いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

ある病院の当直における「世代間抗争」

ある知り合いの劇画原作者、もとい、医者に聞いた話。
その病院は、当直がキツイので悪名高く、当直の夜は一睡もできないことがほとんどなのだそうだ。
そして、その病院での当直は、大部分が医局からこの病院に派遣されてきた若手医師たちが行っている。
常勤の偉い先生、年長でずっと務めている先生たちは「当直免除」となっているのだ。
(ちなみに50歳くらいから免除になるらしい)
若手は、当直のあまりのキツさに愚痴が絶えない。
なにしろ、彼らは日中の通常勤務をやって、そのあと一睡もせずに当直をして、さらに翌日も通常業務をこなさなければならないのだから。
いくら若くても、そんなのキツイし、危ないに決まっている。
せめて、当直の回数を少なくしてもらえないだろうか(いまは週に1回+土日が月に1〜2回)、あるいは、なんでも断らない、という方針について、現場の疲弊を考えて再検討する余地はないのか?
そもそも、上の先生たちは給料も高いのに当直はしなくていいなんて、不公平じゃないのか?


しかし、年長の「当直免除」の先生たちは、こう言うのだそうだ。
自分たちも若い頃は、キツイ思いをして当直をしてきたのだから、いまの若い連中は頑張るのが当たり前だ。
だいたい、うちの病院が急患を診なくなったら、この地域の救急医療は崩壊してしまう。
だから、「お前たちが」頑張れ。


ある年長の先生は、こんなふうに言っていたらしい。
自分たちは、ずっときつい思いをして、この病院で当直をやってきた。
年齢が上がって、ようやく「当直免除」になったんだ。
どうせ若い連中は、また医局人事で他所に行くのだから、がまんするのも長くて数年だろう。
ずっとやってきた自分たちが、この年齢になって、「あがり」のシステムの恩恵を受けて、何が悪い?
そもそも、あんなにキツイことは、この年齢になると、もうできないよ……


さて、この病院の当直のシステムは、どうあるべきなのか?


もちろんこれは、「病院」だけの話じゃない。
もっと本質的な問題が「世代間の争い」に隠されて、「なかったこと」にされているのだけれども、とりあえず、夜一睡もできないで翌日も働くのは、ものすごくつらい(らしいですよ。知り合いの劇画原作者によると)。


※このエントリはフィクションではありますが、たぶん、「うちの病院のこと?」と思う人が少なからずいるはずです。

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