いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「どうやって読みたい本見つけてる?」という増田さんの質問に、勝手にお答えします。

anond.hatelabo.jp


 このエントリに関しては、ブックマークコメントのほうが主役なんですけどね。

b.hatena.ne.jp


 みんなけっこう、新聞の書評欄を読んでいるんだな、と思いました。
 あと、読んだ本の「参考文献」に目配りしている人もけっこういるんですね。
 まあ、「参考文献」が掲載されているという本は、研究書や専門書が多そうなので、娯楽目的ではなく、ということなのかもしれません。
 仕事のために使う本と娯楽として読む本というのは、僕の場合、読むまでの経路が異なるので、今回は「娯楽目的で読む本をどうやってみつけているのか」について書いてみます。


 僕の場合、紙の新聞はとっていないので、新聞の書評欄で探す、ということはほとんど無いんですよね。
 ネットの書評で興味を持った本か(新聞の書評がネットにも掲載されていることが多いのですけど)、『本の雑誌』で採りあげられていた本か、直接書店に行って目についた本、あるいは、図書館で見かけた面白そうな本を読むことが多いです。
 あと、新書とノンフィクションに関しては、Amazonで定期的にKindleの新刊をチェックしています。


 割合としていちばん多いのは、今のところ、「書店でみかけて」なのですが、これに関しては、ノウハウというより、長年の勘としか言いようがないんですよね。
 「売れているけれど、売れすぎていない本」「装丁が気にいった本」みたいな、自分基準はあるのですが。


 でも、実際のところ「自分が読みたい本を探す」っていうのは、そんなに簡単なことじゃないというか、「たくさんあるものの中で、自分が好きなものをひとつ選ぶ」っていうのは、けっこう難しいと思うんですよ。
 僕も子どもの頃は、「どれか一冊だけなら買ってあげるよ」「うーん、どれにしようか、あれもこれもほしい……」「決められないなら、今日は無しね」「うえーん」みたいなやりとりを何度も繰り返してきました。
 この年齢になると、本くらいは選べるようになった……と言いたいところなのですが、どちらかというと、目についたものはほとんど買ってしまうようになっただけ。 
 こうして、何のしがらみもなく本の感想を書けるのは、ひとえにそれを読んでくれる人がいて、そこで得られるささやかな収入で本代をまかなえるおかげです。
 儲かりはしませんが、これまでの書評家が、それで食べていこうとすればするほど、出版社や作者との関係性に苦慮しなければらならかったであろうことを考えると、恵まれた時代を生きていると痛感します。
 さりげなくサポートしてもらえる(サポートしてあげられる)システムとして考えると、アフィリエイトっていうのは、必ずしも悪いところばかりではない……と思います。


 かなり脱線してしまいましたが、「読みたい本を探す」ときに、僕はこの話を応用しています。


fujipon.hatenadiary.com


 けっこう前に書いたものなので、やたらと煽情的なタイトルなんですが……

(『日々是作文』(山本文緒著・文春文庫)より)


しかし恋愛に学校はない。こればかりは我流である。我流ではあるが、十五歳で初めてボーイフレンドというものを持ってから幾歳月。好きこそものの上手なれ。数え切れない程の恋愛失敗事例をもってして、少しでもみなさまのお役に立てたらと思います。
 基礎の基礎なので、まず「好きな男性の作り方」からですよ。
 というのは、最近まわりの三十代女性数人から「好きな人ができない」と相談をもちかけられたのだ。「え?」と耳を疑った。私なんか好きな男の人なんかすぐにぼろぼろできるけどな。それともゲートボールのゲートくらい私の男性に対するハードルが低いのか。
 好きな男性。それはいないよりはいた方が楽しいじゃないか。うまくいくとかいかないとか、結婚してるとかしてないとかは置いておいて、まったく誰にもときめかないというのは日々の張りとしてどうだろう。楽といえば楽なので、その方がいい人は無理して作る必要はまったくないと思うが、彼女達は「好きな男性が欲しい」と訴えているのだ。
 そのうちの1人が「山本さんはいつもスイッチ入ってますもんね」と気になる発言をした。恋愛スイッチが常にオンの状態だというのだ。失敬な、と最初思ったが、よくよく考えてみると、もしかしてこういうことかもと思い当たった。
 私は彼女に質問してみた。
SMAPで好きなのは誰?」
「うーん。全員」
 これだ、これ。男性の群を眺めるとき、私は無意識に「好きな順番」あるいは「マシな順番」をつけて見ている。大勢の飲み会ではもちろんのこと、年配のおじさましかいない会食の席でも、男性が6人いたらAからFまでマイ順位をつける。その基準は、歳も肩書きも関係なく単なる「見た感じ話した感じ」であり、その後どうこうしようとはりきるわけではない。たった一度しか会わない人達でも、言葉さえ交わさない人達でも、ターミネーターに装備されているスコープのようなもので男性陣にランク付けをする。もし男性陣が聞いたら「お前にEだのFだの言われたかねえよ」と言われることは重々承知の上である。だからSMAPだってキムタクだったり慎吾ちゃんだったり日によって変わるが、必ず一番からビリまでいるんである。
 この勝手な恋愛スコープで世の中を見ている女性は稀有なのかと、まわりの人達に聞いたところ案外いた。例外なく恋愛に積極的で、痛い目にあってもへこたれない強者どもだった(夢の跡だったりもしているが)。
 そんな目でいちいち男を見るなんて媚びてるみたいだし発情しっぱなしみたいで気持ち悪い、と思った方は一生そうしていて下さい。何もしない「ありのままの自分」という努力しない状態のままで、王子様が現れる奇跡を煎餅でもかじりながら待っていて下さい。
 順位付けの練習をしておくと、いざとなったときに瞬発力が違うように思う。無意識のうちにAの人にあなたは話しかける癖がつくはす。それがまず第一歩。
 さあ、たった今から恋愛スコープをつけてまわりを見渡してみよう。つまらない会社もつらい通勤電車も、スイッチを入れるだけで違う色に見えるかもしれませんよ。


