いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「皆がこれ読んでたら読んでたら世の中もっと良くなるのに」と僕が思っている10冊の本


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 ブックマークコメントも含めて、参考になるというか、面白いな、と。

 で、僕なりの、この「皆がこれ読んでたら読んでたら世の中もっと良くなるのにという本」を紹介してみたいと思います。

 いちおう、これまで僕が自分で読んできたものの中から選ぶ、ということと、パッと思いついたものを並べたので、至らない点はご容赦ください。おすすめの順ではなく、順不同です。



(1)FACTFULNESS(ファクトフルネス)

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

fujipon.hatenadiary.com


 世界は心配性の人々が考えているほど悪くはないし、むしろ、どんどん良くなってきている。
 自分が世界を広い視野でみられていない、ということを実感させられる本。人類って、そこまで馬鹿じゃない、僕が「バカであってほしい」と思うほどには。
 まず、世界の現実を知らなければ、世界を良くすることもできませんし。



(2)夜と霧

夜と霧 新版

夜と霧 新版

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「人はどう生きるべきか?」「なぜ生きているのか?」
この本にすべての解答があるわけではないのは、この本が世に出てから65年も経っているのに、同じことで悩んでいる人が大勢いることからも明らかです。
しかしながら、この本は、そういう迷える人間たちに、65年間も読み継がれているのも事実です。

わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。
では、この人間とはなにものか。
人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。
人間とは、ガス室を発明した存在だ。
しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ。



(3)最後の授業 ぼくの命があるうちに

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 最初にこの本を手に取ったとき、正直、「よくある命の大切さを訴える感動モノ」だと僕は予想していました。
 でもね、この本は、この人は違ったのです。
 この本に書いてあること、そして、「最後の授業」で彼が語ったのは、「よりよく生きるには、どうすればいいか」ということ、そして、「人は生きているかぎり、変わること、成長していくことができる」ということでした。
 たとえそれが「死の宣告」を受けた後でさえも、人は、「よりよく変わろうとすることができる」のです。




(4)統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

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「ソースを出せ!」を常套句にしている人は多いけれど、「そのソースが妥当なものであるかどうか」がわかっている人は少ないと僕は感じています。
 現代社会を生きるうえで、必要最低限な「データの読み方」を知るための、現時点での最良の入門書のひとつだと思います。
 「自分は文系だから、関係ないんじゃない?」って言う人にこそ、ぜひ、読んでおいていただきたい本です。
 2〜3時間で読めるし「統計学をつくってきた人たちの物語」としても、かなり面白いですよ。



(5)偶然のチカラ

偶然のチカラ (集英社新書)

偶然のチカラ (集英社新書)

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著者の植島さんは、「この世界に起こることは、すべて必然だと考えてはどうか?」と書かれているのですが、たとえば、飛行機事故とか難病というのは、人類全体でいうと、ある一定の割合で「必然的に起こる」ことなのです。
つまり、「世界の誰かに起こる」ことについて、「ありえないこと」だとは思わないけれど、「自分や身近なところに起こる」のは、「偶然であり、ありえない、あってはいけないこと」だとしか考えられない。
先入観とか思い込みによって、僕たちの「選択」には、大きなバイアスがかかります。
そういう「理屈に合わない面」こそが、「人間らしさ」なのかもしれないけれど。




(6)失敗の科学 失敗から学習できる組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

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「あらゆるものが当てはまるということは、何からも学べないことに等しい」、実際にこの本を読んでいただくのが一番良いと思うのですが、この文章を読んでくださっている方には、この一文だけでも、持って帰ってほしい。




(7)「国境なき医師団」を見に行く

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 「ものすごく世の中のためになりそうなこと」って、やる側にも覚悟とか気合みたいなものが必要だと思うじゃないですか。
 ものすごく立派な人のようにみなされるのも、なんとなく抵抗がある、とか。
 海外への援助というと、日本では「青年」海外協力隊、みたいなイメージが強いのですが、海外には、リタイアしたばかりの技術者が、まだ十分体力があるうちに、世の中への恩返しがしたい、と国境なき医師団に参加している人がいるのです。彼らは、すでに「技術」を持っているし、還暦くらいであれば、まだまだ体も動きます。
 日本でも、こういう「定年と隠居生活のあいだの時間」を使って参加したいという人は、これから増えていくかもしれませんね。僕も「こういう『余生』も良いかもしれないな」って思ったんですよ。そんなに甘いものじゃないかもしれないけれど、あまり難しく考えすぎなくても、良いのではなかろうか。



(8)サピエンス全史

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

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僕は、おそらくそんなに遠くない未来に、人間は自分自身を「つくりかえる」と予測しています。
 だれかがやりはじめれば、その流れを押しとどめることはできないでしょう。
「想像もつかないような未来のサピエンス像なんて、想像するだけ時間のムダ」なのかもしれませんが。

 本当に「おもしろい」ですよ、この本。
 僕はアメリカ大統領選挙の開票速報を観ながら、この本に書かれていた「人間が平等であるというのは、『共同幻想』なのだ」ということを、考えずにはいられませんでした。
 もちろん、「だから、差別を容認すべきだ」とは思わないし、きっとそれは、現代に必要な「虚構」なのだと信じてはいるのだけれど。




(9)生きて帰ってきた男-ある日本兵の戦争と戦後

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この新書は、ものすごい記憶力を持ちつつも、世の中に対して、生き延びるために、ただ、働き続け、太平洋戦争から終戦後、高度成長期、バブルの時代を歩み続けた「普通のおじさん」の人生を、その息子である小熊英二さんと優秀なインタビュアーである林英一さんが、丹念に掬いあげたものです。

 この本を読んでいると、人というのは、自分が経験してきたことが「普通」であり「主流」であると考えがちだけれど、「常識」や「当たり前」は、時代によって変化していくものなのだということが、よくわかります。
 そして、そういう生々しい感情を謙二さんがちゃんと記憶しているということは、驚くべきことではあります。
 若い頃、さんざん苦労して、「もうこんな生活はイヤだ。自分の子どもにはこんなことはさせたくない」と考えていた人が、成功した老人になると「まあ、若い頃の苦労は、買ってでもしろ、だよ、ワッハッハ!」と言うのが「普通」なのだから。



(10)カイジ「命より重い!」お金の話

カイジ「命より重い!」お金の話

カイジ「命より重い!」お金の話

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 最後は少し気軽に読めそうな本を。
 カード会社からの「リボ払いに変更で2000ポイント!」という「お得な情報」が送られてくるたびに、暗澹たる気持ちになるのです。
 簡単な数学ができないために、目先の「お得にみえる情報」に踊らされ、借金を増やしている人が大勢いるのです。
 企業の側は、リボ払いが「払う側にとっては総支払額がずっと多くなりやすいシステム」であることを承知のうえで、「目先のポイント」で顧客を釣ろうとしているんですよね。


blog.tinect.jp



 とりあえず、思いついた本を10冊挙げてみました。
 しかし、ここまで書いてきてなんですが、「リボ払い」を誰も選ばなくなると、はたして世界は(全体として)良くなるのか?という疑問も浮かんできたんですよね。
 「本が世界を変えることがあるのか?」
 アドラー心理学の本があんなに流行っても、『嫌われる勇気』のおかげで、私の人生変わりました、という人には会ったことがないし、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が大ベストセラーになっても、日本の経営者が優秀になったとも思えないのです。
 『聖書』『コーラン』は別格なのでしょうけど。


 ここに挙げたのは「(読んだ人にとっての)世界の見かたが少し変わる(かもしれない)本」なんですよね、結局のところ。


fujipon.hatenablog.com

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