いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

ゴールドシップと「信じる」ということ

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「あはは、やっぱりゴールドシップだな!」
ゲートが開いて、ゴールドシップが立ち上がった瞬間、ジャック・ルイ・ダヴィッドの 『サン=ベルナール山からアルプスを越えるボナパルト』みたいだな、と思いながら、僕はちょっとにやけてしまいました。
今日はえらくおとなしいと思ったら、ここでやらかしてきたか、ゴールドシップ……
僕が勝った馬券の大部分が、紙くずになった瞬間、だったんですけどね(実際にはネット投票なので、紙くずにはなりませんが、ハズレがほぼ確定したのは間違いありません)。
G1のスタートで2秒出遅れたら、話にならんよ。
ちなみに、宝塚記念の売上190億円のうち、120億円くらいが、ゴールドシップ絡みの馬券だったそうです。
よく暴動とか起こらなかったな。


かなりがっかりしつつも、ラブリーデイからゴールドシップ以外の馬券もおさえていたので、「もしかしたら、これで高配当来るかも!」とか、ちょっと期待していたものの、最後の直線で、ものすごい脚で突っ込んできたデニムアンドルビーに「お前、余計なことするなよ……」と、二段がっかり、という春のG1の締めくくりでありました。
ラブリーデイからの馬券は、ラキシスヌーヴォレコルトレッドデイヴィスの6枠、カレンミロティックしか持っておらず、2着3着4着まで抜けており、結局のところ、デニムアンドルビーが来なかったとしても、いかんともしようがなかったのですけどね。
これはもう、あきらめるしかない。なんとなく、赤い帽子が来そうな気がしていたんだけどなあ。人気が黒田の15番のゴールドシップだし、カープの赤との組み合わせで……って、枠連3-8も考えたんですよ本当に。でも配当安かったんだよ枠連だとさ。当たんなきゃどうしようもないけど。


それにつけても、ゴールドシップ
正直、今回の宝塚記念に関しては、「あまりにうまくいきすぎているのが不安」なくらいだったんですよ。
宝塚記念は2連覇中で、阪神コースは7戦6勝、2着1回という準パーフェクトな成績。枠順も前2年と同じ、大外から2番目、という実績を残してきた外枠。スピード決着になると分が悪いか、と思いきや、いい感じに雨が降って、良馬場発表でも時計がかかる馬場状態。調教の動きも良いし、パドックでも落ち着いていた、春の天皇賞で好騎乗をみせた横山典弘騎手との相性もよさそう。
まさに「ゴールドシップさん、どうぞ史上初の同一G1・三連覇してやってください!」と言わんばかりの舞台設定でした。
ただ、長年この馬をみてきた僕からすると、「あまりにもうまくいきすぎていることに、一抹の不安があった」のも事実です。
そういうときに「やらかす」馬なんだ。


逆にいえば、そのくらい、不安材料に乏しかった。
あえていえば、ゲートに先入れになることと、これまで同一G1三連覇を成し遂げた馬がいない、ということくらい。


でも、馬券を買うとなると、この条件では本命にせざるをえない……


いやあ、ほんと、大損ぶっこいたにもかかわらず、スタートでゴールドシップが立ち上がったとき、僕は失笑してしまったんですよ。
そして、次の瞬間、憮然としました。
あまりスタートが良いとはいえない馬なので、多少は出遅れることは覚悟していたのだけれど(だからこそ、2倍弱くらい単勝がついていたわけで)、即レース終了レベルの出遅れは初めてだったのだよなあ。
ただ、「なんで出遅れやがった!」というゴールドシップへの憎しみよりは、「こういう馬だってわかってたはずのに、なんで信じちゃったのかなあ……」と、サークラに引っかかってしまった男子学生のような、心境になったんですよね。
実際にサークラに引っかかったことはないけど。
なぜ、人は同じ過ちを繰り返すのか。


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今年の緒戦のAJCCで、中山2200mの条件なら確勝級だし、あとはどの馬が来るかわからないから、とゴールドシップ1着の3連単総流しで派手に爆死し、この馬の気まぐれっぷりを思い知ったはずなのに。
春の天皇賞は、京都でゴールドシップが来るわけないだろ!と思いつつも、魔除けのつもりでキズナがいる枠との枠連を購入したら、ゴールドシップが勝って、キズナと同枠のフェイムゲームが最後に追い込んできて的中、という幸運に恵まれました。
基本的に、ゴールドシップが出るレースって、これまで、けっこう相性は良かったんですよね。
去年の宝塚記念馬連で当てているし、有馬記念ではオーシャンブルーとの馬連で餅代を稼がせてもらったこともあります。
昨年の有馬記念では、勝ったジェンティルドンナは1円も買っていないにもかかわらず、ゴールドシップトゥザワールドのワイドでなんとか大負けしなくて済んだ、という恩もあり。


まあでもほんと、最近のゴールドシップはとくに「これは勝てるだろ」というレースになると、逆噴射してしまうので、アテにはしていない、つもりだったんですよ。
少なくとも単勝2倍以下とかで、買うような馬じゃないだろう、と。
それこそ、今年のはじめに、AJCCで思い知らされたはずなのに。


ところが、人っていうのは、案外、すぐに信じちゃうものなんですね。
というか、信じたいものを信じる。
阪神大賞典春の天皇賞と2連勝し、苦手の京都競馬場でも勝った。
それなら、得意の阪神宝塚記念なら、もう鉄板だろう、と。
馬の気性が成長したんじゃないか、横山典弘騎手は、なんらかの「極意」を掴んだのではないか……
あの春の天皇賞が「たまたまうまくいっただけ」ではないか?と疑わなくなってしまう。


昔、人気薄になると走る「新聞を読む馬(人気になると裏切り、人気薄になると好走する)」カブトシローというのがいたのですが(残念ながら、僕がリアルタイムで見た馬ではありません)、ゴールドシップは、まさにその再来とでも言うべきか。
新聞を読めるんだったら、人気になっているときに走ってくれよ……と言いたいところですが。


いやほんと、人って、信じたいものを信じるし、過去の苦い経験やこれまでの蓄積を、ほんの一度や二度の「新しい記憶」ですぐに塗り替えて、「このあいだ、偶然うまくいったこと」が、「必然的に起こったこと」のように、勘違いしてしまう。
一度「信じるほう」に傾くと、「自分にとって都合の良い材料」ばかりを重視し、「不安材料」は、「それは昔の話だから」「たまたまうまくいかなかっただけ」と軽視してしまう。
終わってからあらためて考えると、愚の骨頂、という話ですし、そもそも、競馬に絶対はない、というのはこれまで僕が何度も味わってきた経験則のはずなのに。


逆にいえば、この大出遅れでゴールドシップの人気が落ちてしまえば「買い」の可能性もあるわけです。
ファンが多いし、「買わないと来そうな馬(そして、実際に時々来るから困るんだよ……)」なので、そんなに人気が落ちることもないかもしれませんが。


本当に、いろいろと「思い知らされた」悪夢の数秒間でした。
ドリームレースというか、バッドドリームレースだよねこれ。


寺山修司曰く
「賭博には、人生では決して味わえぬ敗北の味がある」


いやほんと、こうしてネタにできるのもゴールドシップが馬で、失ったものがお金だけ(といっても、それなりの金額だけど)だから、なんですよ。


まあ、この話でもっとも重要な教訓は、「ギャンブルをやるなら、外れた翌日にブログに恨みつらみを書かなくても気が済むくらいの金額にしておけ」ということなんですけどね。嗚呼!

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