いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『世界が読む村上春樹 〜境界を越える文学〜』の備忘録

参考リンク:世界が読む村上春樹 〜境界を越える文学〜(NHK注目番組ナビ)


昨夜、NHKのEテレで放送された『世界が読む村上春樹 〜境界を越える文学〜』という番組を観ました。
以下、気になったところの箇条書き。


(1)村上春樹さんのフランス語への翻訳者の話。
ヨーロッパでも、1990年代くらいまでは、「日本人作家」=「純文学」
いまでも谷崎とか川端を読むのは、エリート、というイメージがある。
2000年以降、日本文化への理解が深まるのと同時に、村上作品はとくに受け入れられるようになった。


(2)実作者として、村上作品の魅力を問われた、綿矢りささんの答え。

綿矢りささん「シンプルなんですよね。みんなが頭に思い浮かべやすい小説が多いような気がします。動物園とか出てきますよね。嵐のときとか、動物は何をしているんだろう?というような、普遍的な着眼点があって。ただの日常を切り取っているだけではなくて、ちょっと楽しくなるような日常から、想像力で、そこから不思議な世界に導いていってくれるというか……


(3)世界でいちばん最初に村上春樹作品が翻訳されたのは台湾(1980年代後半)。
台湾では『ノルウェイの森』で描かれていた東京のライフスタイルに憧れる人が多かった。


(4)台湾のカフェ『ノルウェイの森』のオーナーの話。

「それまでの台湾では性の描写があいまいにされていたんだ。『ノルウェイの森』では性が直接的に描かれ、若者たちを惹きつけたんだ」
「笑い話だけど、台湾の人たちは、村上春樹の小説を読んでから、自宅でパスタやチーズを食べるようになった。それまでは自宅でパスタを作る人は、ほとんどいなかったよ」


(5)綿矢りさ「『ノルウェイの森』は、村上春樹の作品のなかでも、すごく『生々しい』感じがする」


(6)東アジアでは『ノルウェイの森』の人気が圧倒的に高いが、ヨーロッパでは「ファンタジーの世界が無いので、村上春樹らしくない」と考えているファンが多い。


(7)村上作品には『ノルウェイの森』を代表作とするリアリズム系と、『羊をめぐる冒険』などのファンタジー系の2つの系統があるが、地域によって、人気のある作品は違う。
 東アジアでは、森が高くて羊が低い。
 ヨーロッパでは、羊が高くて森が低い。


(8)フランスの大学での取材より。
村上春樹作品が好きな学生の多くは、ジブリの作品も好き」


(9)フランスでは、小川洋子さんの作品もほとんど翻訳されているらしい。
(映画化もされています)


(10)台湾では、村上作品の西欧的なところに憧れる人が多い。
フランスでは、村上作品の仏教的なところ(白黒はっきりしないところ)に惹かれる人が多い。



この番組では、主に台湾とフランスでの村上作品の読まれ方が紹介されていました。
毎年恒例となっている「ノーベル賞騒動」のたびに「日本のメディアが話を大きくしているだけで、本当は海外ではそんなに読まれていないのではないか?」と内心思っていたのですけど、これを観て、ようやく「ああ、確かにこれは東洋でも西洋でも読まれているのだな」と実感できました。


そして、「世界文学」と言っても、東洋では「西欧的な面」が、西洋では「東洋的な面」が評価されているという、それぞれの読みかたをされているんですね。
まさに「絶妙なバランス」だよなあ。


ちなみに、この番組であとひとつ印象に残ったのは、久々に動いている綿矢りささんを見ることができたことでした。
年齢相応に大人になりつつ、黒髪ロングで訥々と、ときどき方言混じりに話している姿に萌え萌えでしたよ本当に。


※ちなみにこの番組、2014年1月2日の15時から、再放送がありますよ!
興味を持たれた方(ナマ綿矢さんも含めて)は、ぜひ。

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