いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

アメリカ政府を告発したスノーデン氏が「インターネット」について語ったこと

シチズンフォー スノーデンの暴露 [DVD]

シチズンフォー スノーデンの暴露 [DVD]

内容(「キネマ旬報社」データベースより)
米政府によるスパイ行為を、元CIA職員が告発したスノーデン事件の真相を記録したドキュメンタリー。ローラ・ポイトラス監督の下にシチズンフォーと名乗る人物からメールが届く。それは米政府が国民の情報を収集しているという衝撃的な内容だった。


TSUTAYAで見かけて、この『シチズンフォー スノーデンの暴露』というドキュメンタリーのDVDを観たのです。
Amazonでの作品紹介では、「第87回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞受賞! 世界の映画賞席巻! 受賞40、ノミネート35! 」の下に、受けた賞がズラッと並んでいて圧巻です。
「○○受賞!」に弱い僕としては、とりあえず観てみようかな、と思ったのですが、なんというか、大変「ドキュメンタリーらしいドキュメンタリー」で、内容の半分くらいは、記者による、エドワード・スノーデン氏への実際のインタビューの映像なんですよね。
なんと、スノーデン氏本人が出演(?)し、自分の言葉で語っているのです。
最初のほうは「自分の信念に殉ずる人」として、余裕すら感じられていたスノーデンさんなのですが、世間で話題になり、彼の裏切りに制裁を加えてくることが予測される「権力」が近づいてくるにつれて、少しずつ疲れやプレッシャーが表情に出てくるのです。


実際のインタビュー映像を観て驚いたのですが、スノーデンさんって、けっこうイケメン。
なんとなく、オタクっぽい人なんだろうな、というイメージがありましたし、たしかにコンピュータマニアっぽい雰囲気はあるのですが、自分の言葉で自分の主張をしっかり語っていて、単に目立ちたいだけの裏切り者ではない、ということが伝わってきます。


スノーデンさんは、告発の理由として、こんな話をしています。

「監視される前のインターネットは、史上、類を見ない画期的なものでした。世界中の子供たちが、誰にでも対等に意見を言えた。彼らの発想も話も分け隔てなく、十分に尊重されていました。遠い場所にいる専門家たちとも意見を交換できたのです。自由に、何にも抑制されずにです。それが、やがて、変わってしまい—人々は発言を自戒するようになった。“監視対象”になると冗談を言い、政治的な寄付にも注意するようになりました。監視されてることが前提になったのです。検索ワードに気を使っている人も大勢います。記録されるからです。これは人々の知的探究心を制限するものです。ですから僕は、刑務所に入れられることも、その他の悪い結果も個人的には、いといません。それよりも避けたいのは、僕の知的自由が侵されることです。自分と同じぐらい大事な周りの人々の自由も守りたい。これを自己犠牲だとは思っていません。自分が人々のために貢献できるのですから、人として満足しています」


 インターネットの理想、か……
 思えば、インターネットはSNSAmazonの「おすすめ機能」、Googleの検索によって、便利にはなりました。
 その一方で、利用者の行動は記録され、分析され、頼んでもいないのに「あなたの欲しいものは、これでしょう?」とメニューが表示されるのです。
 でも、僕も含めて、大部分の現代のネット利用者は「プライバシー」よりも「便利さ」を優先しがちです。
 パスワードは盗まれにくさよりも覚えやすさを重視するし、メールを暗号化することもない。
 まあ、普通に生活していれば、それで問題ないはずだし、たぶん、そうなのでしょう。
 ただし、国家が本気になれば、監視している相手を罪に陥れることは簡単です。
 リベラルなイメージが強かったオバマ大統領でさえ、この監視システムを肯定し、スノーデンさんの背信を責める発言をしています。
 収集されていた情報は、テロや安全対策よりも、各国の経済状況や企業の収益などのほうが多かった、という話がこのドキュメンタリーの中にも出てきます。


 しかしながら、いま、こうして日本のネットで「発言」している僕からすると、個人がネットで表明している「危険思想」や「反社会的行為」は、それが立ち小便レベルであっても、そして、政府がいちいち問題にしなくても、ユーザーどうしが相互に監視をして、不心得者は吊るし上げる、というシステムができあがっているようにもみえるのです。
 いや、立ち小便って、実際かなり迷惑な行為なのも間違いないんだけど。


 そもそも、「世界中の子供たちが、誰にでも対等に意見を言えた」インターネットが存在していた時代が、本当にあったのだろうか?
 スノーデンさんは「監視されている国民に警鐘を鳴らした」のだけれど、肝心の国民の側は、必ずしもこの告発を歓迎していたわけではありません。
 「国の秘密を売り飛ばした裏切り者」だとスノーデンさんを軽蔑している人もいるのです。
 「知的自由」よりも「安全」を求める人のほうが多数派かもしれません。
 もっとも、「安全のため」だとは思えないような情報収集がなされていることが問題ではあるのですけど。


 2時間の半分くらいは、部屋の中でスノーデンさんが語っている映像で、ほんとうに「地味」だとしか言いようがないドキュメンタリーなのですが、実際にスノーデンさんが語っている姿をみると、「スノーデン事件」に対するイメージが変わる人も多いと思います。
 すべてがオンラインになっていけばいくほど、われわれは、監視されやすくなっていく。
 監視されるほどの価値がある人間じゃなくてよかった、と胸をなでおろすのは、簡単なことなのだけれども。


暴露:スノーデンが私に託したファイル

暴露:スノーデンが私に託したファイル

暴露―スノーデンが私に託したファイル―

暴露―スノーデンが私に託したファイル―

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