この日記のスピンオフ(?)みたいな話なのですが、僕はこの『始皇帝と大兵馬俑』を観に行くにあたって、「けっこう並ぶのかな……」って予想していたんですよね。
でも、実際はチケット売り場も展示室内も、全く並びなしで、展示物の前に人がいるだけで、「もうちょっとチャッチャッとみて、前に進んでくれないかな……」とか、内心苛立っていたくらいです。
まあ、あんまり時間に余裕がなかった、というのもあるのですが。
こういうのは、基本的に時間と心に余裕があるときのほうがいいよね、うん。
壇蜜さんの音声ガイドでも聴きながらみればよかったのか。
気合いを入れて最初のほうの大昔の土器みたいなのを長い間並んで観ているうちに疲れ果て、クライマックスの展示物は「さらっと眺めるだけ」みたいになってしまう人って、けっこういるものなのです。
展覧会で「レプリカ」が出てくるたびに、「レプリカなんて観てもなあ」というのと、「でも、これに『本物』って書いてあったら、僕はそれを信じるしかないんだよなあ」とか、考えてしまいます。
「本物」を見分ける目もないのに、本物でないことを糾弾する資格があるのかどうか?
いや、見分けられないからこそ、「本物」を見せてほしい、と言うべきなのか。
まあでもほんと、微妙な特別展ではありました。
中国でわざわざこの展示のためにつくった、という「兵馬俑っぽいレプリカ」が、本当に必要だったのか、とか。
さて、いま話題の『若冲展』。
東京に行く用事もない(というか、学会などで行けなくもないのだけれど、会場に入るまでに240分待ちとかだと、学会に行ったのか若冲展に行ったのかわからなくなってしまう)ので、僕にとっては縁遠い作品展ではあるのですが、それにしても、いくらブームとはいえ、ここまでの人気を博すとは。
そもそも、240分待って中に入れても、中は大混雑なはずで、ゆっくり作品を観賞する、どころではなさそうです。
それでも観たいか、若冲展。
このエントリを読むと、「いいなあ、行ってみたいなあ」と思うんですけどね、やっぱり。
それにしても、この混雑っぷりは、おそらく、主催者側にとっても「予想以上」だったのではないでしょうか。
5月20日〜24日までの入場チケットは、会場だけでの発売になったそうですし。
展覧会の「集客力」って、ある程度予想できるところもあれば、予想がつかないところもある。
僕の人生でいちばん並んだ展覧会って、九州国立博物館の『阿修羅展』で、3時間弱くらいでした。
このときも中は大混雑で、阿修羅像の前を人々が取り囲み、係員の合図で、一定の時間ごとに停止しながら、「ハイ、回ってください!」と、ぐるぐるまわりを移動しながら観る、という状況でした。
その後、同じ九州国立博物館で、『ゴッホ展』が行われたときには、もっと混むかと思いきや、日曜日の午後で1時間半くらいの待ち時間。
平日の朝から行った『故宮博物院展』は、有名な「肉形石」が展示されているということもあってか、会場に入るまでに1時間以上かかって、ちょっとびっくりしました。
その基準でいくと、「兵馬俑」も知名度からいけば、行列しているのではないか、と予想していたのですが、平日の同じくらいの時間帯だったにもかかわらず、今回は余裕あり。
兵馬俑って、8000体くらいあるそうなので、なんとなくありがたみがわかないし……とか、対中国感情の悪化が原因なのだろうか、とか、あれこれ考えてはみたのですが。
ちなみに、こういうのって、僕が行ったタイミングとかでだいぶ変わってくるのではないかと思って調べてみたのですが、こんなデータが紹介されていました。
(ただし、2011年2月の『ゴッホ展』までのデータです)
『国宝 阿修羅展』は、会期69日で、総入場者数710,138 人。一日平均が10,292 人で、九州国立博物館歴代1位。
ちなみに『没後120年 ゴッホ展』は、会期42日で、 総入場者数354,114 人。一日平均が8,431人の歴代3位。
『故宮博物院展』は、51日間で25万6000人だったそうです。
これが、運営サイドからみれば「順調」なのか、「期待はずれ」なのかはわからないのですが、2ヵ月で10万人というのは、それなりの数ではありますね。
というか、阿修羅展がすごすぎなのか……あのブームとは、いったい何だったのか。
なぜ、阿修羅はゴッホに勝つことができたのか。
『若冲展』にしてもそうなのですが、海外の有名画家や有名博物館のコレクションの展覧会が概して「堅調」なのに対して、日本の作品の展覧会というのは「空振りも多いが、当たるとデカい」のかもしれません。
こういう「展覧会をつくる側」の人が書いた本があるのですが、このなかで、日本の太平洋戦争後の海外美術展来場者数ランキングが紹介されています。
戦後の海外美術展来場者数ランキングを見ると、上位三展とも新聞社主催の展覧会です。
1位『ツタンカーメン展』(1965年)…約293万人 朝日新聞社主催2位『ミロのヴィーナス』展(1964年)…約172万人 朝日新聞社主催
3位『バーンズ・コレクション』展(1994年)…約107万人 読売新聞社
50年前には、「ツタンカーメンの黄金のマスク」や「ミロのヴィーナス」が来日していたんですね。
それにしても、1位の293万人というのは、ものすごい数字です。
日本の人口は、今よりずっと少ない時代だったのに。
「ツタンカーメンの黄金のマスク」や「ミロのヴィーナス」に集客力があるのはよくわかるのですが、教科書でみんな知っているはずの「兵馬俑」って、もっと人が来てもいいのでは?という気もするのです。
ただ、実際に観てきた印象としては、中国史好きの僕でさえ微妙だったので、観客というのは、展覧会の「質」をけっこう的確に評価している、ということなのかもしれませんね。
ちなみに、僕の人生でいちばん記憶に残っている「並び」は、『つくば万博(1985)』で、富士通館に5時間くらい並んだことでした。
両親と一緒だったのですが、行列嫌いの父親は早々にイライラしまくり、母親がなだめすかしてくれていたのと、観終えたあとカメラを忘れてきて、けっこう怒られたのをよく覚えています。そんなところに忘れたら、盗られているにきまってるだろ、バカ!って。
スマートフォンもない時代に、あれだけの時間、よく並んだものだよなあ。
カメラは、親切な人が届けてくれていて、結局、戻ってきたんですけどね。
個人的には、こちらの企画展のほうもすごく行きたい……