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いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

トランプ大統領誕生は「終わりのはじまり」になるのだろうか?


mainichi.jp
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イギリスのEU離脱のときとなんだか雰囲気が似ているな、とは思っていたんですよ。
接戦のわりには、メディアでは「結局、ヒラリーさんが勝ちそう」という楽観的な予測ばかり。
いや、僕も「なんのかんの言っても、アメリカ国民は、トランプさんのような極端な人を選ぶようなリスクは侵さないだろう」と思っていたんですよ。
でも、そうじゃなかった。
今回の選挙の結果はどうあれ、仮にトランプさんが負けていたとしても、「アメリカ国民の半分くらいは、トランプさんの主張に心惹かれる人々なのだ」という現実は残るな、と考えていたのですが、本当に勝つとなると、やっぱり驚きました。


fujipon.hatenablog.com


正直、僕はこの「イギリスの国民投票でのEU離脱」が世界の教訓になって、ヒラリーさん支持者も「まさか」を警戒するだろう、と予想していました。
ところが、実際は「隠れトランプ派」のほうが、劣勢の報道をみて、投票に出かけたようです。


www.iza.ne.jp


というか、僕は「最近のアメリカの経済状況、雇用情勢は比較的安定していて、そういうときの選挙は、現大統領の政党が勝ってきた」という話を聞いていました。
今回もたぶんそうなるんだろうな、と。


トランプさん関連のエントリをいくつか挙げておきます。
fujipon.hatenadiary.com
fujipon.hatenadiary.com
fujipon.hatenadiary.com


誰がトランプさんを支持していたのか?
僕は「生活が苦しくて、行き詰まりを感じていて、どうせこれ以上悪くなりようがないから、とにかく『変えてくれる人』を!」という人々を想像していたのです。
ところが、『さらば白人国家アメリカ』のなかで、町山智浩さんは、こんなデータを紹介しています。

 誰がトランプを支持しているのか。
 出馬表明のすぐ後、2015年8月にユーガヴ社が行なった調査によれば、まず、トランプ支持者の9割は白人。半分は45歳から65歳で、65歳以上も34%。つまり8割以上が中高年だという。大卒率はわずが19%。また、3割以上が一人当たりの年収5万ドル以下。年収10万ドル以上の高所得者は1割だった。
 だが、トランプ支持者は貧しいわけではない。2016年5月の調査では、トランプ支持者の世帯年収の平均は7万2000ドルだった。全米平均では5万6000ドルだから中の上だ。ちなみに民主党の2人の候補ヒラリー・クリントンバーニー・サンダースの支持者の世帯年収の平均は6万1000ドル。民主党支持者には、都市部のリベラルなインテリも多いが、独身の若者や学生、黒人、メキシコ系の貧しい人々も多いからだ。
 まとめると、トランプ支持者の平均像は、夫婦で年収7万ドル台の中流、中高年の高卒の白人ということになる。


 学歴は高くないけれど、地道に働いてそれなりの暮らしをしている白人の中流層が、トランプさんを支持しているのです。
 ヒラリーさんをはじめとする、これまでの「政治的な正しさ」は、ウォール街とマイノリティという「社会の上層と下層」を優遇してきたけれど、「真ん中」は置き去りにされていた(と、少なくともトランプ支持層は考えているわけです)。
 トランプ大統領なんて、アメリカ国民はバカじゃね?と言いたくなるかもしれないけれど、佐藤優さんも仰っているように、日本で橋下徹さんが支持されたのも、同じような理由ではあるんですよね。
 橋下さんは、トランプさんよりは「理性的」だと思いたいのは、僕が日本人だから、なんでしょうね……でも、トランプさんは橋下さんより、もっと「面白い」よね……


 ニュースやTwitterで「有識者」たちが「絶望」したり、「カナダに移民する」って言ったりしているのですが、「隠れトランプ支持者」たちは、誰が大統領になるか、というより、こういう「政治的に正しいエリート連中」たちが右往左往しているところをみて快哉を叫んでいるような気がしてなりません。
 実際、当選していちばん困るのは、トランプさん自身ではないか、という気もするんですよね。
 イギリスのEU離脱のときも、決まってみると、「離脱派」たちは次々に主張を翻したり、責任を投げ出したりしていましたから。


 個人的には、この2016年に「今世紀最大の番狂わせ」を2つ続けて(しかも、2番目はもっと大きな波!)目の当たりにしていることに、無責任ながら、ちょっと興奮してもいるのです。
 ただし、オバマ大統領が就任してもアメリカが劇的に変わらなかったところをみると、実際に政治を運営する人たちやウォール街の共和党のスポンサーたちの意向が変わらないかぎり、そんなに大きな変化は無さそうな気もします。
 勝利演説は、すでに「ふつう」な感じになっていて、大騒ぎしたい観衆は、どこで盛り上がっていいのか困惑していたみたいですし。


 アメリカでは人口に占めるヒスパニック系などの移民や移民の割合がどんどん増加してきており、民主党・共和党の二大政党も、彼らの支持を得ることを重視せざるをえない時代になってきています。
 これまでの「白人、カトリックの支持者が多い共和党」の党勢は、今後衰退すると予想されているのです。
 トランプ旋風というのは、ある意味「多数派から転落していく白人たちの最後の抵抗運動」なのかもしれません。
 トランプ大統領になっても、アメリカの将来の人口構成が大幅に変わるとは思えませんし、これは、「共和党の最後の勝利」になる可能性も十分あります。
 トランプさんが失敗したら、共和党は日本の民主党政権運営に失敗した後のような惨状に陥るのではないかと思います。
 共和党にとっては、トランプさんは「共和党に乗り込んで、その基盤を利用しているだけの人」であって、本来の共和党の政策とは相容れないところのほうが多いくらいなのですが。


 ある意味、トランプさんでも変わらなければ、もう誰がやっても一緒、だという壮大な社会実験が、いまから行なわれようとしているのです。
 まあ、日本国民としては「他人事」にしてちゃいけないんでしょうけどね。
 いまの世界では、自分たちが常に「観客」でいられる保障など、どこにもないのだから。