いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「往復はがき」を知らない大人たち

先日、仕事で「往復はがき」が必要になって、ちょっと考え込んでしまった。
往復はがきって、郵便局以外のどこかで買えるだろうか?
もうこのあたりの郵便局は閉まっている時間なので、どこか他に扱っているところはないかとネットで検索してみた。
昼間、開いている時間に郵便局に行くというのは、できないことはないが、ちょっと大変でもあるので。
ネットには「コンビニでも扱っているところがある」という情報があったので、近所のちょっと大きめのコンビニ(セブンイレブン)に行き、まだ若い(たぶん20歳になるかならないかくらい)の女性の店員さんに聞いてみた。


「往復はがき、ありますか?」
「えっ、はがきですか? はがきならありますけど」
「あの、普通のはがきじゃなくて、『往復はがき』なんです」
「えっ、何はがきですか? おーふくはがき? すみません、ちょっとわからないんですが……」


というわけで、僕よりちょっと年上くらいの女性の店員さんに尋ねてくれることになったのです。
その人はさすがに「往復はがき」というものが存在することは知っていたのだけれど、確認もしないまま「普通のはがきなら扱っているんですけど……」と即答。


「売ってないじゃないか!」と怒る気持ちはなかったのです(ネットにも「扱っているところもある」って書いてあったし)。
しかしながら、いまの20歳くらいの人は「往復はがき」を知らない、ということには驚いてしまいました。
もちろん、みんながみんな知らないわけじゃないと思うし、そもそも、僕も「往復はがきとか買うのは何年ぶりだろうな」なんて思いながらネットで検索して買える場所を探していたので、若い人が「何それ」と思うのは仕方が無いことなのかもしれませんね。


そんなことをがあってしばらくしてから、NHK団塊の世代向けくらいの趣味を扱ったテレビ番組(俳句か短歌の番組だったと思う)のなかで、「ご応募は往復はがきで」と言っていて、「おお、僕の親世代(いま60代後半以降)にとっては、往復はがきがまだ「現役」なんだな、と少し安心したのです。
というか、世代によって、他者とメッセージをやりとりするための手段が分かれてきているものなのだな、と。
ただ、こういうNHKの番組を観ている世代にも、確実に「メールで良いんじゃないの?」と考えている人は増えているはずです。


一部のラジオ番組のように、「メール不可」にすることによって、投稿のクオリティを保とうという場合もあるのでしょうし、俳句とか短歌の場合は、手書きの文字そのものが「個性」のひとつだという考え方なのかな、とも思います。


それにしても、往復はがきが「何ですかそれ?」と言われる時代にすでになっているとは……
少なくとも、「そういうものがあることくらいは、大人なら知っている」という認識だったのに。


テクノロジーや社会の変化で、僕が物心ついたときに「あたりまえ」だったものが、どんどん「過去のもの」になってきているのです。
テレホンカードなんて、昔はけっこう収集家がいて、高額で取引されたりもしていたのに、あのときに集めていた人たちは、コレクションを今、どうしているのだろうか。
もちろん、公衆電話で使えるのだろうけど、公衆電話を使う人はすごく減っているし(逆に、公衆電話を使っている人には、なんらかの「事情」を想像せずにはいられないくらいに)、これから生まれてくる子どもたちは、固定電話の使い方を学ぶ機会すら無くなりそうです。


そういう「かつてはあたりまえだったが、今では珍しくなったもの」の代表格に「和式トイレ」があって、今では「和式は嫌い」もしくは「使えない」「使いたくない」と公衆トイレでも「お先にいいですよ」と言われることさえあります。
いや、僕も正直、今は和式、苦手なんですけどね。


僕が子どもの頃の大小兼用のトイレはほとんどが和式で、洋式トイレが普及しはじめたときには「でも、これ、便座に他の人が生尻をつけていたんだよね……ギョウ虫とかうつらないのか?」とか気にしていたものです。
そもそも、「ギョウ虫」なんてもうみんな知らないだろうし、僕も目黒寄生虫館でしか見たことないけど。
そういえば、モデルさんがダイエットのためにわざとサナダムシを体内に飼っているという話を昔聞いたことがあるのだけれど、そういうことが本当にある(あった)のか、それともただの都市伝説なのか。


そのうち、普通のはがきも「何ですかそれ?」と言われるようになるかもしれないな、と思いつつ、結局、往復はがきは郵便局で後日買いました。
でも、郵便局の人も「往復はがき、ですか……あっ、はい!」と、ランチタイムにレギュラーメニューをオーダーされた店員さんのようなリアクションをしていましたよ。


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