先日、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』という映画のDVDを観ていて、ある場面で、少しだけ「あれっ?」と思った。
それは、柴咲コウさんが演じている主人公の「すーちゃん」が、友達の「まいちゃん」から「これ、絶対にすーちゃんは気に入ると思うから」というCDを渡されて、自宅でそれを聴く場面のこと。
すーちゃんは、ためらうことなく、そのCDを、ノートパソコンに入れて、聴きはじめたのだ。
いや、わかる。あなたが「そんなの当たり前じゃん」と言うことも。
でも、僕のなかでは「映画の一場面で、音楽を聴くための再生装置がノートパソコンであること」は、なんだかすごく感慨深かったのだ。
いま40歳超えを果たした僕にとっては、物心ついたときの音楽を聴く機械はラジオやテープレコーダー、そして、アナログレコードだった。
中学校くらいのときにCDが出たときには「こんなので音が鳴るのか?」と思ったし、ジャケットが小さいのがちょっと不満だった。
もっとも、取り扱いの便利さにおいては、レコードよりもはるかに上だったので、すぐに慣れたけれど。
同じトラックを何度も再生するのが、すごくラクになったしね。
その後、MDがけっこう一般的になったりもしたけれど、iPodをはじめとするデジタルオーディオの普及で、だいぶ歴史は変わってしまった。
僕はiPodを当時はまだ結婚していなかった妻に誕生日プレゼントとしてねだったのだけれども「それって、自分が持っているCDを移せるだけなんでしょ? 何の役に立つのか、わからないんだけど」と言われたのを、よく覚えている。
またあなたの「新しいだけのムダなもの買い」なのか、と。
実際に使ってみるまでは、僕も半信半疑、だったのだけれども。
音楽を聴く環境というのは、本当に変わってしまったような気がする。
昔は「CDラジカセがあって、ひとりで聴きたいときには、ヘッドフォンをつける」ようにしていたけれど、いまはパソコンでダウンロードしたり、iPodに入れて、原則的には「自分ひとりで聴く」。
誰かと一緒に聴きたいときには……さて、どうしよう?と、ちょっと迷う。
ノートパソコンで音楽を聴くのは、なんだかちょっとさびしい。
そう思ってしまうのは、僕が旧い人間だからなのだろう。
音質のちがいなんて、あんまりよくわからないし。
でもまあ、なんだかあの場面は、僕にとっては「時代の変化」をつきつけられたような感じがしたのだ。
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