いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

クックパッドの凋落と「若者のGoogle離れ」


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 僕自身はクックパッドをそんなに利用しているわけではないのですが、こういう記事をみていると、IT業界というのは、新しいサービスだと思っていたものが、いつのまにか時代遅れになってしまっているものなのだな、と痛感します。
 
 そうか、もうすでに「クックパッド離れ」が進んでいるのか……と。
 レシピが多すぎて、どれを選んでよいのかわからない。
 ネタみたいなレシピもあって、外れを引いてしまうリスクが高い。
 文字での説明だと、「短冊切り」とか「とろ火」とかいう説明が、具体的にどのくらいの大きさや火の強さなのか、イメージがわきにくい、という難点もあるのです。
 「短冊」の形はわかるけど、どれくらいの幅なのか?と。
 ただ、こういうのは、その人の料理スキルに依存しているところはあって、慣れている人にとっては「動画をいちいち早送りしたり巻き戻したりしながら観るのはめんどくさい」という場合もあるんですよね、たぶん。

 いろんなレシピを眺めるのは面白いけれど、実際に作ろうとするときには、ノイズが多すぎて不便、という感じです。

 そこで、動画を使ったり、厳選したレシピしか載せないようにしたり、という次世代のサービスが伸びてきています。

 冒頭のエントリのなかで、僕の印象に残ったのは、この部分でした。

 かつてクックパッドのヘビーユーザーだった30代の主婦・Bさんは、ユーザーの環境の変化を挙げる。
「もはや、レシピは一つのサイト内で調べるものじゃない。レシピを知りたいときは、Twitterやインスタグラムに『茄子 味噌 レシピ』などと直接入力して検索しています。主婦も忙しいし、共働き世帯も増えている。時間をかけて自分の口に合いそうなレシピを探して、丁寧に調理するよりは、SNSや偶然目にした動画で直感的に気に入った料理を作ることの方が、自然になっているのでは。
 そういう意味でクックパッドの動画サービス『cookpadLive』(旧『cookpad TV』)は、基本的に“クッキングLIVE”を配信するもので、ぱっとレシピを知りたいときに使うものではない印象です」


 これは、クックパッドだけの話ではなくて、最近読んだ本のなかでも、インフルエンサーと呼ばれる人が、「Googleで検索しない人たち」が増えていることを指摘しているのです。


シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

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 やや抽象的な言い方ですが、企業や組織のアカウントは「中の人」の人格を表立って表現できないので、ある意味、生活感のない、冷たい印象を持たれがちです。
 だからこそ公式アカウントは、目にとめてもらえるようにキャッチコピーを考えて、きちんと情報を咀嚼して提供していく必要があるはずです。
 できるだけ情報はリンクに頼らず、SNS内で完結していることが望ましいと思っています。

 先ほども述べたように、SNSの投稿で重要なのは、「一対一のつながり」を意識しながら相手に話しかけるように伝えること。
 そもそも最近は、検索エンジンで検索をしなくなってきたといわれています。特にSNSが普及し続けている昨今、その傾向はどんどん強まっています。

 たとえば、「森美術館に行ってみよう」と思ったときには、多くの人がウェブサイトを見ます。
 展覧会の大まかな内容と、営業時間、料金、アクセスあたりを確認するには、公式ウェブサイトは欠かせません。
 しかし、「森美術館に行ってみよう」と思ったきっかけは、おそらく公式ウェブサイトではないでしょう。SNSなどの情報で森美術館を知り、興味を持ったはずです。この認知経路においては、ウェブサイトは「受け」となりますので、偶発的な情報接触は難しいのです。


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共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る (幻冬舎単行本)

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 この「ゆうこす」さんも同じように「SNSハッシュタグから検索されることの多さ」を指摘しています。


 Googleなどで「検索」をする人が減ってきている、という話を最近けっこう聞くんですよ。
 彼らは、自分が知りたい情報をTwitterInstagramハッシュタグで検索して、「口コミ」で情報を得るのです。

 ネットの世界で、Googleが圧倒的な力を持ってしまったがために、SEO対策という、「Googleで検索上位に表示されるためのテクニック」が広まってきました。
 もちろん、Googleとしては「多くの人に価値のあるサイトを上位に表示するべき」と考え、さまざまな「SEO対策重視で、内容が薄いのに検索上位に表示されるサイト」を排除しよう、あるいは検索順位を改善しようとしています。
 それでも、実際は「いたちごっこ」になっていて、検索しても、表示されるのは、まともな情報がなくて役に立たない、定型文でつくられたサイトばかり。

 「〇〇(有名人の名前) 結婚」とかで検索してみると、「〇〇さんは結婚しているのでしょうか?ネットで検索してみましたが、信憑性のある情報は出てきませんでした。でも、美人でモテそうですから、もう結婚していてもおかしくはありませんね」とかいうのが、検索上位にずらっと並んでいるのです。
 こういうのをたて続けにみせられると、パソコンを壁に投げつけたくなります。
 店や商品も、内容よりも「宣伝上手」なほうが上位に表示されやすい。
 Googleも、世界最高の頭脳を集めて対策しているのですが、「お金のためにアルゴリズムの隙をつく」相手を排除するのは本当に難しい。
 なにしろ、「勝手サイト」をつくる側には、Googleの社員の何千倍、何万倍もの人がいるわけですし。


fujipon.hatenablog.com


 そこで、いまは「SNSを通じての、顔がみえる人からの口コミ」を重視している人が増えているのです。
 いちいちGoogleを開いて、検索窓にワードを打ち込むのもめんどくさいから、TwitterInstagramの検索窓で良いじゃないか、と。
 Googleはノイズだらけだし、アテにならないし。

 僕の感覚では、「インフルエンサー」と呼ばれる人のおすすめを鵜呑みにするのも、いかがなものか、なのですが(あの人たちも「商売」ですし)、「Google不信」は、けっこう広がってきているような気がします。

 好きな人、信頼できる人のレシピをそのまま真似してしまったほうが、膨大な数のなかから「選ぶ」より、ラクですし。

fujipon.hatenadiary.com

 クックパッドよりも、小林カツ代さんのレシピのほうが、「的中率」は高いですよね、それは。

 クックパッドというサービスは、本質的には「外れを引く可能性も含めて楽しむ」べきもので、あるサービスが新鮮なうちは、そういう「遊び心」にみんな魅力を感じるけれど、使い慣れる(飽きる)と効率重視になってしまう、という面もありそうです。
 
 このまま、「Google離れ」が進んでいくのか、それとも、SNS内での検索対策で稼ごうという人が増えることによって、SNSへの信頼感も薄れてしまうのか。
 
 どんなに便利なサービスでも、長く支持され続けるのは難しいものですね。
 人気があって、お金になればなるほど、ノイズも多くなるものなあ。


ティム・クック?アップルをさらなる高みへと押し上げた天才

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