 「恋愛」となると「人間に順番をつけるのか?」って話になるし、僕はいまだに「恋愛スコープ」は装備できないままなのですが、これを本選びに応用しているんですよ。
 たとえば、図書館で「新しく入った本のコーナー」を眺めても、あんまりピンとこないことって、ありますよね。
 そういうときに「この棚の中でどれか一冊どうしても読まなければならないとすれば、どの本にするか」を無理やりにでも自分のなかで決めて、それを借りて読んでみる。
 まあ、どうしようもなくつまらなかったら、途中でやめちゃうこともありますが。
 書店でも、あまり読まないような本の棚の前に立って、「この中で、どれか読むとすれば」と考えてみる。
 まあ、書店では、そこで実際に買うのは図書館で借りるのに比べると敷居が高いとは思うのですけど、こういう「優先順位をつけるトレーニング」って、日頃からやっておくと、けっこういろんな場面で役に立つのです。
 僕のような、もともと優柔不断な人間にはなおさら。
 「もっと面白い本があるはず」「もっといい人がいるはず」って思考に陥ってしまうと、結局、何も決められないまま、時間を浪費するだけになりがちですし。
 ある程度、こういう「決めごと」みたいなのを作っておかないと、好きな本、読みやすい本ばっかり読んでしまうんですよね、僕の場合。それが悪いってこともないのだろうけど、少しずつでも守備範囲を広げてみたいじゃないですか。

 
 こういう練習を意識的にやっていると、たぶん、漠然と探すよりは、少しずつ、効率がよくなるのではなかろうか。


 以下に、僕が実際に本選びの参考にしているネットのコンテンツを挙げておきます。
 あらかじめ言っておきますが、定番ばかりです。
 「こんなの知ってるよ!」と思った人、どうもすみません。
 

www.webdoku.jp


一時期、切実に危機が叫ばれていたのですが、廃刊にならなくてよかった。
ダ・ヴィンチ』がどんどんPR誌化していくなかで、この武骨な書評誌があるのは、本当にありがたい。
本当は、紙の『本の雑誌』を読んでもらいたいところではあるのですが、とりあえず、『年間ベスト10』の号だけでも買って、ランクインしている本のなかで、ちょっと気になったものを読んでみていただきたい。



honz.jp


ネット書評サイトの定番。
文芸作品よりもノンフィクションやサイエンス系に強い印象があります(というか、文芸ものって、書評を書きづらいんですよね基本的に)。
僕は、内藤順さんと栗下直也さんのセンスが好きです。
honz.jp
honz.jp



book.asahi.com
これも定番中の定番で、大きく取り上げられている本が「売れ線」に偏っている印象があるのですが(というか、こういうところで採りあげられているから売れているのかもしれないけど)、「新着書評」は、けっこう、かゆいところに手が届くような本も紹介されています。
「出版社情報」「書店ニュース」も良いです。


huyukiitoichi.hatenadiary.jp
このブログの書評を読むたびに、「僕も本当はこういうのを書きたいんだけどなあ……」とため息ばかり。本の感想というのは、そこに書かれていることと、自分の感覚や言葉のバランスをとらなくてはならないのだけれど、このブログはそれが「ちょうどいい」感じがするんですよね。



冒頭のエントリでは、書評ブログを参考にしているのか?と書かれていますが、本の感想のブログを長年やっている人間として言わせていただければ、労力のわりには、あまり読んでもらえないことが多いのです。
fujipon.hatenadiary.com
このジャンルにブログが乱立しているからなのか、個人の本の感想に興味を持つ人が少ないからなのか。
自分が面白いと思った本に、ひとりでも多く興味を持ってもらえたら、それで十分なのかもしれないし、こうして、自分が読んだ本のデータが積みあがっていくだけでも悪くはないのだけれど。


fujipon.hatenablog.com
fujipon.hatenadiary.com

本の雑誌414号2017年12月号

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