いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

赤羽の立ち飲みおでん屋の『ドキュメント72時間』

参考リンク:赤羽・おでん屋エレジー(ドキュメント72時間-NHK(2/20放送)
ドキュメント72時間 - NHK


NHKの『ドキュメント72時間」という番組を、ご存知でしょうか?
金曜日の夜に放送されている、さまざまな「人が集る場所」にカメラを据えて、3日間定点観測をして、そこに出入りする人の動きを見ていく、という番組です。
25分間と、ちょっとした隙間時間に観ることができる長さと、出てくる人々をずっと人間ドラマとして追いかけ回すのではなくて、あくまでも、「その場所にいる一瞬」を切り取ってみせる、というコンセプト。


僕はこの番組が好きで、よく観ているのですが、2月20日は「赤羽の立ち飲みのおでん家」の回でした。
僕自身は「立ち飲み」というのは未体験で、せっかくの食事やお酒を、そんなふうにせわしなく消費するのは、なんだかさびしい、と考えていたんですよね。
どんな人が、どんなシチュエーションで、このおでん屋を利用するのか?


もちろん、72時間の大部分は、『ゲームセンターCX』の有野課長がゲームオーバーになり続けている時間帯のように、「お客がいないか、普通のお客さんがおでんを食べているだけの、ノーマルタイム」なのでしょうけど。


おでん5種にお酒がついて、800円の「おまかせセット」が、この店の一番人気。


この番組のなかに、医療関係事務をやっているという44歳の女性が出ていたのです。
賑やかがグループの脇で、ひとり静かにおでんを食べている女性。
親の体調が悪いから、という理由で埼玉の実家に行き、自宅に戻る途中で、「まっすぐ帰りたくなくて、つい、途中下車して」彼女はこのおでん家に立ち寄ります。
おでんと、お酒を一杯。
20分くらいの滞在時間。


「何も考えずに楽しく飲めたし、おいしかったし、良かったです。
彼女は、おでん屋のカウンターの前に立ち、「ひとりで」おでんを食べ、お酒を飲んでいました。
「いつも考え込んじゃったりするんですけど、家飲みすると。家でひとりでいるのと、人がいる中で考えるのって、ちょっと違うので。ザワザワ感とかも、いいかもしれないですね」


僕はこの場面をみながら、「ひとりにも、いろんなひとりがあるんだよなあ……」と、しみじみと考えていたのです。
「ひとりでおでんを食べ、お酒を飲む」としても、家でそうしているのと、こうして、雑踏のなかで、足を止めて、周囲に人の気配を感じているのとでは、やっぱり、違う。
彼女は、ひとりになりたくて、でも、ひとりになりたくはなかった。
ほんの、20分だけ。
でも、20分だから、良いんですよね、こういうのって。


警備の仕事をしているという、夜勤明けの男性は、お酒におでんのダシを入れて飲むというこの店の名物「ダシ割り」を「身体がすごく温まるんだよ」と言いながら飲んでいました。
(正直、僕にはあまり美味しそうには見えなかったのだけれども)
「24時間勤務で、朝帰ってくるんです。寝不足状態なので、効くのは効くんですよ。座って飲むと、もう立てなくなっちゃう」
この男性は、ここで2杯だけ飲んで帰り、何も考えずに眠ってしまうのが日課なのだそうです。


うまく言葉にできないのですが、なんだか、僕にとっても「沁みる」番組でした。
世の中には、いろんな孤独があって、そして、孤独のようにみえる繋がり、みたいなものもあるのですね。



ちなみに、この番組、2015年2月23日と、27日に再放送されるようです。
再放送予定 - ドキュメント72時間 - NHK

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