすると、「読書が好きである」ということと「コミュニケーションが上手」というのは、必ずしも一致しないような気がする。
「読書が好き」というのは程度問題で、本で床が抜けるかもしれない、と怖れるレベルの「書痴」の人たちは、総じて対話型のコミュニケーション、とくに世間話的なものは苦手なのではなかろうか。
本で知識を得る、という習慣を持っていると、雑談なんていうのは、「非効率的な情報収集」の際たるもので、「こんな話をしているくらいなら、本を読んだほうが効率的だ!」とか内心思っていたりするものだ。
ただ、読書好き、と言われるような人のなかには、いわゆる専門職についている人が多いので、「専門的な知識を提供しなければならないが、あまり雑談的なコミュニケーションを求められない」というケースは多いのかもしれない。
僕だって、雑談は大の苦手だけれど、外来での診察はできる。
ときどき、隣から「みのもんた?」という感じの医者のトークが聞こえてきて、自分の口下手がイヤになってしまったりもするのだが、
でも、こういうのって、ある程度のレベルの専門的な技術と礼儀を持っていれば、あとは「相手との相性」っていうのも大きい。
患者さんにだって、雑談好きの人もいれば、あまり余計なことは喋りたくない人もいる。
「自分の仕事に関する本を読む」というような目的もなく、ただひたすらいろんな本を読んでいくというのは、「労多くして功少なし」かもしれない、というのが僕の実感だ。
たしかに、読書は知識を広げ、世界を理解するのに役立つ、と思う。
しかしながら、本ばかり読んでいると、どんどん、実践から乖離して、「以前読んだ本との些細な違いをあげつらう」ような姿勢に陥りがちだ。
読書は、目標・目的があれば、飽和点までは「読めば読むほど良い」のだろうと思う。
だが、世の中の「本ばかり読んでいる人」の生きざまは、「ずっと釣り堀にいて、釣り堀での魚の釣り方を極めようとしている人」のように僕には見えてしまうのだ。
「読書家」のなかには、「書評」や「私の読書のしかた」の本を書いたり、「セミナー」をはじめたりする人がいるじゃないですか。まあ、そういうのは「似非読書家」で、本物の読書家というのは、家で本に埋もれて、死ぬまで読み続けているだけの人なのかもしれませんが。
そういう「自己啓発系読書家」って、「読書は最高です!」「あなたの人生を豊かにします!」って言うけどさ、そう仰っている人の収入源が、アフィリエイトや「読書のススメ本の執筆」や「読書セミナーの講師」なのを見ると、なんだか悲しくなるのです。
お前は素振りの王様か、と。
そんなに本を読んでも、行き着く先が「そんなに面白くもなさそうな人生の縮小再生産を押し売りする人」なのに、他の人に、その生き方を薦めるのかね。
僕は「他のことをやるより愉しいから」本を読んでいることが多いし、息子が本を熱心に読んでいるのを見ると、嬉しいのと同時に、不安にもなるのです。
お前、目の前のオッサン(僕)みたいになるなよ、と。
本ってさ、読んでいるとなんだかちょっと自慢げな気分にはなるんだけど、この世界に存在している本の総量を考えると、10冊も1万冊も、そんなにたいして変わりないんじゃないか、と思うんですよ。
少なくとも、そのジャンルの専門家として食べていくとかそういう理由でもないかぎり、1000冊と1万冊の間には、それを読むコストに見合った違いは生まれないのではなかろうか。
本って、読めば読むほど「粗捜し」ばかりが上手くなるところがあるし、プラス1冊あたりの「伸びしろ」は少なくなる。
そもそも、インターネットという「脳の外付けハードディスク」がすぐにアクセスできる時代では「知っていること」の価値は、暴落している。
僕自身が、いままで本を読んできて知ったことは、2つしかありません。
ひとつは、世の中には、いろんな人がいる、ということ。
ふたつめは、いま、自分に起こっていることは、これまでにも多くの人が経験してきたことだ、ということ。そして、他人が経験してきたことは、自分にも起こる可能性がある、ということ。
いやほんと「読書」ほど買いかぶられている趣味は、他に無いのではなかろうか。
まあでも、人生において、ムダなことを夢中になってやるほど、愉しいことはあまりない。
読書も、そういうもののうちのひとつ、なのだろうね。
本を読んでも、他者とのコミュニケーション能力はそんなに上がらない。
でも、自分自身とコミュニケーションする能力は、けっこう上がるような気がする。
そして、こんなブログとか書き始めてしまうのだから、まあ、あまり良いことはなさそうだな、やっぱり。
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