いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

皆さんご存じじゃないと思う「カンシャオシャーレン」

参考リンク(1):札幌のホテルでもメニュー「誤表示」発覚 支配人が会見で謝罪(FNNニュース)


世間を騒がせている「メニュー偽装問題」なのですが、一連の報道のなかで、僕はひとつ、ものすごく気になった場面があって。
それは、この「中華料理の責任者」が出てきた場面。

28日夜、記者会見した阪急阪神ホテルズの出崎 弘社長は、「芝エビの問題、こちらは、お客様から見ますと『偽装』と受け止められても仕方がないかなというような感じを持っております」と、メニューに「芝エビ」と表示しながら、実際には、安いバナメイエビを使用したことについて、「偽装と受け止められても仕方がない」と謝罪した。
しかし、その一方で、「中華料理の世界では、『小ぶりのエビ』を日本の料理の名前に翻訳するときは、『芝エビ』と書くのだという、本人(中華料理の責任者)は、そのようにずっと認識をしておりまして。もし可能であれば、中華の責任者から、そのへんの事情につきまして、簡単にご説明をさせていただきます」という発言もあった。
この直後、コック帽をかぶった中華料理の責任者が現れ、「われわれ中国料理の世界では、皆さんご存じのように、カンシャオシャーレン(干焼蝦仁)と書くと、『シャーレン = 芝エビ』のチリソース煮、『芝エビ = 小エビ』の総称という認識でありました。以上です」と、説明した。


会見の壇上に立った、コック帽子の男性は、ぎこちない様子でこう話しました。
でも、これをテレビで観た僕は、「えっ?」と思ったんですよ。

皆さんご存じのように、カンシャオシャーレン(干焼蝦仁)と書くと、『シャーレン = 芝エビ』のチリソース煮、『芝エビ = 小エビ』の総称という認識でありました。


いやちょっと待ってくれ。
「カンシャオシャーレン(干焼蝦仁)」という言葉を見て、あるいは聞いて、すぐに「エビチリ」をイメージできる『皆さん』って、実在するのか?


(僕が無知である、という可能性も十分あるのですが)
この人が、本当にそれが「みんなの常識」だと思っていたのか? それとも「誰かにこう言えと命じられたので、この文章の前に『われわれ中華料理の世界では』という前置きをつけてしまうような、混乱しまくったコメントになってしまったのか?



本当はどちらだったのか、よくわからないんですけどね。
でも、少なくとも「カンシャオシャーレン(干焼蝦仁)」って言っても、お客さんにはわからない人が多いだろう、という認識は、されていなかったようです。
「エビチリ」はいまの日本において「一般常識の範疇の料理」だと思うのですが……
メニューでも、日本語訳を読んで注文している人のほうが多いはず。


専門家っていうのは、「他人がどこまで自分の世界の『常識』を理解しているか」が、わかっていない場合が多いのです。
病院で説明をしていると、「で、肝臓って身体のどこにあるんですか?」とか、「腎臓って2つもあるの!」とか驚かれて、こちらもフリーズしてしまうことがあるんですよね。
それを仕事にしている人間にとっては「常識」でも、そうでない人には「とくに症状もなかったし、興味なし」という場合も少なくない。
そういう人に対しても、なるべく「わかったような気分になっていただく」のが大事ではあるのです。


そういう意味ではこの「カンシャオシャーレン」は、あまりにも配慮が足りないというか、もうちょっとうまい説明の仕方があったのではないか、と考えずにはいられません。


自分が知らないことを「皆さんご存じのように」って前置きされると、「知らねえよ!」って反発したりしがちですしね。


ちなみに、ネットでこんな記事をみつけました。
参考リンク(2):実際のところエビの違いって良くわからないのでざっくり調べてみた。 - 世界は案外あっさりまわる


ホテルのレストランのあの値段の高さには「信用」が含まれているのですから、あってはならないことだとは思いますが、結局、その「違い」に気づいて指摘できた人は、ほとんどいなかったのも事実です。
今回は違う種類のエビだったので比較的わかりやすかったのですが、産地偽装とかだと、もうこれは内部告発以外では、知りようがありません。
まあ、こういう事件は、ふだん自分が食べているものについて考えるきっかけにしてみる、くらいでちょうどいいのかもしれません。
疑いはじめるとキリがないし、僕の場合は、偽装かどうか見分ける知識も舌も不足しているので……

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