いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

木村省吾選手の「残念なFA」に思う。

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広島カープからFA宣言していた木村省吾選手が、キャンプでのテストを経て、西武ライオンズへの入団決定。
カープファンとしては、年俸2000万円+出来高、という条件に、それだったらカープに残留したほうが良かったのでは……と考えずにはいられないのですが、とりあえず所属先が決まってよかった。
自ら出ていくことを選んだ選手とはいえ、このまま行き先がなくて現役引退とか、独立リーグへ、なんてことになるのは、長年お世話になったカープファンとしては、あまりにも夢見が悪い。
しかも、FA宣言後、行き先がなかなか決まらなかったにもかかわらず、カープのフロントは「もうウチには関係ない選手ですから」と、条件を変更しての再契約の意向は全く示しませんでした。
推定年俸とされていた4000万円強は、ちょっと高いな、とは思うものの、長年チームを支えてくれていた選手で、現在35歳ということを考えれば、理解はできます。
ものすごい高額年俸は出せないかわりに、年功序列、そんなに急激に給料も下げないし、いきなりクビにもしない、そういうチームなんですよね、カープって。
それだけに、今年の黒田博樹投手への年俸6億円は、かなり衝撃的ではありました。
いやまあ、黒田だから、というのはあるんだけどさ。
それこそ、「黒田の現役生活の残りの長さ」というようなことも考えてはいるのでしょう。


木村省吾選手が、カープから「レギュラー争いができるチームを求めて」FA宣言したときには、率直なところ、「え? レギュラー争い? 何の?」と思ったんですよ。
木村省吾選手は、内野ならどこでも守れるユーティリティ・プレイヤーで、バッティングもパワーはありませんが、そこそこのアベレージは残せます。足もまずまずで、ベンチではチームのムードメーカーでした。


しかし、こうして並べてみると、「どこでも」「そこそこ」「まずまず」など、木村省吾選手がレギュラーになれない理由もわかる。
菊池みたいに守備だけで銭が取れる、というほど上手くもないし(というか、菊池レベルの選手なんて他にはいないのですが)、バッティングも2割5分で、ホームランはシーズンに1本打てるかどうか。バントやエンドラン、チームバッティングなどの小技もイメージほど上手くはないのです。足も1点差の9回裏2アウトランナー1塁で代走に出されるほどのスペシャリストではない。


レギュラーのセカンド菊池、ショート田中に何かあったときのバックアップ要員としては守備・バッティングともに立派なものだと思うのですが、レギュラーとしては、ちょっと(というかかなり)物足りない。

そして、最大のネックは、年齢が35歳(今年の4月で36歳)であるこということです。
首脳陣からすれば、同じくらいの実力であれば、若い選手をレギュラーに据えたほうが、今後の見通しも立てやすくなります。
まだ20代半ばの田中と30代後半にさしかかっている木村省吾を同じ条件で競争させて、木村省吾がレギュラーになったとしても、年齢的に、数年のうちには、次のレギュラーを探さなければなりません。
バックアップ要員としても、木村省吾がいなくなると、今のカープでまともにショートを守れる(であろう)選手は、田中以外には、もともとショートだった菊池(でも、菊池がショートをやると、セカンドに菊池がいなくなる、という大きな問題があります)くらいのものです。梵は足の状態的にショートは厳しい(というか、サードもかなりつらそう)、あとは上本、小窪……うーむ。
やっぱり、いないと困るんじゃないかな、木村省吾。
ただ、いつまでもバックアップが木村省吾では、若手が実戦経験を積めず、育たないというのも事実です。
フロントが引き留めに躍起にならなかったのも、「いなくなると短期的にはマイナスだが、長期的なチーム編成を考えると、これを機に若手にチャンスを与えていこう」という方針となったようです。


