いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

あまり本を読まない中学生・高校生が、夏休みに何か一つ小説を読んでみようと思ったときにお薦めしたい厳選10作

timeisbunny.hatenablog.com
anond.hatelabo.jp
gathery.recruit-lifestyle.co.jp



これらのエントリをみて、「こういうの、面白そうだな」と思ったんですよ。
僕は自分がずっと「本好き」だったので、正直なところ、「本が好きな人の視点」でしか、読めていないし、紹介もできていないのではなかろうか(というか、たぶんそうです)。
そもそも、本の感想をブログに書こうなんて人は、本好きで感想を他者と共有したいか、アフィリエイトで稼ぎたいか、あるいはその両方か、なので、「本を読むのがあまり得意ではないけれど、何か読んでみたいな、と思っている人」には、敷居が高くなりすぎているのかもしれない。


そこで、今回は、僕なりに自分が中高生に戻ったつもりで、「あまり本を読まない中高生が、夏休みに何か一つ小説を読んでみようと思ったときにお薦めしたい厳選10作」を紹介してみました。
いちおう、基準としては、「小説」であることと、あまり長くないこと、比較的入手しやすいこと、そして、読みやすくて、面白いこと、です。
とくに「読みやすくて、面白い」ことを重視して選んでみました。
ちなみに、すごくベタというか、ありきたりのリストなので、本マニアの人は「何これ?」と思われるかもしれませんが、それでいいです。


(1)ガダラの豚

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚 I (集英社文庫)

ガダラの豚 I (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。


 全三巻、と聞くと長そうなのですが、読んでいると本当に時間を忘れます。
 この作品の凄さっていうのは、「物語の世界」に身構えて入っていくのではなくて、「友達の面白いうわさ話」みたいなのに耳を傾けているつもりが、いつのまにか引き込まれてしまっていることなんですよね。
 中島らもさんが書く「会話」の妙も味わえます。
 


(2)遠き落日

遠き落日(上) (講談社文庫)

遠き落日(上) (講談社文庫)

遠き落日(下) (講談社文庫)

遠き落日(下) (講談社文庫)

内容紹介
自堕落にして借金魔。しかし、その一方で、寝食を忘れるほど研究に没頭し、貧農の倅という出自の壁、火傷によって不自由となった左手のハンディ、日本人に対する西洋人の蔑視を撥ね除けた。偉人伝の陰で長く封印されていた野口英世の生身の姿を、見事に甦らせた傑作伝記長編。第十四回吉川英治文学賞受賞作品。


 僕が小学生だった頃、野口英世の「親孝行エピソード」が教科書に載せられており、「ザ・苦労人」「ミスター偉人」みたいな扱いだったのです。医者だった僕の父親は「野口英世の伝記を読んで、医者を志した」と言っておりました。
 ところがところが、あの渡辺淳一さんが丁寧に掘り起こした、「偉人・野口英世」の実像の、なんと「人間的」なこと!飲む打つ買うの三冠王!でも、研究にも人並み外れた集中力で没頭!顕微鏡を5分覗いていると酔う僕には信じられない世界です。
 しかし、僕の父親は、「リアル野口英世」の「人間的な面」ばかり参考にしていたような気がするな……



(3)そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。新訳決定版。


 いまさら「少年探偵団」「ホームズ」でもないし、新本格とかは敷居が高すぎる、という「ミステリ初心者」のあなた。「孤島に集められた10人の男女が次々と殺されていき、最後は『誰もいなくなって』しまう」。いやいやいや、「誰もいなくなる」って、最後の人は自殺しちゃうの? ……とか思った人は、一度読んでみて損はしません。なんのかんのいっても、物語の骨組みの面白さ、みたいなものが詰まったミステリです。



(4)旅のラゴス

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。


 高校時代、家のトイレで読み始めたら、読み終えるまでトイレを出られなくなってしまった、という傑作。筒井作品のなかで僕がはじめて読んだのが『48億の妄想』で、「こんなすごいことを書いている小説家がいるのか!」と驚き、それがすでに20年前の作品であることにまた驚きました。
 中高生向きなら、『霊長類、南へ』と、どっちにしようか、と思ったのですが(こちらのほうが「筒井康隆らしい」かもしれない)、「核戦争で人類が滅亡するのではないか」という危機意識って、たぶんいまの若者にはリアルじゃないと思うので、やや敷居は高いかもしれないけれど、ハマる人はハマる、こちらにしました。
 好きな人は、読み終えるとしばらく「ラゴス化」してしまうかも。



(5)聖の青春

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

内容紹介
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作(講談社文庫)

