いつか電池がきれるまで

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「フォアグラの飼育は残酷」と抗議する人たちは「非常識」なのだろうか?

参考リンク(1):ファミマに「フォアグラの飼育は残酷」と抗議 やむなく特製弁当の販売を中止(msn産経ニュース)


 僕はこれを読んで、「ああ、一部のクレーマーのために、過剰な『自粛』が蔓延しているなんて、嫌な世の中だよなあ」と思いました。
 人間が「食べる」という行為には、「残酷さ」がつきものだろうに、と。

 発売を見合わせるのは「ファミマプレミアム黒毛和牛入りハンバーグ弁当~フォアグラパテ添え」(690円)で、今月10日に商品を発表。高価格商品として新聞やテレビで紹介されたところ、フォアグラに関して「飼育方法が残酷で食材に使わないでほしい」などという意見が24日昼までに22件寄せられたという。

 「世界三大珍味」のひとつフォアグラを、手軽に食べてみたい人も多いだろうに、22件のクレームで、やめちゃうなんてねえ……


 しかし、フォアグラについて調べてみると、どうも、最近の世界の趨勢としては、あまり歓迎されない食材になってきているようなのです。


参考リンク(2):フォアグラ(Wikipedia)


このWikipediaの記述によると、

フォワグラの生産は強制給餌(ガヴァージュ 仏: gavage / 英: force-feeding)を伴うため、動物虐待に当たるとして生産や販売を禁止する動きが広がっている。 フォアグラ愛好家は、カモは渡りを行う場合、予め肝臓に脂肪を蓄えて、脂肪肝になる性質があるとして、フォアグラの存在やフォアグラ消費の習慣の正当性を主張している。

ということなのですが、フォアグラというのは、かなり規制されつつあるようなのです。
これもWikipediaなのですが、

欧州
欧州評議会の「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」加盟国35カ国では、フォアグラの生産は「すでに定着している場合を除き」、1999年に禁止された。
イタリア、オーストリアの6州、チェコデンマーク、ドイツ、ノルウェーフィンランドポーランドルクセンブルクの各国では、「動物の強制給餌」自体が禁止されたことにより、フォアグラの生産は事実上、違法となった。(ただし、外国産フォアグラの販売は必ずしも禁止されていない)。また、アイルランド、イギリス、スウェーデン、オランダ、スイスでも、動物保護法の解釈上、フォアグラの生産は違法とされている。デンマークでは議論を受けてすべてのスーパーマーケット・チェーンがフォアグラ販売からも撤退している。


2000年度の世界生産量18,000トンの内、15,300トンがフランスで生産され、現在はほぼフランス一国で生産している状況である。2005年10月、フランスの国民議会が農業政策に関する包括法の一部として、フォアグラは仏文化の遺産であるとした法案を全会一致で可決した。その際、フランスが世界でフォアグラの80%以上を生産していることを指摘し、保護すべき仏文化、料理の貴重な遺産であると宣言。カモやガチョウの強制肥育についても、他に方法はなく止むを得ないとして、擁護する姿勢を鮮明にした。


アメリカ合衆国
2004年9月29日、アメリカ・カリフォルニア州は、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を2012年以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった[2]。
また2006年4月には、イリノイ州シカゴに於いてのフォアグラの販売が、市議会の決議によって全面的に禁止された。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。さらにリチャード・M・デイリー市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」などとこき下ろし、撤廃を訴えていた。そして当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で何の審議も行われず37対6で廃止が決まり、制定後わずか2年でお払い箱となった。


その他
アルゼンチンでは、フォアグラの生産は動物虐待に当たるとして、禁止されている。
イスラエルでは、2003年8月に最高裁農林水産省に対しガチョウの強制給餌を禁止するよう指示し、2006年2月以降禁止された。


日本ではあまり馴染みがない食材ということで、あまり議論されることはなかったようですが(僕も人生で10回くらいしか食べたことないし、「美味しい」と思ったのは2回だけです)、欧州、アメリカなどでは、「フォアグラ大国」フランスを除いて、かなりの国で「生産禁止」となっています。
こういうのをみると、「捕鯨で叩かれる日本」としては、フランスのフォアグラ文化に同情してしまうところもあるのですが、日本人にとっては「伝統的な食材」でも、「日常的に食べてきたもの」でもないのは事実です。
今回、ファミリーマートが発売自粛という選択をしたのは、「22件の抗議」だけが理由なのではなくて、こういう世界的な「フォアグラ包囲網」について考えると、コンビニエンスストアで売る商品としては、批判が広がるリスクが高そう、という判断もあったのではないかな、と。
高級フランス料理店でも残酷だからフォアグラを出すな、というのは違うと思うのですが、より多くの、広範囲の人を相手にするコンビニの商品としては、「不適切」だったのかもしれません。
ファミリーマートのお客さんには外国人も多いでしょうし。
まあ、そのくらい出す前にリサーチしておけばいいのに……という感じではありますけどね。
それにしても、680円の弁当のフォアグラって、どんな感じだったのかなあ……


最初のニュースを見たときには「22人の過激な動物愛護の人たち」のクレームに負けるなんて……と思ったのですが、視野を広げてみると「フォアグラは残酷だ」と考えている人というのが、けっして「少数派」ではないということに、僕はけっこう驚きました。
ある意味、こういう議論があって、禁止国も少なくないことすら知らないほど、日本人にとっては「名前は知っているけれど、馴染みのない食材」だということなのでしょうね。

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