まあでも、カープのフロントは「FAしたヤツのことなんて、もう知らん!」と言いながらも、宣言する前は「本当に宣言するのか?手をあげてくれる相手がいるのか?」と心配していたようです。
FA宣言した当初は「35歳と高齢とはいえ、使い勝手の良いユーティリティプレイヤーだし、年俸も4000万円とFA選手としてはリーズナブルだから、まあ、どこか手をあげるんじゃない?」と僕も思っていたんですけどね。
ところが、どの球団からも、木村省吾選手へのオファーが来ないのです。
ネット上では、人的補償が必要な「各球団の年俸10位以内=Bクラス」ではないか、という憶測も流れていました。
そりゃあ、35歳のバックアップ要員を獲得するために補償選手を取られるのは、どのチームも二の足を踏みますよね。
実際は、年俸がチーム内11位で、補償選手不要のCクラスだったみたいですけど。
まあ、Bクラスだとわかっていたら、FAしないよねさすがに……
Cクラスだったのは、黒田投手の予想外の復帰の影響でもありました。


この記事によると、木村省吾選手は、とにかく「レギュラーを獲りたい、公平な競争の場に身を置きたい」という気持ちが強くて、年俸が下がり、テスト入団でも、西武入りを喜んでいるようです。

振られた立場ではありますが、カープファンとしては、応援したくなる選手ではあるんですよね。
野村監督最終年の2014年の101試合出場、253打席から、緒方監督初年度の2015年は72試合出場、109打席と出番が激減したこともあり、今後出場機会がさらに減っていって、来年オフくらいに戦力外……というムードではありましたし。
そのあたりも考えた末の「環境を変えて勝負したい」ではあったんでしょうね。
とはいえ、ここまで行き先探しに苦戦するとは、本人にとっても想定外だったはず。
自由契約を求めたのではなくて、FA宣言したということは、それなりの「需要」はあると考えていたのではないかと。


中年・中間管理職の僕としては、今回の木村省吾選手のFAについては、いろいろと考えさせられるところがありました。
僕がカープファンだから、というバイアスはあるかもしれませんが、正直、いくら本人が「日々進化している」「レギュラーを獲りたい」とアピールしたところで(そして、本人はそれが可能だと信じていたとしても)、年齢とこれまでの実績、能力を考えると、バックアップ要員としての「便利屋」なら貴重な存在でも、レギュラーで使うこと前提で獲得するチームがいるとは思えません。


本人としては、自分の能力にそれなりの自信があるのでしょうし、たしかに、「いい選手」なんですよ、木村省吾さんって。
ベンチに一人こういう選手がいてくれると、本当にありがたい。


でも、こういう「いろんなことができるんだけど、この人しかできないことがあるわけじゃない」っていう人って、組織にとっては、評価されにくいものなのかな、とも痛感しました。
自分の側からは「自分はこんなこともできるし、普段から組織に地味にでも貢献している。よそからも評価されているはず」だと思い込んでいるけれど、周囲からは「まあ、代わりはいるし」くらいの存在。
その人が若手ならともかく、中堅で扱いづらかったり、ちょっと給料が高かったりするのなら、なおさら、「自負心と客観的な評価とのギャップ」は大きくなりやすいのかもしれません。


「木村省吾さんも、なんでこんな茨の道を選んだのだろう?自分のことを客観的にみることができていなかったのかな……」なんて思ってしまうのだけれど、それってたぶん、僕の自己評価と他者からの評価との解離と一緒なんですよね。
年齢が高いというだけでも、市場価値はかなり下がってしまう。
黒田博樹さんみたいな人は、ごくごくひとにぎりしかいない。
そして、木村省吾さんは、今回、そのギャップを思い知らされながらも、自分で自分の道を切り開こうとしている。
ああ、なんとかがんばって、「挑戦してみてよかった」と思ってほしいなあ。
ほんと、キャリアの終わりが見えてきたときの身の振り方って、難しいですよね……


まあでも、ひとりのカープファンとしては、木村省吾選手のFAがルナ選手獲得を進めることになったのか、と思うと、それはそれで悪くもなかったのかな、という気もしているんですよね、ゲンキンなものです。