お題:秋の夜長は読書とブログ
参考リンク:どうすれば面白い書評が書けるか考えてみる - ウラガミ
せっかくのお題なので、思いついたことあれこれを。
長くなりそうなので、何回かに分けます。
堀江貴文さんが、twitterで「ネットでダラダラ書いているのは時間のムダ!もっと短くまとめろ(意訳)」って書かれていたのを読んだので。
書評的なもの、をずっと書いていると(僕自身は「感想」だと言っているんですが)、結局のところ「書評というのは、ものすごく個人的なもの」であり、アクセスをあつめるという意味では「最低の選択肢ではないが、労多くして功少なし」だな、と思います。
そんなに反応を得られるようなものではないし、「お前の感想が気に入らない」とか言われると、「気にいらないのはしょうがないけど、文句を言われても困る」。じゃあ自分の感想を変えますね!ってわけにもいかないし。
荒川洋司さんという作家がいらっしゃって、この方は「他人の日記を読むのが趣味」で、それについての本も何冊か上梓されているんですよね。
そのなかで、江戸時代の「記録マニア」の日記が紹介されていました。
その人は、江戸から東海道を旅するのですが、その日記には、「宿場から宿場まで何千歩で歩いた」とか、「途中で食べた団子や蕎麦などの値段」「宿場の宿泊料」のようなデータを、ひたすら記録していたそうです。
(この辺、記憶のみで書いているので、ディテールは間違っているかもしれません)
自分の感想みたいなものは、ほとんど書かずに、ひたすら旅行中のデータの羅列。
いつの時代にも、こういう「記録魔」みたいな人はいるんですね。
そして、出版されて大きな話題になったわけでもないこの日記なのですが、現代の研究者たちにとっては、代え難い「貴重な資料」になっているそうです。
僕が映画を観たときに、観た時間と観客数を記録しているのは、もしかして、僕が書いているものに「価値」があるとすれば、それは、そういう「当時の人が実際に体験したデータ」なのではないか、と考えているからです。
長い目でみれば、どんなにすぐれた感想も風化してしまうけれど、「データ」は、誰かが利用してくれるかもしれません。
その一方で、柴咲コウさんが「泣きながら読んだ」と書いただけで、どこにでもありそうな青春小説がドカドカ売れ、小泉今日子さんが「愛読書」と言っただけで、みんながこぞってその本を読み始めます。
「数字」は残る。「気持ち」は消える。
「何を言ったか」よりも、「誰が言ったか」。
「書評」って、何なのでしょうね?
そしてその「面白さ」とは?
僕が他の人の「ネットでの書評」を読んでいて、これはつまんないな、と思うのは「書いている人が、エセ評論家になってしまっている書評」です。
「みんなはこう言っている」とか「客観的に評価すると」とか。
誰も、そんなものはあなたに求めていないのに。
そういうのは、専門家に任せておけば良いのではないでしょうか。
僕はよく「自分語りが多すぎる」と言われますし、自分でもそう思います。
もっと客観的な評価を心がけたほうが良いのではないか、と考えていた時期もありました。
でもね、よっぽどの大評論家か有名タレントでもないかぎり、誰かの書評って、しょせん「大河の一滴」みたいなものです。
それは、虚しいことでもあるんだけれども、逆に「だから、好きに書いてもいい」という面もあります。
「作品としての善し悪し」よりも「あなたは好きだったのか嫌いだったのか?」「面白かったのか、面白くなかったのか?」を僕は知りたい。
僕がどんなに率直に悪口を書いても、自分にとって大切な作品を手放しで褒めても、世の中全体でみれば、その作品の評価は、「おさまるべきところにおさまる」。
最近のネット上でのさまざまな作品への評価などをみていると「実際にその作品に触れずに、他人の酷評を読んだだけで判断して、自分も酷評する」なんて人が少なくないし、「せめて読んでから酷評すれば?」と言うと「そんなものに触れる価値がないのは、触れる前にわかっている、時間のムダ」という声が返ってきます。
うーむ、効率化されていて、合理的ではあるのですが、「つまらないものに触れることなく、面白いものの面白さが理解できるのだろうか?」なんて考えてみたりもするのです。
でもまあ、「面白さを理解するために、あえてつまらないものに触れる」っていうのも、バカバカしい気はしますよね。
僕が書評を書き始めたきっかけって、ほんとうにどうしようもないものでした。
ブログを書くことに夢中になっていた時期、「とにかく何かブログを更新したいのだけれど、書くことが思いつかない」ときに「コンスタントに更新できるネタ」=「本の感想」だったんですよ。
「読書感想文」はめんどくさくて大嫌いだったのだけれども、自分が読んだ本の記録を、積み重ねていくのは楽しい。
そして、感想を書くというのは、その本をあらためて消化する、という面もありました。
「あなたのお気に入りの本の、あらすじをなるべく詳細に思いだしてください」
こう問われて、あらためて思い返してみると、案外、覚えていないものです。
「愛読書」のはずでも、読み返してみると「こんな場面、あったっけ?」と意外に感じることは少なくありません。
でも、感想を書いた本については「覚えている割合」が比較的高いような気がします。
アウトプットすることは、少なくとも自分自身にとってはプラスになっているのではないかと。
ああ、なんかまた長くなってきたので、続きは次回にします。
次回はもう少し「どう書けばいいのか」という実践的な話を。
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