いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『アルスラーン戦記』の再アニメ化と「OVAの時代」の記憶

日曜日の昼下がり、スマートフォンTwitterのタイムラインを眺めていて、この番組のことを知りました。

www.arslan.jp


なんと、田中芳樹さんの代表作のひとつ『アルスラーン戦記』が、アニメ化されるのか!
というか『アルスラーン戦記』って、以前にもアニメ化されたことがあるんですよね。
映画、そして、OVAとして、1991年から、1995年にかけて。
で、いきなり「OVA」という略語を使ってしまったのですが、たぶん、「OVAって、何?」と思った若い人もいらっしゃるのではないでしょうか。
あんまり資料とかにはあたらずに、僕の記憶の範囲内で書いてしまうのですが、日本でビデオデッキが普及しはじめたのって、今から35年くらい前だと思うんですよ。
初期は空のビデオテープが1本2000円とかしていて、そこに6時間とか8時間くらい録画できたのです。
うちはけっこう早い時期にソニーのベータのデッキを購入したのですが、のちに、カセットのサイズが大きいけれども長時間録画できるVHSが市場の多数派となっていき、悔しい思いをしたものです。
ソニーがVHSのデッキを出したときには、「裏切りもの!」と口に出してしまいました。
いやほんと、カセットが小さいし、画質が良い(と言われていた)ベータのほうが勝つ、って言われていたのにねえ……


それで、僕が中学生くらいの頃、1980年代の半ばくらいから、「レンタルビデオ」の店がすごい勢いで増えていったのです。
ビデオが普及するまでは、映画は「映画館に行くか、テレビで放映されたときにリアルタイムで観るしかない」時代が長く続いていました。
ビデオデッキによって、「録画できたものは、何度も繰り返し観ることができる」ようになったのですが、それだと、どうしても「好きなものを、好きなときに」観るのは難しい。
幸運にもテレビ放映時に録画できれば良いのですが、それも、いつ放映されるかはテレビ局の意向次第で、けっこうカットされての放映のことが多いのです。
ところが、「レンタルビデオ」によって、「好きなときに、好きな映画を借りてきて、観ることができる」ようになりました。
おかげで、さまざまな作品を比較的自由に観ることができるようになり、趣味とか、みんなが家に集ったときの娯楽として「レンタルビデオでの映画鑑賞」が成り立つようになったのです。
僕と同世代、40代くらいの人であれば、学生時代、友達と一緒に誰かの家でレンタルビデオを観た記憶のひとつやふたつはあるはず。
当時は、テレビも少しずつ大型化しはじめた時期でもありましたし。
「セルビデオ」というのもあったのですが、最初の頃は、1作品1万円以上していて、よっぽど好きな作品でもなければ、手が出ないものでした。


レンタルされたのは、映画だけではなかったのです。
もちろん、アダルトものは確固たる地位を築いていたのですが、それ以外に、「テレビでは放映されないドラマや、テレビや映画にはない、オリジナルのアニメーション作品」も、流行しました。
テレビでは放送枠や予算の関係で放映できないけれど、一定数以上のファンがいて、(レンタル店に買われるものも含めて)それなりの売上が期待できる作品が、かなりの数、アニメ化されていったのです。
それが、OVAオリジナル・ビデオ・アニメーション)なのです。
現在では、DVDやBD(ブルーレイディスク)を売るためのプロモーションのひとつとして深夜にテレビ放映されるアニメーション作品がそれなりの数あります。
「テレビで放映するにはマニアックすぎるのがOVA」だったのが、「テレビを使ってOVAのプロモーションをするようになった」のは、時代の変化、ということなんでしょうね。
値段もこなれてきて、作品をレンタルで借りるのではなく、個人が「買う」ことも、当たり前になりました。


僕の記憶のなかのOVAとしては、この『アルスラーン戦記』の他に、『ロードス島戦記』、そして、田中芳樹先生の代表作『銀河英雄伝説』などが頭に浮かんできます。
銀河英雄伝説』というのは、当初、第1シーズンの26話は、申し込みをした人のところに、毎週、新しい回のOVAのカセットテープが送られてくる、という当時としても斬新な形式でつくられた作品でした。
銀河英雄伝説』フリークの僕としては、なんとか観たかったのですが、あまりに高価だったので、泣く泣く諦め、のちにレンタルで観て、「良い時代になったものだ……」と思ったものです。
銀河英雄伝説』のアニメもリメイクされるらしいのですが、富山敬さんのヤン提督に慣れ親しんだ僕としては、「あの声」じゃないと受け入れがたい気がするなあ。


アルスラーン戦記』のOVA遊佐未森さんや谷村有美さんといった、当時僕が好きだった女性アーティストが主題歌に起用されており、なかでも遊佐さんは、この『アルスラーン戦記』のEDテーマである『靴跡の花』が、(現時点では)キャリアの中で最大のヒット曲なのだそうです。ちなみにオリコン14位。そうか、けっこうインパクトが強い人なんだけど、セールス的には、そのくらいだったのか。


最近では、長年未完だった『タイタニア』が突然アニメ化され、それに伴って、なのか田中芳樹作品としては少数派の「完結作」となりました。
この『アルスラーン』の再アニメ化、『銀河英雄伝説』のリメイクも含めて、今になって、あらためて「田中芳樹さんの再評価」が起こっているようにも感じられます。


僕みたいに、学生時代に『銀英伝』『アルスラーン』『創竜伝』の洗礼を受けた世代が、いまや「作り手」のなかで決定権を握る立場になってきた、というのも大きいのかもしれませんが。


それにしても、この御時世に、日曜日の夕方5時からの放送(TBS系)とは、思い切ったことをしたものだ、というか、なぜこの時間帯なのだろうか。
いわゆる「ゴールデンタイム向け」ではないのはわかるのだけれども。
今は「みんなアニメは録画で観るから、放送時間帯なんて関係ない」のかなあ。
正直、今日の『アルスラーン戦記』第一回は、「原作を知っている人にとっては、「ああ、こんな話だったな」という感じなのですが、原作を知らない人が引き込まれるような内容かと言われると、どうかな、という気はします。
でも、それだけ丁寧に、長い目でつくろうとしている、のかもしれない。
それにしても、アルスラーン、なんか女の子みたいな絵になってるな……こういうのが流行り、なのか?


とりあえず、しばらくは応援もかねて、観続けてみるつもりです。
しかし、原作をここまで忘れてしまっているとは。


王都炎上―アルスラーン戦記〈1〉 (光文社文庫)

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アルスラーン戦記1王都炎上 (らいとすたっふ文庫)

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