 ここまで書いてきて、どうも僕は「ものすごい能力を持っていて、ものすごく変なひと」が大好きなのだな、ということを実感しています。
 壮絶な生きざま、ではあるのだけれど、なんだかコミカルでもあり。
 将棋に興味がない人でも、問題なく読めます、というか、将棋に興味がない人が読むと、将棋に興味がわいてくるのではなかろうか。
 なんであんなゲームに、って思うけど、あんな「ゲーム」だからこそ、人はすべてを賭けてしまうのではなかろうか。



(6)一瞬の風になれ

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

商品説明
あさのあつこの『バッテリー』、森絵都の『DIVE!』と並び称される、極上の青春スポーツ小説。
主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。


「部活で汗を流して活躍し、異性と仲良くなる自分」というのは、僕のなかではまさに「実現されることがなかった夢」みたいなもので、「ケッ、世の中みんなインターハイに出場してたら、苦労しねえよ!」とぼやきたくもなるのですが、この作品に関しては「体育会系の部活の選手って、こういうふうにトレーニングをして、記録が伸びたり伸び悩んだりするんだなあ」と、なんだか「参考になった感」がありました。
僕の知らない、実感することができなかった世界を垣間見せてくれた名作。



(7)夏への扉

夏への扉[新訳版]

夏への扉[新訳版]

夏への扉

夏への扉

内容(「BOOK」データベースより)
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。


 ほんと「永遠の名作」ですよねこれ。
 僕が子どもの頃から「読みやすくて読後感がさわやかなSF」として知られており、僕も読み終えて、清々しい気分になりました。まあ、ある意味勧善懲悪的ではあるのだけれども。
 今となっては、さすがに「古さ」は否めないところもあるのですが、それでもやっぱり面白い。
 これとか『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んで、「おお、SF難しくないじゃん!」って調子に乗って、『星を継ぐもの』で、J.P.ホーガンにアックスボンバーを食らい、「全然……ページが……進まん……」と悶絶したのも懐かしい。



(8)武士道シックスティーン

武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン: 1

武士道シックスティーン: 1

内容(「BOOK」データベースより)
「ようするにチャンバラダンスなんだよ、お前の剣道は」剣道エリート、剛の香織。「兵法がどうたらこうたら。時代錯誤もいいとこだっつーの」日舞から転身、柔の早苗。相反するふたりが出会った―。さあ、始めよう。わたしたちの戦いを。わたしたちの時代を。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、正面打ち一本。


 なんでこんなマンガチックなスポーツ小説が売れてるんだ?
 ……すみません、僕もけっこうハマってしまいました。
 努力、友情、勝利!
 いやほんと、「読みやすくて面白い」という条件を過不足なく満たしてくれる青春スポーツ小説です。



(9)壬生義士伝

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)


壬生義士伝(上)

壬生義士伝(上)

壬生義士伝(下)

壬生義士伝(下)

内容(「BOOK」データベースより)
小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。

 僕はこの本をバスの中で読んでいて、涙が止まらなくなったことをいまでも覚えています。
 浅田次郎さんの小説といえば『蒼穹の昴』が僕のベストなのですが、そちらはちょっと中国史的な予備知識が要るので、
 この『壬生義士伝』、映画化もされていますが、渡辺謙さん主演でテレビドラマ化されたものも良かった。



(10)麻雀放浪記

麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)

麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
終戦直後、焼け野原の上野のドヤ街で「ドサ健」と出会い、一気に博打にのめりこんだ主人公の「坊や哲」。チンチロリンや麻雀の技、いかさまの腕を磨いた哲が「出目徳」や「女衒の達」「上州虎」ら仕事師と渡り合い、生き残りをかけて激闘する阿佐田哲也ピカレスクロマンの最高傑作。


極上のギャンブル小説であり、人間ドラマ……なんていうと高尚な感じになってしまいますが、「どうしようもない人間たちが、自分のどうしようもなさを受け入れて、束の間の勝利と破滅のスキマを突っ走っていく話」です。
僕は麻雀のルールに詳しくないのですが、それでも面白かった。


以上、思いついた10作をあげてみました。
ちなみに、読書感想文の対象にしたい、というのであれば『聖の青春』『一瞬の風になれ』あたりなら、比較的書きやすいのではないかと。
ガダラの豚』とか『麻雀放浪記』の場合は「先生に喜ばれるような読書感想文を書きようのない面白さ」なんですけどね。
まあ、実際は、こういう本のほうが好き、っていう先生も多いのかもしれないけれども。


万人向けではないかもしれませんが、よかったら、どれか一冊でも、手にとってみてください。
楽しい夏休みを!