いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「議会でのヤジ」と「飲み会、給湯室での異性の値踏みトーク」

2014年6月18日の東京都議会本会議で、みんなの党塩村文夏(あやか)議員が女性蔑視のヤジを浴びせられたことが、大きな問題となっています。


ちなみにそのヤジの内容は、こういうものでした。
参考リンク:“セクハラヤジ”はどのような質問の最中に起きたのか―塩村あやか都議・一般質問書き起こし(BLOGOS編集部)


「そんなことを言う前に、おまえが早く結婚しないのかっ!!」


これはひどい……
僕は、ヤジっていうのが大嫌いなんですよ。
下品なヤジも嫌いなんだけれど、そういうヤジを飛ばしている人が「ヤジ将軍」とか言って、愛すべきキャラクターのように報じられることがあるのも不快でした。
酔っぱらいのオッサンが男同士の飲み会で、「だからアイツは結婚できねえんだよ!」と、その場にいない部下の若い女性を値踏みしてるんじゃないんだからさ。
公の場、議会ですよ議会、税金泥棒!


……とか書いた時点で、ちょっとハッとしてしまったわけです。
じゃあ、僕にはこういうことを偉そうに書いて、あのヤジ議員を弾劾する資格があるのか?と。
さっきちょっと書きましたが、あの手の「だからアイツは結婚できねえんだ!」というような「異性に対しての、セクハラ発言」って、「仕事帰りの飲み会での会話」では、けっして珍しいものではありません。
僕自身は、自分からそういうことを口にはしませんが(それこそ、僕自身が「結婚できそうもなかった人間」なので、他人のことをあれこれ言うのってイヤなんですよ。僕だって言われてイヤだったから)、そういう会話になったときには、「ええ、まあ……」とか言葉を濁しながら、生ビールを口に運んで嵐が過ぎ去るのを待つ、という感じです。
その時間は不快ではあるのですが、「そんなこと言うもんじゃありませんよ、セクハラですよ!」と発言者に強く指摘する勇気もないんです。
それで周りから嫌われたくもないなあ、って。
そういう同性が集まる閉鎖的な状況では「共通の知人を話題にする」ことは一般的ですし、ちょっとお酒が入っていると「値踏み」するような会話になることもあるのです。


「プライベートな空間での、異性を値踏みする会話」って、男性特有のものじゃないですよね、きっと。
僕自身がそこに入り込むことはできないので、知り合いの女性に聞いたり、本で読んだりドラマで観たりした伝聞ではあるのですが、女性の場合も「だからあの人、彼女できないのよ」なんていう「給湯室会話」は、珍しくないはずです。


議場で、セクハラヤジを飛ばすなんて行為は最低だし、それを自分の「武勇伝」みたいなものだと勘違いしているような議員には、レッドカードが出されて当然です。
しかしながら、「公的な場所でのセクハラ」が厳しくチェックされる一方で、男女それぞれ、同性しかいない場所や、酔っぱらっている状況では、「あれじゃ、結婚できないよね」みたいな会話は「黙認」どころか「一緒に悪口を言うことによる仲間意識の高揚」に利用されがちなのも事実です。
それが「正しくない」のは、みんな理解はしているはず。
でも、「正しくない」ことは、けっこう楽しいんだ。困ったことに。
「それなら、本人がいない場所でのセクハラトーク、値踏みトークも、みんな処罰の対象にしよう、会社のセクハラ委員会で採り上げよう」いうのが現実的だとも思えないんですよね。


今回の件に関しては、「こういうセクハラトークそのものの問題」と、「それが議会でなされた」という二つのポイントがあるのです。
議会では、もちろん許される発言ではない。
ひとりで便器に座っているときにボソッとつぶやいたのだとしたら、自省することはあっても、他者が罪に問うことは難しいでしょう。
では、その「中間」では、どうなのか?
公的な場所ではなく、自分ひとりのプライベートな空間でもない場所では、どこまでが「好ましくはないが、黙認せざるをえない」のか。
倫理的には、「そんなこと言うことそのものが間違っている」のだけれど、人間って、なかなか「正しいこと」には染まれない。


そういう「セクハラトーク」が、潤滑油のような働きをしている場合がある(と思われている)。
そして、多くの人は、それを「黙認」したり、「積極的に参加」したりしている。
仲間内で集まって酒を飲み、羽目を外す、というような状況では「黙認」されるけれど、公的な場所だから許されないというのは、おかしいと思うのです。
本来なら、「あらゆる場所で、セクハラトーク、値踏みトークは、禁じられるべき」なのだけれど、そこまでは踏み込む勇気がない。
「日常生活のなかで異性を値踏みしたことが無い人だけが、このヤジ議員に石を投げてよい」と言われたら、僕も握っていた石を、そっと地面に落とすしかない。


この問題については、ヤジ議員に責任をとらせて、それで終わりにして良いのだろうか、とも思うのです。
この議員がこういうヤジを平然と飛ばしたのは、日常で、そういうセクハラトークを指摘し、たしなめる人が、彼の周囲にいなかったからではないでしょうか。
ネット上とか、みんなの前では、セクハラトークに厳しいけれど、プライベートでは、「身内」に甘い。
そんな人がけっこう多いのではないかなあ。


たぶん、このヤジ議員を「見せしめ」にしても、プライベートな場所での「異性値踏みトーク」が激減することはないだろうし、その土壌が変わらなければ、同じような問題が繰り返し出てくるだけでしょう。
だからヤジ議員の責任を問うな、って言うつもりはありませんが。


そういう「値踏みトーク」って、絶対にその仲間内だけで完結し、外に漏れてこないのならしょうがないところもあるのかもしれませんが、最近はSNSとかで筒抜けになったりすることもありますからねえ……
「鍵かけてたのに!」「『友人のみ』の設定にしていたのに!」って言っても、誰かがコピペして貼りつけたり、「こんなこと書かれてたよ」って注進に及んだりすることもある。
それで、結果的に相手の目に触れてしまえば、「『友人のみ』の設定にしていた」と言い訳をしてみても「無かったこと」にはできないのです。


ほんと、あの議員は「氷山の一角」だよね。
その氷山のなかに、僕もいそうな気がして、なんだかやるせない。