いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「時代錯誤な人々」の罪と罰

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この会見をみていて、「また不倫の話か……」と思うのと同時に、現在66歳の円楽さんが、こんなことを仰っていたのが気になったのです。

「落語の世界に入った時は、芸人は女性にもてなくちゃいけないという風潮だったが、時代錯誤だったな、軽く考えていたなと、深く反省しています」


これはもちろん、言い訳ではあるのですが、現在66歳の円楽さんが落語家になった時代には「女遊びも芸の肥やし」という風潮だったのも事実なんですよね。
本人はもちろん、周囲の人たちも「そういうもの」だと思っていたのです。
現在、2016年の常識からすれば、落語家だろうがロックミュージシャンだろうが元ファンキーモンキーベイビーズだろうが、「不倫は悪いこと」なのですが、彼らはそういう「世の中の多くの人が内心興味を持っている悪いこと」をやってみせる、という役割も担ってきたとも言えるんですよね。


そういう「常識」というのは、本人が時代の変化を薄々感じていても、なかなか抜けるものではないのかもしれません。
若くみえる円楽さんだって、もう66歳ですし。
僕だって、いま10代、20代の若者の「LINEでの付き合い」って、よくわからないし、今はそういう時代なのだから、わからないほうが悪い、って言われても、困ってしまう。


カープ黒田博樹投手が、著書のなかで、身内が危篤になった際に、当時のブラウン管得のはからいで、チームを離れてお父さんのところに行くことができた、という話をされていました。
これも、当時は、外国人監督だったからこそ、だったんですよね。
プロ野球選手や歌舞伎役者が、親の死に目にも会わず仕事をすることが「美談」だとされていた時代が、少なからずあったのです。


「親が死にそうでも舞台に上がってほしい」という観客はそんなにいないでしょうし、むしろ、そんなのいたたまれない、という声のほうが大きいのではないかと思うのですが。

それでも、こういうのを「使命」だと思う人は、そう簡単に絶滅はしないのです。
いやむしろ、役者側、選手側のほうが、「そういうものなのだ」と思い込んでいて、困惑している観客の前で、涙ながらにパフォーマンスを決行してしまう。


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このエントリ、僕も読んで、そうだよなあ、と考えさせられました。

その一方で、『重版出来』に感動したり、やる気になったりする自分もいるのです。
そんなの「キャリアポルノ」じゃないか、と思うし、現実的に自分がそんな働き方はできないにもかかわらず、『下町ロケット』のような「登場人物が命を削って仕事をして、何かを成し遂げる話」に、魅力を感じてしまう。


昔と今の働き方は、変わってきているのは、間違いなことなのだけれど、「ハードワークで何かを達成する物語」は、尽きることがありません。


その一方で、「何もしていないのに、主人公がモテまくるライトノベル」もあるのだけれど、僕の感覚としては、「そんなのズルい」なんですよね。


フィクションに腹を立ててもしょうがないし、フィクションのなかでくらい、そのくらい簡単でも良いはずなのにね。
人の価値観というのは、一朝一夕には変わらず、結局のところ、世代そのものが変わることによってしか、時代の価値観は変化しないのかもしれません。


高齢者は、ある意味「時代錯誤なのが当たり前」ではあるのです。
だから不倫も大目に見ようよ、というわけにはいかないだろうけど、違う常識で生きてきた人だと思うと、容赦なく断罪するのも、ちょっとためらってしまいます。


円楽師匠の不倫報道をみていて思うのは、メディアの伝え方も、「まあ、噺家さんだしね」みたいなヌルさだということなんですよね。
こういうところが、世間とメディアの温度差の源泉なのだろうか。
あるいは、メディアのほうが「世間の判断基準」の変化に敏感なのだろうか。


下町ロケット

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