いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

カープファンに福井優也投手を語らせると、長くなるよ。

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 福井、ああ、福井優也
 もう29歳なんですよね、福井投手。
 高校時代には愛媛県済美高校で春の選抜優勝。
 高校卒業時の2005年に巨人にドラフト4位で指名されたものの、結局入団しませんでした(巨人にドラフト指名された選手の入団拒否は25年ぶりということで、それなりに話題にもなったのです)。
 理由としては、4位という指名順位が不満だった、という説もありますが、実際のところはよくわかりません。
 一浪の後、早稲田大学に入学。
 斎藤佑樹大石達也の両投手とともに、「早大三羽烏」と呼ばれたのですが、2010年のドラフトで、大石投手の「はずれ1位」として広島カープに入団しました。
 カープファンにとっては、外れ1位に残っていてよかった、という感じではあったのですが、本人は「三羽烏」の他の二人が入札で競合していたこともあり、悔しさもあったようです。

 その福井投手、ルーキーイヤーの2011年4月17日の巨人戦でプロ入り初登板・初先発し、7回を6安打2失点と好投し、球団史上8人目となるプロ初先発初勝利。その後もローテーションを守って、27試合登板で8勝10敗でした。
 与四球68個、暴投11回は嬉しくないリーグトップで、まあ、当時からコントロールにはやや難があったんですよね。
 2017年のルーキー・加藤拓也投手をみると、なんか似てるなあ、と思うんですよ。愛想のなさや取材への「塩対応」もちょっと似てるよね。その不器用さがカープファンにとっては愛すべきところでもあり、もどかしくもあり。
 ルーキーとしては立派な成績で、今後はローテーションの柱として活躍してくれるはず、だったのですが……

 その後の福井投手は、予想された成長曲線を大きく裏切り、迷走してしまうのです。
 翌2012年はわずか2勝、リリーフの層が薄いのが課題だった2013年にはセットアッパーへの転向を試みたのですが、出れば打たれ、の繰り返し。もともとコントロールに難があるピッチャーで、リリーフ向きではなかったのかもしれませんが、ほとんど1軍で活躍することはありませんでした。


 でも、カープファンとしては、ルーキーイヤーの良いときの福井の圧倒的なピッチングが忘れられません。
 大きな怪我をしたわけでもないし、ときどき凄さの片鱗も見せる。
 良いときは、ストレートはズドンと来るし、グイグイと力で捩じ伏せるんですよ、こりゃ打てないな、これなら二桁勝てなきゃ嘘だろ、って思うんだよ)。
 しかも、巨人戦とか阪神戦で、相手がエース級のピッチャーで、「こっちは福井だし、厳しいな」と思っていると、すごいピッチングをして勝ってしまう。
「新聞の読める馬」カブトシローかよ!
(昔、そういう人気になると凡走し、人気がないときには激走する馬がいたのです。いや、僕もリアルタイムでこの馬のレースを見たわけじゃないけど)

 
 ファンも(そしておそらく本人も首脳陣も)良いときのイメージがあって、期待しては裏切られ、の繰り返しです。
 2014年、カープのローテーションは前田健太、大瀬良大地、バリントンの3人以外の先発ローテーションが壊滅状態でした。野村祐輔も7つ勝ってはいるものの、なんとか5回にたどり着いて運が良ければ勝ち星がつく、という感じ。
 とにかく、先発投手が足りない。
 そこで、実績がある福井投手に期待が集まります。
 しかしながら、そのシーズンの5月7日に与えられた先発のチャンスは、5回を投げて、9安打を浴び、3四球で6失点。
 野村謙二郎監督も「こりゃダメだ」と、匙を投げるようなコメントをしていました。
 その後、二軍ではまずまずのピッチングをするものの、これまでさんざん裏切られてきたこともあり、なかなか一軍から声はかかりませんでした。
 ファンとしては、「福井を試してみればいいのに」と思いつつも、「期待してはダメ、の繰り返しだからなあ」と、このままフェードアウトしていくのではないかという予感もありました。


