先日、二夜連続で三谷幸喜脚本の『オリエント急行殺人事件』が放送されました。
車のなかで、その番組のことについて話していた際、妻が言っていたのです。
「アガサ・クリスティの名前は知っているけれど、『そして誰もいなくなった』も『オリエント急行殺人事件』も読んだことがない」と。
読書傾向というのは人それぞれで、妻は「世界名作全集」的なものを幼少時に一通りは読んだ、とのことだが、ミステリにはあまり興味がなかったそうだ。
僕はそのあたりの「大人が子供に読ませておきたいであろう名作」が、すっぽりと抜け落ちているのだよなあ。
子供の頃は、「子供が読む本など、読みたくない」とずっと思っていたし、この年になると、いまさら、ねえ……という感じなので。
最近、ミステリ好きを公言している6歳の長男が「それって、『名探偵コナン』みたいなやつ?読んでみたい!」と言っているのを、y嫁が「幼稚園児にはまだ早い!」とたしなめていた。
妻は、『そして誰もいなくなった』って、「本当に誰もいなくなるの?」と興味を持っていたので、あれこれ(ネタバレにならないように)話をした。
アガサ・クリスティという人は、ミステリ界の星新一というか、ひとりで「そのジャンルのほとんどのパターンをやってみせてしまった人」なのだよなあ。
世の中には、ミステリにはあんまり興味がない、という人も少なくないのだ。
というか、ミステリマニアのほうが、はるかに少数派なわけで。
そもそも、「人が死ぬ話は、あまり好きじゃない」という人の話も、ときどき耳にする。
もちろん、人が死なないミステリだって存在するのだが(米澤穂信さんの『古典部シリーズ』とかですね)、まあ、大概のミステリは誰かが死んで、関係者が、悲しむより先に犯人探しをはじめるものだし。
で、妻と話していて、僕は思ったわけですよ。
ミステリの中には、「古典」としてミステリの枠外でもよく言及される作品もあるし、「ミステリが好きじゃなくても、このくらいは読んでおいて損はしない作品リスト」というのを作ってみるのも、面白いのではないか、と。
まあ、『名探偵コナン』とか『金田一少年の事件簿』でも良いんですけどね。
というか、これらのマンガって、古典をかなり研究していると思われますし。
マニアの皆様には「何これ」って話でしょうが、あくまでも個人的なチョイスなので、あまり怒らずにスルーしていただけると幸いです。
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「名探偵」といえばホームズ。
今読んでみると、ホームズって、「推理もの」というよりは、「都市伝説の紹介」みたいな感じがするんですよね。
だからこそ、今読んでも面白いのかも。
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アガサ・クリスティの名作。
人がどんどん殺されていって、最後には誰もいなくなってしまう……
もう、「何それ?」って感じですよね。
こんなのよく考えたよなあ、と。
再読してみると、ものすごくシンプルな内容だったことに驚かされました。
いまのディテールとかリアリティが重視されるミステリに比べると人物描写などは素っ気ない感じなのですが、だからこそ、今読んでも面白いというか「物語の骨組みの面白さ」みたいなものを感じる作品です。
古いミステリって、けっこう読みにくいものが多いのですが、これは今でも読みやすい。
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正直なところ、ミステリ史的には『アクロイド』のほうが重要なのかもしれないとは思うのですが、舞台設定の豪華さやトリックのインパクトなどで、話題になることが多い作品です。
まあ、先日放送された、三谷幸喜脚本版を観ていれば、それで十分かもしれません。
けっこう原作に忠実だったんですよね、三谷版。
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ミステリ好きじゃなくても、エラリー・クイーンの名前くらいは聞いたことがあると思うのですが、ものすごくたくさんある著作のなかで、とりあえずこの『Yの悲劇』は押さえておきたい。
これが気に入れば、他の著作に進んでいっても良いでしょうし。
エラリー・クイーンの作品って、けっこう長いし、慣れていないと読みにくいのではないかと思われます。
でも、この『Yの悲劇』は、いつ読んでも、「悲劇」であり、「現代的な事件」だなあ、という気がします。
某有名作家が、「目次を見て絶望した!」と仰っていたんだよなあ。
たしかに、あれはひどい。
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正直、「これをいまの時代に読むのは、『歴史的名作! ハードボイルドの金字塔!』って自分に言い聞かせないとちょっと大変だな」とも感じたんですよね。純粋に「ミステリ」としての構造で判断すると、ストーリーとしては、いまの、二転三転当たり前、というトリックに慣れ切ったミステリ読者にとって、「ふーん、これで終わり?なんかアッサリしたものだったな」というレベルなのではないかと。
それにしても、この『ロング・グッドバイ』言い回しのカッコよさには特筆すべきものがあります。そして、本筋とは関係ないような、ディテールがすごく印象的。
ちなみに、「訳者あとがき」ではじめて知ったのですが、あの有名な
”To say goodbye is to die a little.” 『さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ』
というのは、フィリップ・マーロウがオリジナルではなくて、フランスの詩から、この小説に引用された言葉だったそうです。
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最近は、「同じような内容のものを、粗製濫造ぎみなのでは……」と感じることもあるのですが、もともと多作なほうではありますしね。
この『容疑者Xの献身』は、ミステリとしても小説としても「傑作」だと思います。
映画も良いけど、原作も一度くらいは。
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読み終えると「やられた……」と思わずつぶやいてしまう一冊。
あれこれ書くとネタバレになるので、あえて省略。
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僕にとっての伊坂幸太郎といえば、まずこの作品。
いわゆる「叙述トリック」なのですが、ただ「どんでん返し」があるだけではなくて、自分の「先入観」みたいなものを突きつけられるんですよね。
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これが「ミステリ」なのか?という点では、意見が分かれそうなところではありますが、読みやすくて、ある種の「人生の謎」みたいなものの一端に触れることができる小説、ということで。
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描かれている人間のリアリティ、謎解きの合理性など、すごく完成度の高い一冊。
けっこう長いし、ものすごく読みやすい、というわけではないのですが、現在の日本のミステリの代表作のひとつ、として、読んでおいて損はないと想います。
叙述トリックの「意外などんでん返し」が持て囃されがちななかで、「真っ向勝負」を挑んでいる傑作。
いやもうほんと「教養」なんて言葉を使うのは、あんまり良くないとは思うのですが、とりあえずこの10冊くらい読んでおけば、何かの際に「あっ、この元ネタは○○だな」と気づくこともあるんじゃないかな、と。