いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

ゴールドシップと僕の4年半の航海


ゴールドシップ、これが引退レースか……
大きな怪我もなく、4年あまりも走りつづけたゴールドシップ
僕にとっては、大変思い出深い馬です。


この馬が3歳春、圧倒的人気のディープブリランテ(のちのダービー馬)に共同通信杯で勝ったとき、僕はWIN5でリーチをかけていて、ブリランテとゴールドシップの「二面待ち」でした。
なんとか当ってくれ、ブリランテで十分だから!という気分だったのですが、ゴールドシップが先行して押し切る強い競馬で快勝。WIN5の配当も跳ねてくれて、僕にとっては人生最高額の払い戻しになりました。
しかし、このレースを観てしまったことが「前に行ければ、東京競馬場でも勝負になるんじゃないか幻想」を、のちのちまで持ち続ける原因になったとも言えます。


その後、皐月賞では、他の馬が中山の直線の荒れた内を避けて外に進路をとるなかで、一頭内をついて快勝!強い、4番人気で、距離不足とか小回りは不向きとか(この時期には)言われていたのに、なんて強いんだゴールドシップ
その後をみると、経済コースを通れたのと、力の要る馬場が滅法得意だったので結果的に圧勝になった、ということみたいですけど。


ワールドエースに次ぐ二番人気となったダービーでは、伸びそうで伸びきれずに、5着。
優勝ディープブリランテ、わずかな差で2着フェノーメノ
夏を越して菊花賞は、デュープブリランテ、ワールドエースが怪我で戦列を離れ、フェノーメノも距離不適ということで秋の天皇賞へ(フェノーメノはこちらでまた2着)。
ほとんど空き巣のようになった菊花賞で、早めの捲りからの圧勝だったのですが、「このメンバーにしては、けっこう苦戦したなあ」とも思ったんですよね。
人気で勝つ、というのは難しい世界ではあるのだけれども。
余勢をかって、年末の有馬記念もロングスパートから捲りきっての快勝。
このレースは場外馬券売り場で観ていたのですが、2着に内からスルスルと人気薄のオーシャンブルーが入線し、場内はオッサンたちの溜め息で満たされたのをよく覚えています。
僕は前日に『競馬予想TV』を観ていたのと外国人騎手買いで、オーシャンブルーも押さえていて、このときは良い思いをさせてもらったんですよね。


明けて4歳。G1を3勝し、同じステイゴールド産駒のオルフェーヴルとともに競馬界を引っ張る存在となるはずだったゴールドシップ
阪神大賞典を圧勝し、得意の長距離、春の天皇賞へ!


このレース、ゴールドシップ軸の馬券をけっこう買っていたのですが、「ゴールドシップが2着を外すことはまずあるまい」と思っていたんですよね。
あと、菊花賞から逃げたフェノーメノが3200mの春の天皇賞で来るわけないだろ、とも。
当日、家族で出かけていて、夜、じゃあ、ゴールドシップの圧勝劇を観て寝るかな、と思いつつ再生して、愕然としました。
終わってみれば、ゴールドシップは直線伸び切れず、フェノーメノトーセンラーでの決着。
トーセンラーって、後にマイルチャンピオンシップ勝ってるんですよ。
いくら京都が得意だからって……3200でも来るのか(菊花賞でも3着だったのですが)。
これ以来、どんなに軸馬に自信があっても、「タテ目」を一つはおさえるようにしています。


続く宝塚記念
春の天皇賞の結果はあまりにもショックだったのですが、阪神の力の要る馬場なら、ゴールドシップが巻き返すはず、と思ったものの、本当にお金がなくて、なんとか的中したかった。
そこで、ゴールドシップフェノーメノのワイドという弱虫馬券で勝負です。
ジェンティルドンナは強いけど、休み明けだし、これが割り込んできても、ゴールドシップフェノーメノの3着以内は堅いだろ。


……堅くなーーーーーい!!!


ゴールドシップは予想以上の圧勝だったものの、逃げたダノンバラードが2着に粘り、フェノーメノは、まあ3着には入れそうだな、という手応えで直線を向き、ジェンティルドンナを差せそう、でも差せない、何それ、の4着。
がっくり。


また夏を越して、4歳秋。競争馬にとってはピークに達するといわれる時期がやってきました。
秋の京都大賞典春の天皇賞は勝てなかったけど、相手もたいしたことないし、ここはまあ、ゴールドシップでしょうがな……くない……


1着ヒットザターゲット、2着アンコイルドで馬連9万円! ゴールドシップ単勝1.2倍だったものなあ。
どうもこのレースくらいから、ゴールドシップの「希代のムラ馬」としての素質が開花してきたようです。
続くジャパンカップはスローの決め手勝負という展開にも泣かされ、2番人気の15着。
あまりの惨敗に、主戦の内田博幸騎手から、次の有馬記念ではムーア騎手に乗り替わりとなりました。
ムーアは押して押して、という感じでがんばって走らせようとしましたし、コース適性もあったのか、引退レースで圧勝したオルフェーブルと、ウインバリアシオンに続く3着とまずまずの結果でした(2番人気だったけど)。


かなり冗長なので、ちょっと端折っていくと、5歳時は得意の阪神大賞典宝塚記念で圧勝し、年末の有馬記念では最後に追い込んできたものの3着まで。
時計のかかる札幌記念では、斤量が軽かったハープスターの2着とそこそこ力は見せました。
その一方で、春の天皇賞はウイリアムズを配したものの2番人気7着と、人気だったにもかかわらず、どこ走ってたんだろう状態。
この年のゴールドシップの成績をあらためて眺めてみると、春の天皇賞凱旋門賞で惨敗した以外は、4戦して2勝、2着1回、3着1回なんですね。