 そんななか、同年の7月27日に、福井投手は阪神戦で先発マウンドに登ります。
 二軍で好投しても、3か月くらい「干されていた」のは、これまで裏切られ続けた首脳陣の失望が大きかったからでしょう。
 ああ福井か、今日は捨てゲームだな……あんまり期待しないようにしよう……でも、福井は「やればできる子」のはずなんだけど……いやそれで何度裏切られてきたことか……


 その試合も、早々に1失点し、「やっぱり福井は福井か……」と失望しながら、ときどき途中経過を追っていました。
 ところが、福井はその試合、失点後は目が覚めたように調子を取り戻し、素晴らしいピッチングを見せたのです。
 ようやく仕事を終えて、帰宅中の車のラジオで、僕はその中継を聴いていました。
 6対1で、カープが5点のリード。
 そこそこ球数も投げていたので、9回は誰かがリリーフするのかと思いきや、野村監督は9回も続投を選択したのです。


 そのとき、ラジオから聴こえてきたスタンドのカープファンの大声援は、いまでも忘れられません。僕は泣いたよ。


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 みんな待ってたんだぞ、福井……
 いつか、その潜在能力が開花するときがくるはず、今はくすぶっているけれど、本当はすごいピッチャーなんだから……
 完投は珍しい時代にはなったけれど、9回にマウンドに登っただけで、こんなに大きなコールをしてもらえる選手は、そんなにいないはず。
 この試合は、日本シリーズでもCSでも、優勝がかかった試合でもなかったのに。
 福井選手自身も、ヒーローインタビューで、「福井コールにすごいウルっときた」と話していました。


 その後はローテーションの一員となり、2014年は4勝5敗。
 翌2015年は、カープに戻ってきてくれた黒田博樹投手の薫陶もあり、惜しくも二桁には届かなかったものの、9勝を挙げました。
 それまでの完璧主義から、黒田さんの影響で「まずはゲームをつくる」「次の点を与えないようにする」ことを考え、だいぶラクになった、と語っていた福井。
 持っているポテンシャルからすれば、最多勝争いに加わってもおかしくないはず!
 2016年、オープン戦でも絶好調で、メジャーに行ったマエケンの穴を埋めるのは福井だ!今年は最低限二桁!


 ……ところが、開幕してみると調子が上がらず、5勝(4敗)と、期待の大きさを考えると……という結果に終わってしまったんですよね。
 

 今年は黒田さんが引退してしまい、その穴を埋める重要な存在だったはずなのに、やっぱり開幕から調子が上がらず、でも、カープファンとしては、「まあ、福井は他のピッチャーの調子が落ちてきたときの切り札的な存在として温存されているんだよな。福井ほどのピッチャーをジョーカーとしてとっておけるカープも強くなったものだ」なんて楽観していたんですよ。
 ところが、2017年に登板した2試合は、打線の援護もあって1勝はしているものの、期待とはほど遠い内容で、投球回合計12回で被安打16、与四球6、10失点。防御率は6.75……
 本当に調子が悪かったので、二軍で調整していて、先発ローテーションピッチャーが次々に離脱してしまったので、致し方なく一軍で先発させた、ということなのでしょう。

 ああ、これならずっと「秘密」兵器のままのほうが良かったかも……相性の悪いヤクルト戦に登板した、というのもあったのかもしれませんが、期待が大きいだけに、落胆してしまうのです。
 
 2014年の復活劇で、黒田さんの薫陶で、「一皮剝けた」んじゃないのか福井。お前の皮は、いったい何枚あるんだよ……
 もう29歳って、若くはないのに。


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 ああ、そういえば、同じように、ずっとポテンシャルの高さに期待されていて、来年こそは二桁勝利!って毎年思っていた、長谷川昌幸ってピッチャーもいたなあ……福井もそうなってしまうのだろうか。
 こんな劇的な「復活劇」があっても、人生って、そう簡単には変わらないものなのか。
 結果を出すこと、そして、結果を出し続けることは、こんなにも難しいことなのか。

 
「やればできる」と思うし、それなりの実績もあるし、もどかしい選手なのです、福井優也
 でも、カープファンにとっては、福井って、本当に「気になる選手」なんですよね。
 どこの球団にも、こういう存在は、ひとりくらいはいるものなのかもしれないけれど。