こうして振り返ってみると、5歳までのゴールドシップって、人間側が向かない条件で過剰人気に祭り上げたレースで「人気を裏切った」だけで、適した条件では、ちゃんと仕事をしていた、とも言えます。
要するに、阪神と中山では買いで、東京と京都では買わなきゃいいんだろ、って。


ところが、6歳になって、白さを増したゴールドシップは、さらに「よくわからない馬」になっていったのです。
いまさら暗黒面に堕ちてどうするんだよ……
血統的なものと、スピード面で不安視されたためか、一流馬であれば引退していてもおかしくない6歳まで走らされたことも、不運だったのかもしれません。


中山のAJCC杯。
いやさすがに中山だし、年明け早々で手薄なG2のメンバーだし、ここは勝つだろ、賞金稼ぎに来たのかな、と思いきや……三連単1着固定で手広く流していた僕としては、空いた口が塞がらないレースでした。
2200mは、短いのか? でも、宝塚記念は強いよね、なんで?


衰えたのか?と思わせながらも阪神大賞典では強いところを見せて、このレースを三連覇。
そして、次走は、どうするんだ春の天皇賞……このレースは、どうみても「鬼門」だと思うのだが……
横山典弘騎手の進言もあって、答えは「出走」でした。
だから、京都は向かないって、この2年のレースを忘れたのかよ、二番人気だって? みんな鳥頭だねえ。
また掲示板ギリギリくらいだよどうせ。


えっ、これ、カレンミロティック?うわっ、ゴールドシップ来た!待て待てこれ京都だよ?キズナは伸びない、サウンドオブアースもアドマイヤデウスもどこにいるの? うわーダメだこりゃ、うん?なんかすごい脚でフェイムゲーム!でも1着はゴールドシップ、ぎえーーーーっ!なぜ今年は来たんだ……


なんのかんの言って、キズナフェイムゲームが同枠だったので、枠連で当てて、ちょっとだけプラスだったんですけどね。
キズナフェイムゲームがいる枠を軸にして、ゴールドシップは魔除けのつもりで勝っていたら(買わないと来そうな気がしたので)、魔除け+代用での的中でした。
まあ、そういうのは悔しい、ということもなく、単純に嬉しくはあったのですけど。


で、あの2015年の宝塚記念になるわけです。
JRA史上初の同一G1三連覇がかかったこのレース。
相手はそんなに強くなさそうだし、ちょっと時計がかかる馬場状態もゴールドシップ向き。
普通はイヤな外枠からの発走も、ゴールドシップの場合は「外枠慣れ」しているし、包まれて嫌気がさすよりは好都合、のはずだったのです。


fujipon.hatenablog.com


勝てないはずの京都の春の天皇賞に勝ち、「不安材料がないのが不安」にみえた宝塚記念で、世紀の大出遅れをぶちかましたゴールドシップ
こうしてその道のりを辿ってみると、ムラ馬っぷりがどんどん酷くなっている感じです。
もともとゲートが良くないのは百も承知だけれど、この宝塚記念は、あまりに酷すぎて、みんな笑っていたものなあ。
怒るっていうより、「お前を信じきって馬券を買った俺もバカだが、お前もここまでやるか!」という、妙な共犯関係みたいなものが、そこにはあったのです。


この秋の初戦、ジャパンカップでは、(ゴールドシップとしては)なかなか良いスタートを決め、直線では早めに捲りにいったものの勝ち負けには加われない10着。
とはいえ、着差はわずかでしたし、上がりに時計がかかる、得意の中山なら、とも思われました。


そして、ついに引退の有馬記念


この馬の長年のパートナーであり、有馬記念も一緒に勝ったことがある内田博幸騎手とのコンビ復活というのも、心強い、というわけではないけれど(やっぱり久々なので……そのつもりだったら、ジャパンカップから内田でいってほしかった……)、「有馬記念的なドラマ」を予感させるものがあります。
オルフェーヴルジェンティルドンナと、名馬が引退レースで勝ってきている有馬記念ですし。
やたらと外枠ばかり引く馬で、今回も8枠15番。まあ、それもゴールドシップらしいかな、と。
下手に内枠を引かれると、かえって悩ましい馬なんですよね。
内で包まれたりすると、やる気をなくしそうだし。


ほんと、この馬には何度も泣かされ、そして、喜ばされてきたんですよね。
「人の心が読める馬」って言うけれど、実は、ゴールドシップはずっとゴールドシップで、人間側のほうがあれこれと思いを巡らせすぎて、信じて裏切られたり、軽視して失敗したりしてきた。
今年のジャパンカップ単勝2番人気なんて、休み明けだし東京だし、あの出遅れの後だし、なんでこんなに人気があるんだ?と謎でした。
でもさ、結局みんな、ゴールドシップが大好き、なんだよね。
出遅れや脚質に伴うリスクと配当を考えたら、どう考えても「過剰人気で、あまり買うメリットはなさそうな馬」だもの。
しかしこれほど、「買うと来ないし、買わないと来そうな馬」って、いないよなあ。
みんなが「感動のラストラン」を期待しているところに、また大出遅れで終了、とかもありそうだし、それはそれで「やっぱりゴールドシップ!」ではある。


馬券的には実に悩ましいかぎりですが、とりあえず無事にゴールしてくれることを願っています。
というか、ゴールドシップ様、とにかくちゃんとゲートを出てください、頼みます。本当にこれで最後だから。